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2011年6月19日 (日)

この夏は「節電てんでんこ」で

 この夏は本当に深刻な電力不足が起こるのでしょうか? これだけ電力危機が叫ばれて、節電に向けた社会的圧力が高まっていると、むしろ大幅な電力需要の減退が起こって、電力各社の業績に大きなダメージを与えるのではないか、その確率の方が高いような気がします。電力会社の業績が悪化するだけならいいのですが、もしかしたら需要が予測よりも大きく下振れすることで、電力供給が不安定になることだって考えられます。電力不足で大規模な停電が起こるというのは分かりやすい話ですが、逆に電力需要に対して供給の方が大きくなり過ぎても問題が起こる可能性がある。過電圧によって電力会社の設備にトラブルが起これば、やはり大規模な停電を引き起こす原因となり得るからです。電力会社は通常時でも、時々刻々の電力使用量の変化を予測しながら、発電量を細かくコントロールしています。

 今年はこの電力使用量の予測も難しいものになるのではないかと思います。東京電力は最近「でんき予報」なるものを始めました。東電はこれまでの経験から、天候や外気温の変化がどのように電力使用量に影響を与えるか、それを正確に予測するためのロジックを確立している筈です。ところが今年に限っては、その予測ロジックが有効に機能しない可能性があるのです。何故なら「でんき予報」そのものが電力消費に与える影響については、過去の経験知をまったく持っていないからです。例えば、発電量に対して電力使用量が95%を超えた時点で、テレビやラジオが一斉に節電を呼び掛けたらどうなるでしょう。それに呼応して多くの家庭が一斉にエアコンのスイッチを切ったとしたら、その急激な電力需要の縮小に果たして電力会社の設備は耐えられるだろうか。(なにしろエアコンは家庭の電力使用量の半分以上を占めているのです。) まあ、私のような素人の心配することでもありませんが、世間の非難を一身に浴びて思考停止に陥っているように見える東電が、自ら発信するでんき予報なるものの副作用を計算に入れているか、その点については注意を促しておきたい気がします。

 この夏の節電対策については、これまでもこのブログではいろいろなアイデアを書いて来ました。それでもまだこの話題にこだわるのは、政府の発表した15%の節電目標が、あまりにも国民のあいだで深刻に受け取られ過ぎていて、停電よりもむしろ節電による二次被害の方が懸念されるからです。とにかく15%だろうが10%だろうが、一律の節電目標というのが一番よくない。もしも政府が節電を呼び掛けるなら、各家庭でエアコンの温度を高めに設定するなんて危険なことは言い出すべきではないと思います。むしろこう言うべきです、在宅時には無理な節電をしないでください、もしも節電に協力していただけるなら、エアコンを止めて外出をしましょう、今年は街なかにたくさんの〈クールスポット〉を作りますから、特に電力使用のピーク時にはそこで過ごすようにしてください、と。そして公共施設や交通機関や店舗など、人が集まる場所では例年どおりの冷房温度にするよう行政指導をします。これはとても大事なことです。すでに私たちは一律15%の節電を刷り込まれていますから、たまたま入った百貨店で冷房が十分に効いていたりすると、そのことで文句を言う人が必ず出て来る。すると店側も悪評を怖れて冷房を弱めに設定することになります。こうして街はどこにもオアシスの無い砂漠のような場所になってしまう。熱中症で倒れる人も続出するでしょう。外出する気持ちも萎えてしまった人々は、結局家に引きこもり、家にいれば冷房を使わない訳にはいきませんから、電力消費はうなぎ登りという悪循環になる…

 これだけの想像でも、目標値を一律に設定した節電への取り組みが、いかに的外れなものであるか、理解していただけたのではないかと思います。私の考えでは、この夏の節電対策のポイントは、いかに人々を家から外に連れ出すか、それを政策的に誘導出来るかという点にあります。そのための一案として、夏限定で高速料金を無料化したり、ガソリン税を引き下げることで、自動車の利用率を高めるというアイデアについてはすでに書きました。企業の中には、勤務時間をシフトしたり残業を抑制することで節電に協力しようという動きもあるようですが、効果は疑問です。従業員は、会社を出れば自宅かお店か、いずれにしてもどこかで電力を使うことになるからです。むしろ事務所などのオフィスでは、休日を増やす代わりに、就業時間をいつもより長めに設定した方が節電のためにはいいかも知れません。お店も同じです、冷房温度を高めに設定した店内に客がまばらというのでは、電力効率がとても悪い。快適な温度の店内で、たくさんのお客さんになるべく長居をしていただく、それこそが節電への協力でしょう。この夏百貨店やショッピングセンターなどでは、休憩用にたくさんの椅子を置いたりするのもいいですね。政府はそのような快適で長居オーケーのお店や施設に、「クールオアシス」というネーミングを用意して、それを示すステッカーやノボリを配布してはどうでしょう。もちろんオアシスを求めて外出する人が増えれば、景気のためにもいいに決まっています。

