2010年6月13日 (日)

「たられば」を許さないPOGルール

 毎年、6月上旬のこの時期だけは、気持ちをブログに専念させることが出来ず、1本の記事を書くにも難儀します。ワールドカップじゃありませんよ、POGの指名会があるんです。このブログに目を留めてくださっている方はご存じないかも知れません、POGというのは競馬の「ペーパー馬主ゲーム」のことです。もう10年以上も続けているかな。最近は自分で馬券を買うこともほとんど無くなりましたが、仲間と楽しむこのゲームだけはどうしても卒業出来ない。日本ダービーで盛り上がってから、今年の2歳馬がデビューするまでのこの時期、私たち競馬ファンはお祭りのように気持ちが高揚する毎日なのです。今回は私たちのサークルがどんなルールでPOGのドラフトを行なっているか、それをお伝えしようと思います(ちょっと他のことを考える余裕が無いので)。このブログ始まって以来の脱力系記事ですね。(笑) 

 ホンモノの馬主になるのは金持ちの特権ですが、馬主になったつもりになら誰でもなれる、それがPOGです。誰が考案したのか知りませんが、ノーベル賞なみの発明だと思います。こんなに安上がりに1年間楽しめるゲームが他にあるだろうか? 「強く美しいサラブレッドは好きだけど、競馬というギャンブルはどうも」という人にも、POGはおすすめです。ルールは簡単、何人かの仲間を募って、ドラフト会議を開く。これからデビューする今年の新馬を10頭くらいずつ選んで、そのオーナーになる。あとは1年間、自分の持ち馬を応援しながら成績を競うのです。得点をどのように計算するかは、そのサークルごとの取り決めです。競走馬が実際に獲得した賞金額を得点にしているところもあれば、レースのグレードごとに勝利ポイントを決めているところもある。私たちのサークルは「相馬眼」の確かさという名誉を賭けているだけですが(ホント?)、わずかなチョコレートを賭けてギャンブルの気分を味わっている人たちもいるらしい。伝統的にこのゲームでは、チョコを賭けることになっているのです。え、日本円を賭けている人たち? いる訳ないじゃないですか、裁判員制度まであるこの国で。

 ゲームのルールは単純でも、ドラフトのやり方にはサークルごとの流儀があります。一般的な方法はプロ野球のドラフト会議を思い浮かべてもらえば分りやすいと思います。各チームが一位指名の選手の名前を書いた紙を投票箱に入れる。もしも複数のチームが同じ選手を指名していたら抽選になります。もちろん単独指名なら交渉権はそのチームが獲得します。抽選に負けたチームは、残った選手から再指名する(再指名チームが複数あるなら、ここでも投票箱を使うべきです)。こうして一巡目の指名が終わったら二巡目に入ります。だから抜きん出た選手がいる場合など、指名順位をどうするかが重要な戦略になりますし、くじ運に強いのも監督の資質のひとつということになる。POGの場合も同じです。指名馬がバッティングすればじゃんけんということになる訳ですが、もしも自分が一位指名したにもかかわらず、じゃんけんで負けて人に取られた場合、その馬が大活躍をして皐月賞やダービーまで勝ったりしたら、1年間のあいだ悔しさは増すばかりということになります。

 これはせっかくのゲームをストレスの多いものにするだけでなく、ふだんの競馬観戦においても邪念が紛れ込む要素になりますから(だって、じゃんけんで負けて人に取られた人気馬を、あなたは素直な気持ちで応援出来ますか?)、ルールの改善が必要なところです。私たちのサークルで採用しているドラフト・ルールは以下のようなものです。全員が投票用紙を書いたら、ランダムに1枚ずつ開票して行き、その都度オークションを行なうのです。もちろん競りかける人がいなければ、その馬は無償で投票した人のものになります。しかし、競りかける人がいれば、最も高い値段をつけた人がその馬を落札します。同じ巡目でその馬に投票していなかった人もオークションに参加出来ます。(本当にその馬が欲しい人だけでなく、単に値段を吊り上げるために競りに参加する人もいるし、値段を吊り上げるだけのつもりだった人が落札させられてしまうこともあります。ここは駆け引きです。) 1回の巡目で各人が取る馬は1頭とは限りません。オークションで他人の指名馬を競り落とせば、何頭でも自分のものに出来ます(費用はかかりますが)。その1巡で馬を取れなかった人が、追加指名をすることは出来ません。馬は必ず投票され、開票されるという手続きを取って誰かの手に落ちるのです。当然、ドラフトが進むうちに各人が取った頭数にばらつきが出来ますが、これは構いません。規定の頭数の馬を取り終わった人から抜けて行き、最後の1人になったら好きな馬を取ることが出来ます。オークションの売上はプールされ、参加者全員に均等に割り戻されます。これはこれから始まる1年間のポイント・レースのハンデとして記録されることになります。もうひとつ大事なルールがあります、開票された馬がオークションになった場合、その巡目でその馬に投票した人は無料でオークションに参加出来るのですが、そうでない人にはオークションへの参加料が課せられるのです(競り落とせなかった場合には参加料は取られません)。そうしないとむやみにオークションを誘発することになるし、本当に欲しい馬に投票するインセンティブが無くなってしまいますからね。

