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2016年12月24日 (土)

「絆クーポン」よくある質問と答え

1.クーポン券の受け取りについて

【Q】クーポン券を受け取るために、毎月市役所の窓口に行くのが面倒です。土休日は役所は休みですし、もっと簡単に受け取れる方法はありませんか?

【A】方法はいろいろあると思います。例えば自治体が運営しているさまざまな施設にも窓口を設置するアイデアはどうでしょう。専用の窓口でなくても構いません。インターネットにつながったパソコンと、受給者証のバーコードを読み取るバーコードリーダーがあれば、どこでもクーポン券の発行はできます。市役所やその支所には常設の窓口を置くことにして、その他にも公民館、公会堂、図書館といった施設にも臨時の窓口を置くのです。施設によっては土休日も営業していますから、市民にとっての利便性は高まるはずです。
あとはクーポンの配布を民間に委託してしまう方法もあります。給与支払を企業に委託する案は本文にも書きましたが、その他にも市内のショッピングセンターや金融機関などに委託する方法も考えられます。店内に窓口を設置すれば、客寄せにもなりますから、手を挙げる事業者は多いのではないでしょうか。
さらに、これは感謝給付の受給者限定になりますが、クーポン券を郵送で送るサービスがあってもいいですね。

2.窓口業務に必要な人件費は?

【Q】毎月、たくさんの人がクーポンを受け取りに窓口を訪れることになりますが、窓口業務にかかる人件費も相当なものになるのではないですか?

【A】簡単に試算してみましょう。人口10万人ほどの標準的な規模の市で「絆クーポン」を導入しました。個人のクーポン利用者が3万人、店舗を含む法人の利用者が1千社くらいになったと想定します。すると毎月3万1千人が窓口を訪れることになります。個人利用者の方は、受給者証をバーコードで読み取って、表示された金額のクーポンを渡すだけですから、対応にそれほど時間はかかりません。ひとり当たりの対応時間を2分とすれば、延べ6万分、つまり1000時間になります。これは6人/月くらいの工数に相当します。法人利用者の方は、クーポン券の半券を数える作業がありますから、それなりに時間がかかりそうです。1社当たり30分とすれば、延べ3万分、つまり500時間、3人/月くらいの工数になります。それ以外にも、期限切れのクーポン券の交換に来る利用者もいますから、窓口業務の月間工数は合計10人/月くらいと見積もっていいと思います。要するに人口10万人当たり、10人の専任職員を用意する必要があるということです。
 しかし、実際にはそれほどの工数はかからないでしょう。最初のQ&Aにもあったように、窓口業務の一部は民間に委託する選択肢がありますし、市の施設で(追加の人員配置は無しに)窓口業務の一部を担ってもらうこともできるからです。ここでは仮に6人の臨時職員を追加で配置するとして、年間ひとり500万円、合計3000万円の人件費を見ておきましょう。

3.市の財政負担はどのくらい?

【Q】かかる費用は人件費だけではないと思います。この政策を採用することで、市の財政負担はどのくらいの規模になるのでしょう?

【A】人件費以外の費用で金額が大きいものは、クーポン券の印刷費とシステムの構築運用費です。クーポン券の印刷費は、3万人の利用者に毎月平均2万円ずつのクーポンを配るとして、6億円分で5000円のクーポン冊子が12万冊。1冊当たりの印刷費を50円とすれば月に600万円、年間で7200万円になります。システムの構築費は大雑把に5000万円、運用費は年間1000万円程度と見ておきましょう。システムは一度構築すれば5年間くらいは使えるので、年間費用としては2000万円くらいを見ておけばいいだろうと思います。
 それ以外にも広報費や郵送費、ポスターやノボリの制作費などさまざまな費用がかかることが予想されます。さきほどの人件費と合わせて、ざっと1億5千万円くらいの予算を見ておけばいいのではないでしょうか。

4.実行予算は誰が負担するのか?

【Q】市の財政は赤字なのに、年間1億5千万円もの追加予算がどこから出るのですか?

