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2011年10月23日 (日)

エレベーター制御の効率化について考える

 長い連載で疲れました。ここらで少し軽い話題に転じましょう。30年余りのサラリーマン生活の中で、ずっと不満に感じていることがあります。それはオフィスビルにあるエレベーターを制御するシステムの非効率さについてです。古いオフィスビルのエレベーターホールは、毎朝9時前になると人でごった返します。都会のどこでも見られる光景ですが、ちょっとした工夫でこの混雑は緩和出来るのではないかと思うのです。今回は私が考えるエレベーター制御システムの改善方法について思いつくままに書いてみたいと思います。私はその分野の専門家ではありませんし、すでに最新のオフィスビルではもっと進化した制御方法が取り入れられているのだろうとも思います。(と言っても、経験的には優れた制御システムを持ったエレベーターに出会う機会はほとんど無いような気がするのですが…) まあ、ひとつのネタだと思って気楽に読んでください。

【アイデア1】 ホームポジションで待機させる

 オフィスビルのエレベーターには、1日に2回のラッシュアワーがあります。朝の始業前と昼休みが始まる時間帯です。通常、朝は昇りエレベーターが、昼は降りエレベーターが混むことになります。それ以外にも午後の始業時前や夕方の終業時後にも小さなピークはありますが、混雑の度合いとしては大したことはありません。だからエレベーターの効率的運行の工夫をするなら、まずは朝の9時前と昼の12時前後を目標にするのが正解です。

 このうち朝の時間帯の混雑緩和には、エレベーターを1階(ロビー階)で待機させる「ホームポジション制」を採用するのが有効ではないかと思います。つまりボタンで呼ばれていなくても、とりあえずロビー階に戻って待機するように設定するのです(設定する時間帯は、入居している企業の出勤時間に合わせて調整します)。この時、すべての号機をホームポジションに待機させる必要はありません。例えば全部で6台あるうち4台をそのように設定するといったイメージです。ホームポジション設定をされたエレベーターは、乗客が誰もいない状態になったら、すぐに指定された「ホーム階」に直行します。途中で乗客は拾いません。

 もうひとつホームポジション制で重要なことがあります。それはホーム階に着いたエレベーターは、扉を開けた状態で待機するということです。現在のエレベーターシステムが不合理なのは、ロビー階で1機のエレベーターに客が乗降しているあいだ、たとえその階に他の号機が来ていても、扉が開かないことです(少なくとも私の働いているビルではそうです)。せっかく複数の号機があるのに、乗降中は他の号機の稼働が止まってしまうのです。これはひどい無駄です。かと言って、乗降中にエレベーターホールの「▲」ボタンを押すと、カラの号機ではなく乗車中の号機で閉まりかけた扉が開いてしまったりする。これでイライラした経験のある人は多いのではないでしょうか。

 もしもホームポジションでは扉を開けて待つようにすれば、この問題はクリア出来ます。そしてもうひとつ、そこに重要なアイデアを追加します。待機中のエレベーターは、乗客が中で「閉」ボタンを押さない限り扉が閉まらないのですが、ボタンを押してもすぐには閉まらないルールにするのです。乗客の総重量の増減が止まってから、3秒くらい経過してから閉まるようにします。(3秒という時間が妥当かどうかは、実験によって確かめる必要があります。) 何故そんな仕組みにするのかと言えば、ひとつには安全のためということもありますが、これによって乗車率を上げるためです。3秒ルールがあれば、乗客の流れが中断されないため、広いエレベーターホールのあるビルなどでも、乗客を積み残して発車することが少なくなるという読みです。エレベーターには積載重量を測定する機能が付いている筈ですから、これはソフトウェアの修正だけで実現出来ると思います。ホームポジション制と3秒ルールは、朝の時間帯のロビー階から発車するエレベーターだけに適用されます。

【アイデア2】 満員通過を基本ルールにする

 こちらは昼に発生する降りエレベーターの混雑を緩和するアイデアです。エレベーターを待っていて、何が一番イライラするかって、やっと停まった1台が満員で乗れなかった場合ほどストレスのたまることはありません。これは乗ろうとしている側だけでなく、すでに乗っている乗客にとってもイライラの原因になります。(「おい、停めるなよ!」、「そっちこそ停まるなよ!」。) しかも、1台が無駄に停車しているあいだに、別の空いた1台がその階を素通りしているかも知れないと思うと、イライラは頂点に達します。この問題の解決方法は簡単です。やはり総重量で判断して、満員に近い状態なら(その階で降りる人がいない限り)満員通過させればいいのです。

 これは簡単なことなので、もうそれを実現しているエレベーターもあるかも知れません(私の働いているビルではまだですが)。この機能を実装した上で、さらにその効果を高める方法があります。それは、このエレベーターが「満員通過型」であることを、このビルの居住者全員に周知させることです。朝や昼の混雑時にも、ふつうエレベーターは積載可能重量ぎりぎりまで乗客を乗せている訳ではありません。すでに乗り込んだ人は、早く発車させたい気持ちと、過密になることの不快さを避けたいという気持ちがあるので、ぎりぎりまで詰めて乗ることをしないからです。しかし、満員通過ということをみなが知っていれば、詰めて乗るようになるんです。それは目的地のロビー階までノンストップで行ける特急券を手に入れるのと同じことですから。