 オークションで支払われる金額や参加料もチョコレート換算です。参加料の方はどれくらいの額が妥当か、それぞれのサークルのレートによって異なる筈ですから、あらかじめ試算して合意しておくことが必要です。積極的にオークションに投資して人気馬を集めた人は、最初にその分のマイナスを背負ってスタートすることになります。そのビハインドを撥ね返せる素質馬と見込んだからこそ、高い値段で買い取ったということになるのです。合理的でしょ? 私たちは長年この方式でやっているのですが、これのいいところは、「あの時じゃんけんに勝っていたら」、「一位指名の馬をこちらにしていれば」、そんな言い訳を一切許さないという点です。本当に欲しい馬は、先行投資をすれば必ず取れるのですから。完璧な自己責任の世界です。またそこまでして自分の持ち馬にしたのですから、1年間を通じてその馬を応援する気持ちにもいっそう熱がこもりますし、人の馬に対しても素直な気持ちで声援を送れるようになります。いいことずくめ。ということで、こんな説明で分かっていただけましたか? POGをやる人にとっては参考になる情報だと思うのですが…って、こんなところで油を売っている場合じゃなかった。今日はこれからドラフト会議なんです。自信の馬は選んであるし、今年こそ万年最下位の汚名返上だ!

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2010年1月24日 (日)

カジノ特区は絶対に失敗する!

 先週競馬の話題についてちょっと書いたら、むかし競馬場に通っていたころの熱い気持ちが甦って来ました。このままこのブログの方向性がそちらにそれてしまうのではないかと心配ですが(笑)、もう一度だけ、今週もギャンブルの話題を取り上げようと思います。最近なにかと人騒がせな亀井大臣が、沖縄に「カジノ特区」を設置するという構想をぶち上げました。沖縄県知事もこれに賛同の考えで、亀井さんとは意気投合している様子です。カジノ特区と言えば、東京都の石原知事や大阪府の橋下知事も、その実現と誘致に向けて積極的な発言をしていたと思います。確かに地域の観光の目玉になって、しかも苦しい財政にとってもプラスになるとなれば、政治家がこれに色目をつかうのも当然だという気がします。しかし、私はカジノ特区は日本では絶対に成功しないという確信を持っているのです。何故かということをこれから書きます。

 日本の法律は、競馬・競輪などの公営ギャンブルを除いて、賭け事というものを禁じています。どこかのマンションの一室で行なわれている地下カジノのようなものはもちろん、ふつうの家庭で遊ばれている賭け麻雀だって厳密には非合法なのです。にもかかわらず私たちは、日本が世界でも例を見ないほどのギャンブル大国であることを知っている。そう、パチンコのことです。日本中央競馬会(JRA)の年間売上が3兆円弱なのに対して、パチンコ業界の売上は20数兆円にも上ります。これはいくら驚いても驚き足りないくらいの数字で、例えばそれが国内の新車販売高の3倍にも相当する金額だと言えば、その尋常ならざる市場規模が理解いただけるのではないかと思います。日本ではギャンブルが禁止されているから、ある地域限定でカジノを公認すれば、人気スポットになって経済効果も見込めるだろう、これがカジノ特区推進派の理屈だと思いますが、そもそも前提が間違っています。国内には13000軒ものパチンコ店があって(最近はつぶれる店も多いようですが)、パチンコ人口は2千万人とも言われている。おそらく日本人の9割以上は、自宅から15分以内で最寄りのギャンブル場(パチンコ屋)に行けるロケーションに住んでいる。(調べた訳ではありません。私の直感です。笑) そんな国が世界中のどこにありますか? 世界的な常識からすれば、ギャンブルというのは〈非日常性〉を楽しむレジャーだと言えます。ところが、この国ではギャンブルは身近な日常なのですから、わざわざ沖縄までの航空券を手配してまでカジノ遊びに出掛けようという人はそう多くないと思われるのです。 

