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2015年7月 5日 (日)

本を作る(1)

■ブログを休載していたワケ

 長いあいだブログをお休みしてしまいました。本業の方が忙しかったとか、親の介護で時間が取れなかったとか、言い訳はいろいろあるのですが、それだけが理由ではありません。実は本を書いていたんです。いや、正確に言うと、本にするための原稿を書いていたというべきですね。それがどんな内容のものか、それはおいおいご紹介するとして、今回は本を出そうと決意した無名のマイナーブロガーがぶち当たった出版業界の厚い壁のことと、その壁を前にしての悪あがきについて少し書いてみようと思います。

 このブログを開設してまもなく(2006年のことです)、自選の記事をいくつかまとめて出版社に送ったことがありました。もちろんすべて突き返されて来ました。なかには丁寧な手紙を添えてくださったところもありましたが、そこには現在の出版不況の下では無名の新人の企画原稿を取り上げることは難しいというようなことが書かれていました。そりゃあそうですよね、もしも私が1日に数万件のアクセスを誇るアルファブロガーであるならともかく、せいぜい数十件のPV(ページビュー)しかないふつうのブロガーが本を出しても注目される訳がない。もしもそれで評判になるくらいなら、すでにブログの段階で評判になっていなくちゃおかしい。(苦笑)

 でも、今回はちょっと違うぞという意気込みがありました。なにしろ今回はブログ記事を集めただけではない書き下ろしの原稿です。しかも、明快なテーマを掲げ、斬新なアイデアが随所に散りばめられた自信作でもある。まあ、内容が内容だけにベストセラーを狙えるようなものではありませんが、この本を読んで面白いと感じてくれる人は国内に数千人単位でいるんじゃないか、そんな故なき自信を持っていたのです。どこか一社くらい、この原稿に目を留めてくれる出版社があってもおかしくはない。

 最初は大手出版社の「新書本」の編集部を中心に、何社かに送ってみました。内容から言っても、原稿の分量からしても、新書判で出すのがふさわしいと感じていたからです。……全滅でした。送った原稿はだいたい次のような返信文が同封されて送り返されて来ました。

「時下、ますますご清祥のこととおよろこび申しあげます。
さて、このたびは当編集部に原稿をお送りいただき、ありがとうございました。
拝読のうえ検討させていただきましたが、残念ながら採用しないという結論にいたりましたのでここにお知らせいたします。
昨今の新書出版の状況は大変に厳しいものがございます。事情ご賢察のうえ、悪しからずご了承ください。
末筆ながら、今後のご活躍をお祈りいたします。」

 ……「お祈り」されてしまった。エントリーシートをたくさんの会社に送っては、面接にもたどり着けない就活生の悲哀が分かったような気がしました。これは講談社さんからの返信ですが、大手出版社からの返信はみな似たようなものでした。定型文なのでしょう、どこもパソコンで打ち出したもので、編集者の署名もありません。儀礼的にでも「拝読しましたが…」と書いてくれているところは親切な方で、「弊社では現在持ち込み原稿を一切受け付けていません」というにべもない返事のところも多かったです。

 大手はダメだと気付いた私は、こだわりのありそうな中堅どころの出版社をいくつか選んで送ってみました。こちらの方が手応えはありました。何より誠実さを感じたのは、そうした出版社の多くはちゃんと原稿を読んでくれているように見えたことです。なかには落ち込んでいる自分を元気づけてくれるような返信をいただいたところもあります。

「貴重な原稿を拝見させていただきありがとうございました。とても面白く読ませていただいたのですが、弊社のような単行本しかやっていない出版社ではなかなか難しく、お力になれずに誠に申し訳ありません。
良い編集者との出会いなどによって好機を得ることもあると存じます。ひきつづきご健闘されることを祈念いたします。」(晶文社さん)

「原稿をお送り下さりありがとうございました。
小社が刊行を続ける読み手の少なそうなものとちがい、嬉しいご提案と受けとめました。原稿は読みやすく、いい文章だと拝察しました。
分量からして「新書」での刊行が適当かと思いました。小社での刊行は無理です。どこかいいところとめぐり合いますように。」(日本経済評論社さん)

 どちらも署名入りの手書きの手紙です。同じお祈りされるにしても、こんなふうに言っていただけると救われる気がしますね。まあ、出版できないという点では同じなんですけど。なるほど、現今日本の出版文化は(そんなものがまだあるとすれば)、こうした中小の出版社の職人気質を持った編集者に支えられているのだなあ、そんなことを思ったりもしました。

 そうしたなかで、ある出版社からの返信には、企画出版として採用するのは無理だけれども、共同出版なら可能性があるという提案が書かれていました。もしも商業出版が無理ならば、自費出版もやむなしと考えていた自分でしたが、共同出版という選択肢については考えたことがなかった。と言うか、「共同出版」っていったい何?(以下、次回に続きます。)

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