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2012年2月 5日 (日)

いまこそ日本のリベラルは大同団結を!

 橋下大阪市長の動静に注目が集まっています。少し前までは大阪府知事、そのもっと以前はテレビタレントとして名前を売っていた人です。さすがタレント出身者というだけあって、派手な言動やパフォーマンスで有権者の心を惹きつけるのはお手のものらしい。関東在住の私には、大阪府民の人たちも大変だなあと対岸の火事を眺めるような気分で見守っていたのですが、その橋下さんが今度は国政への参加に意欲を見せていると聞いて、これは他人事ではないと感じるようになりました。橋下氏率いる「大阪維新の会」は、次回の衆院選で200議席を獲得すると息巻いています。全国区に向けて、党名からは大阪の地名がはずされることになるのでしょうか。そう言えば、維新の会が現在策定しているマニフェストは「船中八策」というニックネームだそうで、どうも橋下さんは、ご自身を明治維新の英雄に重ね合わせているらしい。大阪ダブル選挙での勢いを見る限り、橋下新党が次の国政選挙で台風の目になることは間違いなさそうです。その人気にあやかろうと、中央政党も橋下氏に擦り寄る姿勢を見せています。かと思うと、大阪の動きに呼応するかのように、東京都知事も新党の立ち上げを宣言しました。こちらはいまのところ石原新党と仮称されています。民主党や自民党には、この先何も期待出来そうにありませんし、政界の次のトレンドは、大阪と東京というふたつの「地方」から生まれて来るのでしょうか。

 大阪維新の会のマニフェストを見ると、本文に「橋下府政の手法で」「橋下府政が行った」といった表現で、橋下氏の名前が7回も連呼されています。政党のマニフェストとして、これは異例なことでしょう。時代の閉塞感がこういう〈自己心酔型〉の政治家を強いリーダーと勘違いし、フォロワーが増えることは仕方がないような気もします。(ちなみに橋下市長も石原都知事も、日本の核武装化に賛成する考えをお持ちのようです。) いや、私は橋下さんのような政治手法を否定したい訳ではありません。掲げている政策にはことごとく反撥を感じますけど、実行力のある地方の首長が、地方行政での実績を引っ提げて、国政に乗り込んで来るのもアリだと思っています。そのくらいいまの中央政界の凋落ぶりは目に余るということでもあります。私は不思議でならないのですが、民主党はここまで支持率を落としているのに、何故分裂しないのでしょう。前回の衆院選では、民主党候補というだけで誰でも当選してしまいましたが、次回はそうはいかない。むしろ民主党の看板を背負うことは、選挙ではマイナスになるだろうと思います(これは自民党も同じです)。もしも機を見るに敏な民主党議員なら、離党して維新の会の門を敲くという選択肢もある筈です。相手もある程度の知名度がある現職議員なら、喜んで迎え入れるに違いない。選挙で勝てなければ職を失う彼らが、いつまでも泥舟にしがみついている理由が私には分からないのです。

 インターネットで話題になっている動画を見ました。民主党が政権を取る以前に、(無役だった)野田議員が街頭演説をしている映像です。天下りの根絶や無駄な財政支出の削減ということを、民主党マニフェストの一丁目一番地だと訴えている。政府の天下り法人をシロアリとののしっています。シロアリの駆除無くして消費税の増税はあり得ないともはっきり言っている。そうだった、あの頃はこうした言説が日本中を覆っていたのでした。私は野田さんが変節したのだとは思いません、もともとこの人には自らの政治的信念も哲学も何も無いのです。だからこそ、こうもあっけらかんと過去の言を翻せるに違いない。「増税に向けて逃げない、ブレない」なんて、ご自身のこの映像を見たあとでは恥ずかしくて口に出来ないだろうと思うのですが、そもそも虚ろな〈政界のパペット〉には恥なんて感情も無いのでしょう。(ここまで来ると、私はむしろ安倍さんから菅さんまでの歴代首相を懐かしく思い出します。) 政治家のなかにはカリスマ性やリーダーシップという意味ではイマイチだけれども、いかにもそつのない〈能吏タイプ〉といった人もいます。民主党のなかにもそういう人はいる訳じゃないですか(例えば枝野さんとか原口さんとか?)。どうせ〈つなぎ〉の総理なら、そういう人を選ぶべきでした。こんな総理大臣しか望めないということが、民主党政権の、いや日本の政治が根もとから腐っていることの何よりの証拠です。いや、我ながらひどい悪口雑言を並べているような気もしますが、YouTubeで野田氏の動画を見た私は、本当に腹を立てているのです。