 ここまではまあ誰もが考える、日本でカジノが成功しない理由なのですが、私の考察はさらにその先まで突っ走ります。この国でカジノ特区が失敗に終わるもっと根本的な理由は、一般にカジノで行なわれているゲームが、パチンコや競馬や麻雀などと比べて、ゲームとして圧倒的につまらないという弱点を抱えていることです。あちこちの自治体やシンクタンクのようなところが、カジノを誘致した場合の経済効果について調査報告書を書いているようですが、こうした「ゲーム自体の面白さ」に着眼して論を展開しているところは見当たりません。私たちが知っているカジノゲームと言えば、ルーレット、バカラ、ブラックジャック、それにスロットマシーンといったところが代表的でしょう。私自身のカジノ体験は、むかし香港旅行のついでに立ち寄ったマカオで、「大小」のテーブルで小1時間ほど遊んだだけですが、多少儲かったにもかかわらず、こんなつまらないゲームは無いと思った。理由ははっきりしています、これらのカジノゲームは運の要素がほとんどで、深い戦略も無ければプレイヤーの技量を進歩させる要素も無いものだからです。翻って国内のギャンブル事情を省みれば、競馬や麻雀なんて生涯をかけても極め尽くせないほど奥の深いゲームだし(麻雀も昔はよくやりました)、パチンコのことは私はよく分からないけれども、これもうかつに手を出せないほど深淵なゲームであることは、コンビニにたくさん置いてあるパチンコ雑誌やきっこのブログなどを覗いてみれば分かります。ふだんギャンブルとは縁の無い堅実な生活を送っている世界中のほとんどの国民にとって、カジノは夢の別天地のようなところなのかも知れません。が、私たち日本人にとってはそうではない可能性の方が高いのです。おそらくカジノ特区が開設された当初は、もの珍しさで観光客が押し寄せたとしても、リピーターは増えず、やがては常習的なギャンブル中毒者だけがたむろす、さびれた場末のゲームセンターのような場所になってしまうのではないか。

 私は日本ではカジノ特区は失敗すると言っているだけで、これに反対している訳ではありません。2千万人のパチンコ人口を抱える我が国は、ある意味、世界で最も先端的なギャンブル王国なのですから、ラスベガスやマカオのような既存の単調なゲームを提供するだけのカジノを作っても意味が無いと言っているのです。(これを公共事業型の「ハコものカジノ」とでも命名しましょうか。) むしろ政策としてカジノの導入を構想するなら、オリジナルのコンテンツにこそこだわるべきです。日本は家庭用ゲーム機で世界を席捲するほどのコンテンツパワーを持っているのですから、これを新しいカジノゲームに応用しない手はない。どうでしょう、もしも亀井さんあたりがそんな政策構想を打ち出せば、手を挙げるゲームメーカーやソフトウェア会社はたくさんあるのではないかな。とにかく遊びの施設を作るのに、官僚的な発想でやったら失敗するのは目に見えています。おりしも今週のインターネット・ニュースでは、アジア各国で新しいカジノ建設計画が目白押しだという話を伝えていました。このままでは過当競争に陥ってしまう可能性もあるというのです。どこの国でも政治家や役人の考えることは一緒ですね。これからの時代、従来のハコものカジノは間違いなく衰退する、私はそう予想します。このところマカオのカジノが非常に賑わっているようですが、それはこれまで遊びを知らなかった中国の新興富裕層が夢中になっているだけの話で、世界中から観光客を集めている訳ではないと思います。ギャンブル先進国の日本が、いまからその二番煎じを狙おうなんていうのは、愚かしいことであるばかりか税金のムダ使いでしかありません。 

