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2015年10月24日 (土)

本を作る(6)

 本の発売日が決まりました。10月30日が初版の発行日になります。実はもう筆者のところにはダンボール箱ふたつ分の新著(つまり著者在庫分です)が届けられているのですが、出版社によれば、ISBNコードの登録に2週間程度かかり、書店注文ができるようになるのはそれからなのだそうです。おそらく10月30日頃には書店やインターネットで注文できるようになると思います。まずはいち早く確定した本の表紙を見ていただきましょう。左が宣伝用の帯(業界用語で腰巻きというそうです)を付けたところ、右が帯を取ったところのイメージになります(クリックで拡大します)。ここだけの話ですが、帯のコピー文もすべて著者の手になるものです。いけしゃあしゃあと大言壮語を並べてしまいました(笑)。

Hyoushi_a Hyoushi_b

 書店流通が始まると言っても、もちろんそれで全国津々浦々の書店に並ぶ訳ではありません。名もない書き手による自費出版本に、書店からの注文が入るわけもありません。それでも一部の書店には配本されるようです。この業界には「委託配本」というシステムがあるからです。慢性的な出版不況であるにもかかわらず、出版ラッシュが常態となっているこの業界では、書店が今月の新刊をすべてチェックして、仕入れる本を選ぶなんてことはできません。取り次ぎ(トーハンや日販のような流通企業)が、書店の規模や特徴に合わせて新刊をパッケージ化して一方的に送り付けて来るのです。それが委託配本という制度です。日本の書籍流通は、書店在庫や流通在庫を自由に出版社に返本できる仕組み(委託販売制度)になっていますから、書店では注文もしていない本が取り次ぎから送りつけられても、直接のリスクはないのです。売れそうもない本や一定期間棚に置いても売れなかった本は、返本してしまえばいいだけのことだからです。

 出版社や著者の側からすれば、どんなかたちであっても書店に流れることには意味があります。本は出版社の倉庫に寝かせておいても絶対に売れませんが、書店に配本されれば少しは売れるチャンスがあるからです。もしかしたら書店員が間違えて(?)棚に並べてくれるかも知れない。もしかしたらお客さんも間違えて(?)手に取ってくれるかも知れない。可能性は限りなく低いですが、ゼロではない訳です。しかし、ここでも自費出版本は旗色が悪い。実は自費出版の契約には有償で委託配本に乗せるオプションがあるのですが、委託先の書店は大型書店に限定されますし、陳列される棚はたいていは売り場の片隅にある「自費出版本コーナー」のようなところだからです。自費出版の広告では「あなたの本が書店に並びます」といったキャッチコピーを見かけますが、その実態はそんなもののようです。

 今回の出版に当たっては、本を売るためのオプションをいろいろ付けてみました。それもまあこのブログ記事のためのネタ作りという面もあるのですが、どのオプションが最も費用対効果が高いのかを試す意味もありました。(もちろんすべてが空振りに終わる可能性が一番高い訳ですが。) 委託配本や出版社による営業というオプションの他にも、書店に向けたFAXによる広告、マスコミや著名人に向けた献本というオプションも付けました。(もちろんすべて有料です。) 書店向けのFAXは、大都市圏の大型書店に向けてチラシをFAXで送るというもので、1店あたりいくらという料金設定になっています。こちらは全部で500店以上に送ることにしました。献本の方は新聞社や雑誌出版社などのマスコミ、それに当該分野で発言力を持っている著名人などに本を贈呈するもので、これは書評などで取り上げてもらうことを目的としています。こちらは出版社のアドバイスも参考にしながら、マスコミ向けと個人向けに約70冊ほどを送ることにしました。献本について助かったのは、個人では調べにくい著名人向けの送付先などを、出版社の方で調べてくれて、発送作業もすべてお任せできたことです。(と言っても、個人の住所に送る訳ではなく、所属する大学や著書の発行元に送るようですが。) ちなみに書店向けに作成したチラシのイメージも掲載しておきます。こちらの文章はすべて出版社の方で作成したものです。