 この中央政界の停滞(むしろ衰退と呼びたい気もする)を打ち破るためには、橋下さんのような野心家がひと暴れすることが必要なのかも知れない、そんなふうにも思います。ただ、私は次の選挙で橋下新党には絶対に投票したくない。もちろん民主党や自民党にも投票したくありません。おそらくそう思っている有権者は非常に多いと思います。ここまで来ると、いまの日本の政治に何が足りないのかが、誰の目にもはっきり見えて来たと思います。正統な日本のリベラル層が安心して一票を投じられるような政党が無いのです。社民党? 小選挙区の1割にしか候補者を擁立出来ないような弱小政党に、この国のリベラルを代表する資格などありません。共産党? 小選挙区で1議席も取れないような時代錯誤の政党に、この国の未来を託すことは出来ない。橋下新党に対抗するには、こちらも新しいコンセプトの新党が必要なのです。そしておそらくいま、リベラル層の潜在的ニーズを最も掘り起こすことが出来る新党のコンセプトは、「持続可能性」ということ以外にはないと思います。原発事故で国民の多くは政治的に目覚めたのです。脱原発ということだけでなく、すべてにおいて将来に負債を残さない、持続可能な社会を目指すことがこれからの政治の最大のテーマであるという認識にです。これはエネルギーや資源や環境といった問題だけに限りません、巨額の財政赤字や年金問題なども同じ構図で捉えることが出来ます。このままでは社会が破綻するという認識が、いまほど人々の共通の認識になったことはなかった。その危機意識の受け皿となる政党がどうしても必要です。

 最近はテレビもほとんど見ませんし、ツイッターにもログインしていないので、現場の雰囲気はよく分からないのですが、テレビ討論やツイッター上で並みいるリベラル派の知識人たちが橋下市長にコテンパンにのされているのだそうです。(そのなかには我が敬愛する内田樹先生も含まれているらしい。笑) ふがいない話ですね。橋下氏のやろうとしていることを見れば、規制緩和や法人減税による企業の誘致だとか、高付加価値型産業への転換だとか、教育バウチャー制の導入だとか、ひと昔前の構造改革派(新自由主義)の政策の焼き直しに過ぎない。つまり市場原理をベースにした経済成長最優先主義です。対立軸を設定すべき場所は、まさにそこなのです。もはや経済成長を追求する時代は終わった、これからはいかに限られた資源を循環させながら、持続可能な社会に移行して行くかが最重要な政治的テーマである。おそらくそれを具体的な政策論に落とし込んでアピール出来る政党が現れれば、その党はこれからの政界再編の第三極としての位置を占めることが出来る。(第一極は滅びつつある中央政党、第二極は新自由主義的な政策を掲げる地方政党です。) 橋下氏に反対する人たちは、そこを軸にして具体的な政策を練り、国民にアピールしなければならない。批判のための批判ではもう誰も説得出来ません。福島の事故のあと、文化人類学者の中沢新一さんが日本版「緑の党」の結党を宣言していたと思います。あの構想は一体どうなったのでしょう? 先日の新聞の読者投稿欄に、社民党は緑の党に合流してはどうかという意見が載っていました。私もこの意見に賛成です。もはやリベラル陣営のなかで派閥を争っている場合ではない。いまこそ「持続可能性」という大義のもとに、日本のリベラルは大同団結すべき時だと思います。

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コメント

「持続可能性」、ベーシックインカムの考えを掘り下げてくとここに突き当たります。
今、この時機に、大三極政党がベーシックインカムを掲げれば、恐ろしいほどに注目され支持を受けるでしょう。
でも、たぶん私は、支持しない、できないだろうと思います。

「持続可能性」を掲げる事は"無限の"経済成長を否定するのと同義です。鳩山さんがCO225%減と「持続可能性」を一緒に謳ったなら支持できたけど彼の言じゃあねえ。

開放経済と持続可能性は折り合いの着けようが無い。
鎖国するには1億2千万の人口はこの小さな国では多すぎる。
技術革新による高生産性を期待するなら、それは経済成長の亜種でしかない。

最後の最後には
「国内流入組にもベーシックインカムを認めるか、国外流出組にもベーシックインカムを認めるか」
に行き着いてしまう。

囲いをどこに設定するか、でしょう。

投稿: ロシナンテ | 2012年2月 6日 (月) 02時49分

突然のコメント失礼いたします。いつも、死刑や陪審員制の記事興味深く、またベーシックインカムについては共感を持ち拝読させていただいております。

ただ、橋下大阪市長については若干意見が異なります。

市長が出した西成に対する徹底的なえこひいき対策や参議院の廃止などには基本的には賛成です。
結果の平等や縮こまり思想では何も変わらない気がします。

変えようと思うことは何よりも大事なことではないでしょうか?

浅い知識ですみません。

投稿: アラキ | 2012年2月17日 (金) 23時52分

アラキさん、いつも記事をお読みいただいているそうで、ありがとうございます。なかなか平日はパソコンに向かう時間もなくて、いただくコメントにご返事することも出来ていません。

橋下さんの個々の政策提言については、賛否両論あって然るべきですし、私も全否定しようとは思いません。ぶっちゃけた話、もしも橋下さんのような有力な若手政治家がたくさん現れて、それぞれ違う立場で政策を競ってくれるならいいんです。有力な対立軸が無く、台風の目が橋下氏ひとりだという点に懸念を感じているんですね。

個々の政策はともあれ、橋下さんという人の基本的な方向性は、市場開放・規制緩和を謳った小泉政権の政策の焼き直しではないかと私は思っています。そこにはっきりとした対立軸を打ち出してくれる政治家や政党が現れることを私は願っているのですが…

投稿: Like_an_Arrow | 2012年2月19日 (日) 00時02分

ご丁寧に返信いただきありがとうございます。

浅い知識で書き込んでしまったことに返信いただきありがとうございます。

投稿: アラキ | 2012年2月19日 (日) 14時09分

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