 で、ここから先は私の空想になりますが、もしも国内にカジノ特区を作るなら、それは特定の地域にハコものとして作るのではなく、インターネットの空間の中にこそ作るべきでしょう。これならギャンブル好きは、近所のパチンコ店に出向く必要さえ無くなる。魅力的な新しいコンテンツがどんどん現れれば、これまでギャンブルとは無縁だった人たちも取り込むことが出来るかも知れない。もちろん参加するのは二十歳以上に限定するという認証の仕組みは必要ですが、それさえあればパチンコや競馬よりも不道徳という訳でもありません。裏社会の資金源となっていると言われるパチンコ業界に流れるお金を、国が運営するインターネット・カジノの方に振り向けることが出来れば、社会の健全化にだってつながる期待が持てます。カジノ特区構想には、海外からの観光客を呼ぶという目的もあるのに、インターネット・カジノではその役に立たないという反論があるかも知れません。しかし、日本という国に魅力を感じて来日する観光客が、カジノ遊びを喜ぶとは私には思えないのです。それはむしろ観光国としての日本のブランドをおとしめるだけでしょう。それに外貨を稼ぐことが目的なら、インターネット・カジノの方がずっと有利だということもあります。国が運営する21世紀のこの新しいカジノを、国内だけでなく世界に向けても公開するのです。参加するプレイヤーは、自国の通貨をその時の為替レートで日本円に交換して、それで好きなゲームを楽しむことが出来るようにする。なにしろコンテンツ・ニッポンの提供するゲームなのだから、面白くない訳がない。何もしなくても政府はどんどん外貨を獲得出来るようになります。財政赤字も一挙に解消です。「jpドメイン」がインターネットにおけるカジノ特区として世界中から認知されるようになり、日本円がそこで共通に使えるチップとして流通するようになれば、日本円がドルに代わる基軸通貨の地位を狙える日だって来るかも知れないのです。(ウソ)

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2010年1月17日 (日)

これが巷間哲学者流「競馬必勝法」だ!

 今週はちょっと気分を変えて小ネタをひとつ。昨年私を最も驚かせたニュースは、民主党による政権交代でもなければオバマ大統領のノーベル賞受賞でもなく、新聞の片隅に載った脱税事件に関する小さな記事でした。香港に本社を置くデータ分析の会社が、自ら開発した競馬予想ソフトを使って、日本の競馬で160億円(!)もの賞金を荒稼ぎした挙句、社長である英国人は税金も収めないまま海外に高跳びしたというのです。これを聞いて私がショックを受けたのは、「しまった、先を越された!」と思ったからです。というのも、私はずっと以前から、競馬というのは必勝法のあるギャンブルだと思っていたからです。

 最近はもう自分で馬券を買うこともほとんど無くなりましたが、昔は仲間と一緒に毎週のように競馬場に通っていた時期がありました(このブログを始めるずっと前のことです)。小心者なので、あり金をどーんと賭けることも出来ない、今にして思えばずいぶんみみっちいギャンブラーだったと思います。賭け金が少ない上に穴馬ばかりを狙うので、当然結果はいつも負け越し。たぶん生涯の馬券成績をつけていたとすれば、かなりの額をJRA(と大井競馬)に貢いだのではないかと思います。そんななかでも、競馬に勝つための理論だけはいつも考えていました。そしてついに究極の必勝法を発見したのです。それで何故いつも負けてばかりだったかと言うと、それを実践するためには膨大なデータとそれを瞬時に処理出来るコンピュータが必要だったからです。当時は自分もプログラマーという職業の人間でしたが、パソコンの性能は現在に比較すれば格段に低く、それに何よりもインターネットを通じての競馬情報提供というサービスがまだ始まっていなかった。私の理論は第一にオッズ(配当率)を重視するものでした。いまでこそネットで投票締め切りのぎりぎりまで、ほぼリアルタイムでオッズ情報が手に入れられる訳ですが、当時はオッズを見るためには実際に競馬場か場外馬券場に足を運ぶしかありませんでした。仲間が競馬場に着くとパドックに向かって一目散に駆け出すのに対して、私は馬券売り場の片隅にあるオッズ・プリンターに向かって一目散に駆け出すのです。一度なんか、実験のつもりで新聞の馬柱も見ず、どんな馬が出走するのかさえ全然知らないまま、オッズ・プリンターから吐き出される数字とその変化だけを見ながら馬券を買い続けたこともあります。丸一日やって結果は全敗でしたが… (どんな競馬ファンやねん? 笑)