 これをアシストする大事な機能をもうひとつ追加します。エレベーターは積載重量を超すとアラームブザーが鳴るように設計されていますよね。それとは別に積載重量に近づくと(心地よい音色の)チャイムが鳴るようにするのです。例えば積載重量まであと100kgを切った時点で鳴らすようにします。これはつまりそのエレベーターが「満員通過モード」に入ったことを意味します。これまでは最後に乗り込もうとする人を、すでに乗っている人が疎ましい目で見ていたかも知れませんが、これからはむしろ後から乗る人を喜んで招じ入れてくれるようになるのです。(些細なことですが、ひとつだけ難点があるかも知れません。身体が並はずれて大きな人にとって、これは嬉しくない機能かも知れないということです。自分が乗り込むことで、チャイムが鳴らずにいきなりブザーが鳴ったとしたら、それはちょっと恥ずかしいでしょう? 笑) お知らせチャイムと満員通過機能は、ラッシュ時だけでなく、すべての時間帯、すべての号機に適用されるものとします。

【アイデア3】 近隣階への移動を制限する

 この夏の節電で、「近隣の階に行く時はエレベーターを使わずに階段を使いましょう」という標語が掲げられたオフィスビルも多かったのではないかと思います。どこかのビルでは「節電と健康増進のために」というポスターが貼ってあるのを見掛けたことがあります。この際、エレベーター自体の機能としてこれを組み込んでしまったらどうでしょう。ある階に止まって扉が開いた時点を境に、進行方向に向かってひとつ先の階の行き先ボタンを無効にしてしまうのです(もちろんすでに別の階から乗った先客が押していた場合は有効です)。これによって隣接する階への移動手段としてエレベーターを利用することが出来なくなります。

 電力不足と節電という〈錦の御旗〉があれば、そのことに文句を言う人もいません。もしもビルの管理会社や入居企業がもっとハードな節電を望むのなら、「ふたつ先のフロアまでは階段!」というルール設定にすることだって出来ます。(もちろん設定を解除することも出来ます。障害者用エレベーターなどはこの設定の対象外とすべきです。) これは節電や入居者の運動不足解消に役立つだけでなく、効率的なエレベーターの運行という点でも効果が期待出来るやり方です。特に高層ビルなどでは、近隣階への移動にエレベーターを使う人が多いと、全体としての輸送能力が大きく低下することになる筈だからです。この方式を採用するためには、やはりエレベーターを使う人への通知を徹底させたり、操作ボタンの近くに分かりやすい説明表示をする必要があります。またこのビルへの来訪者が戸惑わないように、ロビー階が発地または着地になる場合はこの設定の対象外とすべきでしょう。

 節電と居住者の健康増進とエレベーターの効率的運行が同時に実現出来るなんて、実に素晴らしいアイデアだ。けれども、このアイデアにはひとつ重大な欠陥があります。近隣階に行く人が〈迂回路〉を通って行くという裏技に気付いてしまった場合です。例えば5階から6階に行きたい人が、いったん8階まで上がって、同じエレベーターで6階まで降りて来れば、規制を回避出来るのです。電力を余分に消費し、エレベーターの効率的運行をも阻害する、実にひどい裏技だ(私だったらやりますね。笑)。利用者のこういう行動を予防するためには、どうすればいいでしょう? 一番簡単なのは、エレベーター内に監視カメラを設置して、録画しておくことでしょうか。別に違法なことをしている訳ではありませんが、近隣階に行くために上がったり下がったりしている様子をビデオに録られるのは愉快なことではありませんから、抑止効果はありそうです。まあ、そこまでして実現するほどのアイデアかという気もしますが…

 ――という訳で、最後は少し尻つぼみになってしまいましたが、利用者のひとりとして、エレベーターメーカーにはぜひ検討していただきたいところです。インターネットで検索すると、エレベーターの効率的な制御という問題に対しては、いろいろ専門的研究がなされていることが分かります。複雑な数学的アルゴリズムを使った最適化ロジックが、特許申請をされていたりもします。もちろんそれが最新の高層ビルにおけるエレベーター制御に欠かせないものであることは認めますが、利用者視点に立てば、もっとベーシックな部分で改良の余地があるように思うのです。今回の私の提案は、特別な追加の設備投資を必要としない安上がりな方法ばかりです。全世界に何台くらいエレベーターというものがあるのか知りませんが、もしも利用者の啓発を前提としたこの方式がグローバルスタンダードになったとしたら、人類全体でどれほどの効率化と省エネが実現するか、それを思うと胸がワクワクするんです。

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コメント

一階でエレベータがもたもたするのは,計画的です.一階でもたついていると,遅れてきたお客さんもそのもたついているエレベータに乗れます.もたつかないと,そのお客さんは乗り過ごして,そのエレベータを待つ,あるいは違うエレベータを使用することになります.これが連鎖すると,一階での待ち時間がすごく長くなります.これを防ぐために,扉の開閉速度を遅くしたり,開く時間を待ってもらうために扉を閉じたりしているのです.多分.

投稿: | 2014年6月19日 (木) 19時20分

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