【A】それは心配いりません。市の予算のなかには「絆クーポン」政策によって削減できるものもあるからです。まずは公務員の人件費。日本の地方公務員の数は約273万人ですから、日本の総人口1億2700万人で割れば、国民の2%以上が地方公務員ということになります。つまり10万人規模の自治体では、2千人程度の公務員を抱えている訳です。この人たちの平均年収を500万円として、その5%がクーポンに置き換われば、500万円×5%×2千人=5億円の人件費削減効果が見込まれます。さらに市の調達費も一律10%がクーポンに置き換わりますから、ここでも予算を削減できます。年間50億円の調達をしている市は、5億円の削減が可能だということです。(ただし、入札金額が多少上振れするので、実際の削減額はそれより小さくなるでしょう。)
 かかるコストを差し引いても、十分おつりが来ます。要するに「絆クーポン」政策によって自治体は儲かるのです。これは「絆クーポン」が政府通貨の一種であることを思い出していただければ、当然のこととして納得いただけるだろうと思います。ただ、儲かると言っても、議員さんや公務員の方たちにその儲けが行く訳ではありません。単に財政赤字が改善されるだけだと考えてください。行政クーポン政策で経済的な恩恵に与れるのは、あくまで社会保障分野で働いている人や子育て中の家庭などだけです。それが感謝通貨というものの基本コンセプトなのです。

5.国政との関係について

【Q】地方自治体が独自のクーポン券を発行して行政支出の一部に使うことを、国が認めてくれるでしょうか?

【A】正直なところ、そこは分かりません。取引額や給与の一部が「絆クーポン」に置き換わってしまうと、消費税や所得税の収入が減ることになりますから、財務省や国税庁は面白くないと思うかも知れません。例えばこの政策を「経済特区」として認めてもらい、国のお墨付きを得た上で実行できれば一番いいのですが、それは難易度が高そうです。
 ただ、クーポン形式の地域通貨を法的な根拠を以て禁止することは難しいだろうと思います。日本には明治時代にできた「紙幣類似証券取締法」というたいへん古い法律があって、今もこれが生きています。政府以外の機関が独自に紙幣を発行することを禁止する法律ですが、地域通貨に適用された事例は無いようです。
 Wikipediaの記述によれば、「2003年2月に財務省は「複数回流通は登録事業者間に限る」「換金は登録事業者が指定金融機関で行う」などの条件を満たせば「紙幣類似証券取締法」に違反しない、との方針を示した」とのことですから、事前の登録事業者制で、そもそも日本円との換金を認めていない「絆クーポン」は、取り締まりの対象にもならないだろうと思います。

6.通貨の流通ルールについて

【Q】個々の商品にクーポンの限度額を設定するのは面倒です。いっそ「絆クーポン」は日本円と同等に使えるようにして、売り手は受け取りを拒否できないルールとしてしまってはどうですか?

【A】確かに「絆クーポン」が日本円とまったく同じように使えれば、利用者にとっても便利ですし、お店にとっても値付けに余計な手間がかからないのでよいかも知れません。預かったクーポンは、次の仕入にも無条件で使える訳ですから、業者間の交渉も必要ありません。一見するといいことづくめのようです。
ところが、これは現実には不可能なことなのです。「絆クーポン」を日本円と同等に扱うと言っても、それは市内のクーポン扱い業者の間だけでのことです。市外の業者から仕入れる場合にはクーポンは使えません。すべての商品が原材料に至るまで市内で生産されているなら話は別ですが、そうでなければクーポン券の流通はどこかで行き止まりになってしまいます。そして最後にクーポンをつかまされた業者が一社で損をかぶることになってしまう。これは「絆クーポン」の主旨に反します。感謝通貨は、あくまでその主旨に賛同する人や企業が無理のない範囲で受け取るべきものなのです。

7.電子マネー方式の採用

【Q】紙のクーポンではなくて、電子マネーにしてしまえば、行政窓口やお店のレジの負担も減るのではないですか?