 私の発見した必勝法の理論は、いたって単純なものですが、いまでも古びていないと思います。と言うより、これはあらゆるギャンブルについて当てはまる基本の法則とでも呼ぶべきものなのです。つまり、賭けの対象となる事象と予想されるオッズとを比較して、期待値が1を超えているなら買い、1以下なら見送るというそれだけのことです。具体的な例を挙げるなら、もしもある馬が優勝する確率が50パーセントだったとして、その馬の単勝配当が200円(2倍)を超えているなら買うべきだし、そうでないなら買ってはいけないということです。パスカルが賭けの問題から確率論を生み出したのは有名な話ですが、せんじつめればギャンブルとは確率の問題に過ぎない、これは少しでも理論的にものを考える人にとっては当たり前の事実だと思います。ところが、多くの競馬ファンはこの単純な事実が分かっていないのですね。競馬の予想とは勝ち馬を当てることだと思っている。これはまったくの間違いです。どんな強い馬でも走る前から100パーセント勝つことが決まっている訳ではありません。レース中に故障したり、落馬したり、不利を受けたりすることもあるでしょう。そういったファクターもすべて考慮して、その馬が勝つ確率を出来るだけ正確に見積もる、そしていくら勝率が高くてもオッズが期待値1を割るなら、その馬券は買うべきではないというのが合理的な判断なのです。私がこういう話をすると、たいていの人は、「競馬はそんな理屈どおりには行かないよ」というようなコトバを返して来ます。これは何を意味するか? 競馬というのは参加者同士が賭け金を奪い合うゲームですから、競馬にロマンを求めるそうした昔ながらの単純な馬券師たちが、今回の事件に登場したようなコンピュータ予想グループのいいカモになっている、要するにそういうことなのです。

 ギャンブルにとってオッズが何よりも重要だということは、もっと単純なゲームを例にとれば分かりやすいかも知れません。3つか4つの数字を自分で選ぶ「ナンバーズ」という宝くじがありますよね。あれにも必勝法があると言えば、貴方は驚きますか? しかし、あるのです、もしも自分にだけオッズが知らされていたとすれば。4つの数字を並び順どおりに当てるナンバーズ4のストレートというゲームを例に取りましょう。買い目は0000から9999までの1万通りですから、特定の数字が来る確率は1万分の1です。一口200円なので、200万円を超える配当が付くならその数字は買いです。過去の当選金額を調べてみると、ほんのたまにですが200万円以上の高額配当が付くこともあるようです。日本の宝くじは、控除率(つまりテラ銭)が50パーセント以上という割のよくないギャンブルですから、期待値が1を上回る買い目は滅多に出ません。それでも1万通りの数字のなかにはオッズの偏りがかなりあって、毎回配当額は大きく乱高下している。もしも200万円を超える配当の付く数字だけを一生買い続けたなら、かなり高い確率でナンバーズ4で勝ち越すことが出来る筈です。もちろん実際には締め切り間際のオッズなど知りようもありませんから、期待値1を超える数字だけを買うなんてことは不可能です(投票を管理するコンピュータのオペレータなら、こっそり覗き見ることが出来るかも知れません)。それでもこの法則を頭に入れておけば、ナンバーズで多少は有利な戦略というものを考えられます。例えばこのゲームに参加する人の中には、誕生日や記念日といった日付に因んだ数字を買う人が多いと思われますから、日付や年号に読み替えられる数字を省くだけでも期待値は相当高くなるだろうと想像されます。