Tirashi

 さあ、これだけの仕掛けをして、結果はどうなることでしょうか。初版は2000部を刷ったのですが、何部くらいが売れるものなのでしょうか。またリアル書店とアマゾンのようなようなネット書店とでは、どちらが無名の新人作家にとって相性がいいのでしょうか。出版社からは、例えば週単位や月単位では売上状況の報告を受け取ることはできないようなので(その点が少し不満)、結果をリアルタイムにお伝えすることは難しそうです。何か大きな変化があった時には、またこのブログでお伝えします。ということで、とりあえず今回の連載はここまで。この記事をここまで読んでくださった方は、ぜひ書店で手に取ってみてください…と言いたいところですが、書店にはまず並びません。ぜひお近くの書店から注文してください。このブログに関心のある方なら、絶対に損をさせない内容になっていますので…

『約束するお金と感謝するお金』
著者:矢野洋二
出版社:ブイツーソリューション
定価:1200円+税
ISBNコード:978-4-434-20932-1

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コメント

『約束するお金と感謝するお金』を購入し、拝読しました。同じようなことを考えてきた人間として、むさぼるように読みました。デ・シニョリッジという考え方は素晴らしいと思います。
実は、私も本を書いていました。12月10日に発売になります。「ベーシックインカムのある暮らし 『生活本位制マネーが』もたらす新しい社会」という本です。もっとも基本的な発想は矢野さんとまったく同じ、具体的な制度設計はまったく違うというものです。多くの人に、矢野さんの本と私の本を読み比べてもらえたら、と思っています。
古山明男

投稿: 古山明男 | 2015年12月 1日 (火) 22時26分

古山様

たいへんご無沙汰しております。以前、古山さんのベーシックインカム論を拙ブログで取り上げさせていただいたのは、もう6年も前のことになるんですね。

http://philosopher.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-495c.html

今回の私の本は、これまで減価通貨やベーシックインカムについて考えてきたことの集大成になります。とりあえず自分としては、非力ながらもひとつの到達点には達したという実感を持っています。

古山さんの新著、とても楽しみにしています。ぜひ拝読させていただき、また意見交換をさせていただければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

投稿: Like_an_Arrow | 2015年12月 2日 (水) 23時59分

こんにちは。
減価通貨ベーシックインカムについては、古山明男さんの減価通貨BI案も含めて、素朴な疑問があります。
例えば、一人当たり月7万円程のBIで、年間約100兆円程のBIを減価通貨発行で行う場合、もしそれが 「通貨発行量を100兆円増やし国民に配る」 ということなのであれば、たとえ減価通貨であっても、それは 「生産を伴わない所得」 なので、生産量に対して国民の所得だけが100兆円増えることになり、インフレになるのではないでしょうか?

投稿: kyunkyun | 2015年12月15日 (火) 14時47分

kyunkyunさん、こんにちは。

生産性の向上した社会では、生産量に比べて需要が常に不足しがちになりますから、恒常的なデフレ状況に陥ります。まさに現在の日本がそうですよね。
そうした状況では、BIの持つインフレ効果によって、むしろ経済が正常化する筈だというのが、BI推進派の主張である訳です。
極端な話、人口の1%の労働で残り99%の人の需要が満たせるような社会では、BIのようなもので需給調整を行なわなければ、経済そのものが成り立たなくなるでしょう。つまりBIにはインフレ効果がありますが、それは今のデフレ経済への処方箋という意味もあるんです。
お答えになってますか?

投稿: Like_an_Arrow | 2015年12月16日 (水) 00時49分

ありがとうございます。
これまで、例えば技術進歩などにより極端な所得格差が生じ、社会全体の消費低迷が生じた場合、税制等を通じた再分配型のBIが論理的に適切な対処だと思っていたのですが、「お金の量を増やして国民に配る」 も、適切な対処法なのかもしれないと、少し思うようになりました。
この点については、もう少し考えてみようと思います。

投稿: kyunkyun | 2015年12月19日 (土) 16時27分

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