【A】その通りです。実は「絆クーポン」の最終的なあるべき姿は、私たちがふだん使っているようなICカード型の電子マネーにチャージできるお金にすることなのです。書籍版の『約束するお金と感謝するお金』では、感謝通貨は最初から電子マネーとして設計する前提にしています。「絆クーポン」を紙のクーポン券にする理由は、単に初期コストを落としたいからです。市には予算がありませんからね。もちろん予算が潤沢にあるなら、最初から電子マネーとして導入することもありです。可能であるならその方が望ましいと思います。人件費や印刷費のことを考えると、長い目で見れば電子マネーを採用した方が全体のコストは安上がりかも知れません。
電子マネー版の「絆クーポン」を導入するに当たっては、紙のクーポンとは異なるいろいろな工夫が必要になります。例えば、減価するお金というコンセプトをどのように実現するか? あるいは個人間でお金を授受するための方法はどうするか? これについて興味のある方は、ぜひ書籍版の『約束するお金と感謝するお金』をお読みください。

8.不正使用の防止について

【Q】偽造したクーポン券や使用期限切れの券を使われても、お店ではなかなか気付きにくいと思います。不正防止のためにはどんな対策がありますか?

【A】偽造しにくい紙幣を作る技術にはいろいろなものがあると思います。コピーしにくい特殊なインキを使ったり、ホログラムや透かしを入れたりといった方法が思い付きます。が、それが採用できるかどうかはコストとの兼ね合いで検討しなければなりません。最長2か月で使い捨てられてしまう「絆クーポン」の印刷には、あまりコストをかけたくないのが正直なところです。
使用期限切れの紙幣をひと目で見分けるためには簡単な方法があります。発行月によって紙幣の台紙の色や文字の色を変えればいいのです。今月使えるクーポン券はこの色ということが周知されていれば、顧客が使用期限切れの紙幣を間違えて使ってしまっても、お店はすぐにチェックすることができます。

9.事業者のクーポン券使用

【Q】企業や店舗が受け取った紙のクーポン券を、そのまま次の仕入や給与支払に回せば、減価損が回避できると思います。それは問題ありませんか?

【A】当然そう考える事業者は出て来るでしょう。でもそれは認められません。事業者が「絆クーポン」での支払や給与支給を行なう場合には、必ず自社の口座を通さなければなりません。これは「絆クーポン」を扱う上で守らなければならない基本ルールです。「絆クーポン」の基本的なコンセプトは、クーポンを扱うすべての個人や法人が平等に減価損を負担するということで、そのためにこのルールが必要なのです。
とは言っても、仕組みの上でこのルールを確実に守らせることは難しいと思います。個人事業者などが顧客から受け取ったクーポン券を、減価する前に他の個人事業者への支払に使ったり、家族の生活費の一部として使ったりしてしまうなんてことはありそうです。ただこれに対しては、あまり厳しく取り締まらなくてもいいのではないかと思っています。「絆クーポン」は、個人間で取引をする場合には同月内に何回流通させても構いませんし、むしろそれが奨励されます。個人商店や個人事業主によるプライベートなクーポン使用もそれに準じるものと考えるのです。法人格を持たない個人事業者では、口座を通さない簿外のクーポン取引を合法化してしまってもいいかも知れません。ただし、たとえ個人事業者であっても従業員の給与の一部に現物のクーポン券を混ぜるのは厳禁です。これは罰則の対象となります。

10.クーポン券と日本円との交換

【Q】クーポン券を金券ショップのようなところで売り買いすることは可能ですか?

【A】感謝通貨は日本円とは交換できない地域通貨というコンセプトで開発されました。ただ、これは通貨の発行元が交換には応じないということであって、市場での自由な交換を禁じるということではありません。もしも扱えるものなら、金券ショップで扱ってもらっても構いません。地域限定の減価するクーポン券になど値段がつくだろうかという疑問が出ると思いますが、ニーズはあるはずです。もしも使用期限切れ間近のクーポン券1000円分を日本円700円で買えるとしましょう。1万円の買い物に1000円のクーポンが使えることが分かっているなら、金券ショップでクーポン券を買うことにも意味があります。
これは感謝給付や給与の一部として、使い切れないほどのクーポンを受け取った人にとって、うれしいサービスかも知れません。クーポン券が使われないまま期限切れを迎えてしまうことは、クーポンの所有者のみならず、地域経済にとっても損失になりますから、むしろ推奨されるべきサービスとも言えそうです。ただ、金券ショップにとっては、クーポン券を買い取ることにはリスクがありますから、常にクーポン券を買い取ってもらえるとは限りません。むしろ使い切れないクーポン券は、個人間で無償で贈与される機会が増えるような気がします。その方が感謝通貨の本来の主旨にも叶っています。

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