 ということで、もうお分かりになったと思いますが、競馬というゲームはデータ予想と抜群に相性の良いものなのです。要するに、現代の日本の競馬は、このオッズ情報をコンピュータ分析の専門家たちに優先的に提供するという、私に言わせればほとんど八百長まがいの歪んだ情報公開を行なっているのです。いや、オッズ情報は競馬場にいる人たちにも平等に公開されているのかも知れませんが、最近は馬券の種類も格段に増えている訳で、詳細なオッズ情報がリアルタイムに公開されていたとしても、これをまともに分析出来るのはコンピュータ馬券師だけだというのは分かり切ったことであるからです。競馬の本場であるイギリスの事業家が、何故わざわざ日本にまで来て競馬予想を始めたのかといぶかる記事もありましたが、そんなことは当たり前のことなのです。3連単のような高額配当馬券を含む複雑な馬券体系があり、主催者はほとんど無料でリアルタイムのオッズ情報を提供していて、競馬新聞には出走馬の詳細な調教タイムなども公開されている、どれをとってもデータ分析派にとっては有利な要素ばかりです。しかも馬券を買うのはたいしてオッズなど気にもしない昔ながらの競馬ファンが中心なのですから、プロにとってこんなおいしい稼ぎの場は世界中見回してもあり得ないのだろうと思います。今回のニュースがショッキングなのは、たまたま脱税事件ということで競馬で荒稼ぎしているシンジケートの存在が発覚した訳ですが、おそらく彼らは氷山の一角に過ぎないので、他にも同じような方法で常勝している連中はたくさんいるに違いないということです。それほどいまの日本の競馬にはスキが多いのです。

 海外に高跳びした英国人社長たちが、どのようなロジックで予想ソフトを作っていたのか、競馬ファンならずとも気になるところだと思います。もちろんその内容は私にも分かりませんが、ひとつだけ確かに言えることがあります。彼らは単に勝ち馬を予想していたのではなく、個々の馬券に対してオッズと当選率を掛け合わせた「期待値」を精密に計算していたに違いないということです。そうでなければ億という単位の金が稼げる筈はないからです。宝くじよりもマシだとは言え、競馬は25パーセントものテラ銭を天引きされる過酷なギャンブルです(単勝と複勝は20パーセント)。この不利をひっくり返すには 人気の盲点につけこむしかありません。インターネットを検索すれば、あやしげな競馬情報提供サイトや予想ソフトがいくらでも見付かりますが、それらのなかにリアルタイムなオッズ情報と連動して、期待値で推奨馬券を割り出す方式を採用しているものはほとんどないだろうと思います。何故って、もしもその方式を真面目に追求して行ったら、本当に儲かる馬券術が編み出されてしまうだろうから。そんなものを(たとえ有料でも)公開しようという人はいない筈です、自分で使って儲けた方が手っ取り早いですからね。数分間で勝負が決する競馬というゲームは、株取引などと違って手元資金がたっぷり無ければ大きな勝負が出来ないという仕組みのものではありません。1万円の元手が短期間に1億円に化ける可能性のあるギャンブルなのです。いくら評判のいい競馬予想ソフトでも、市販ソフトとして売り出して、1億円を売り上げることは容易ではないだろうと思います。本当に儲かる予想ソフトは、構造的に決して市場には出て来ないようになっているのです。

 もしも貴方が真面目な競馬ファンであるなら、今回の事件にはもっと危機感を持つべきだろうと私は思います。ここ数年間にJRAが提供するPATサービスが広く普及し、複雑な組み合わせの馬券が誰にでも簡単に買えるようになりました。そのことと今回の事件のあいだには大きな関連があることを、私たちはよく考えてみなくちゃいけない。これは私の予想ですが、日本の競馬がデータ分析によって儲かるということが証明されてしまった以上、これからは世界中から異業種の専門家が大挙して、しかも誰の目にも見えないところで参入して来る可能性があります。例えばマーケット分析ソフトの開発者だとか、金融工学の博士号を持った研究者だとかいった連中です。我ら日本の由緒正しい競馬ファンは、最低限の理論武装をして彼らに立ち向かわなければならない。今回の記事に私は「競馬必勝法」というタイトルを付けました。が、実は私たちはまだそのスタートラインに立っただけです。オッズの数字は所与の前提条件ですが、重要なのはあらゆる種類の馬券が固有に持っている筈の当選率を、他の予想法を出し抜くくらいの正確さで計算するロジックをどう組み立てるかという点なのです。で、これについても私は独自のアイデアと理論を持っているのですが…、もちろんそれをここで貴方に(無料で)紹介する訳には行きません。(笑)

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