 今回の震災で「津波てんでんこ」という言葉があることを知りました。津波から逃れるためには、ひとりひとりがお互いを構わずに高台を目指せという教えだそうです。これをもじって言えば、この夏私たちが心がけるべきは「節電てんでんこ」ということなのだと思います。節電を気にかけない訳ではないけれど、みんなが無理をして一律15%の目標に向かう必要は無い。お年寄りや体の弱い人がいる家庭では、電気を惜しむべきではないし、遊びざかりの子供のいる家庭では、家族揃って出掛けることがすなわち節電への協力になる。節電への協力も各人各様、てんでんこがいい。いずれにしてもこの夏に大規模停電は起こりません。最後は電力会社が計画停電で帳尻を合わせるからです。だとすれば私たち消費者があまり深刻に電力不足で悩む必要は無い訳です。すべての家庭がテレビやパソコンをずっとつけっぱなしにして、でんき予報を固唾を飲んで見守っているなんてのは、節電対策としても本末転倒でしょう。電力会社には、時々刻々の「現在の電力使用量」というものの発表は取りやめてもらいたい、個人的にはそう思います。あれは電気を使う国民への脅迫状であり、節電てんでんこへの挑戦状に他なりません。

 計画停電の話が出ましたから、これについても卑見を少しだけ。この夏も必要があれば計画停電を実施する旨、東電は発表しています。これは仕方が無いと思います。この3月に大混乱を起こした経験から、停電区域と無停電区域を分けることも仕方がないと思います。ただ、真夏の猛暑のさなかに停電時間2時間は長過ぎます。せいぜい1時間、可能であれば30分以内に抑えるべきです。猛暑のなかで冷房が止まっても、生命を危険にさらさないためには、たぶんそのくらいの時間でなければならない、この点は3月とは条件が違うことを電力会社は再考すべきです。そしてもうひとつ、計画停電の地域をあらかじめ告知することも止めてはどうでしょう。停電は予告なしにいきなりやって来る、これを私は「ロシアンルーレット方式」と呼んでいるのですが、メリットは次の点です。もしもあらかじめ停電区域がアナウンスされていると、その他の地域では節電へのインセンティブが無くなってしまうのに対し、ロシアンルーレット方式なら(無停電区域以外の)すべての電力利用者が常に節電を心がける理由を持つことになるのです。いや、工場や病院など、たとえ30分でも〈抜き打ち〉の停電は困るという利用者もいる筈ですから、該当地域に対しては停電の1時間前に告知するルールでも構いません。(告知はテレビやインターネットではなく、地域の緊急放送網を使って行ないます。ラウドスピーカーを使ってのアナウンスです。) もしも〈ロシアンルーレット〉というネーミングがまずいなら、こちらは「停電てんでんこ」と呼んでもいいです。

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コメント

通りすがりで失礼します。

節電対策として自動車の利用促進とありましたが、むしろ節電には逆効果です。
自動車交通量が増えることにより、自動車から出る排熱で大気の温度が上がります。いわゆるヒートアイランドです。そうなると全体的に冷房の温度が上がり、電力消費量はむしろ増大します。さらに、冷房の設定温度上昇による排熱で、大気の温度がさらに上がります。もう悪循環です。

自動車(特にマイカー)と言うのは、エネルギー効率が非常に悪い乗り物です。二酸化炭素も大量に排出します。節電というのはエネルギー効率を高めることなのに、電気を使わないという理由だけで自動車利用を促進するのは、本末転倒だと思います。

投稿: 通りすがり | 2011年6月21日 (火) 07時43分

①自動車利用による電力使用量の減少分=自動車を使わなかった場合に冷房や電灯に費やしたであろう電力量

②自動車利用による電力使用量の増加分=自動車の排熱によるヒートアイランド現象での気温上昇に伴う住宅やオフィスでの冷房に費やす電力量の増加分

とした場合、①より②の方が大きいとおっしゃるのですね? 裏付けとなるデータを持っていないので確たることは言えませんが、常識的に見てありえないと思います。冷房を使わなくなる家庭が増えれば、ヒートアイランド現象の抑制につながるという視点も欠けています。

後半の文章も私には説得力がありません。この夏の電力不足と二酸化炭素の排出やエネルギー効率が、何か関係があるのでしょうか?

投稿: Like_an_Arrow | 2011年6月21日 (火) 23時21分

>この夏の電力不足と二酸化炭素の排出やエネルギー効率が、何か関係があるのでしょうか?

エネルギー効率が上がれば、電力消費量削減の影響を最小限に食い止めることができます。簡単なことです。

冷房使用量削減のために外出促進を図るのであれば、鉄道やバス等の公共交通利用の促進を図るべきです。公共交通は、マイカーに比べればエネルギー効率が格段に良いからです。ちなみに、東京23区の場合、自動車交通量が1割増えれば気温が0.1度上昇すると言われています。

「節電対策でマイカー利用促進」という案が、政府はおろかインターネット上を見渡しても誰も言わないのは、エネルギー効率が悪いなど、マイカー利用促進が様々な弊害をもたらすことを理解しているからです。

投稿: 通りすがり | 2011年6月22日 (水) 07時40分

通りすがりさん、コメントへのリプライ、ありがとうございます。

もちろん、鉄道やバス等の公共交通機関の利用促進でも、節電効果はあります。そして私の考えでは、冷房に東電の電力を使う鉄道よりも、ガソリンで冷房するバスの方がより節電効果は高いことになります。

この記事で問題にしているのは、エネルギー一般の話ではなくて、この夏の電力不足の話ですから、エネルギー効率が良い悪いの問題ではないのです。

自動車交通量が1割増えると、気温が0.1度上がるのですか。気温が1度上がると電力消費量は3%増えると言われていますから、交通量が2倍まで増えて、やっと電力消費量は3%増える計算です。それなら家庭で冷房を使わなくなる効果の方がずっと大きいような気がするのですが。

単純な話なんです。東京電力管内には、東電の電気で稼働するエアコンが数千万台はあるでしょう。同じように東電の電気を一切使わないエアコン(カーエアコンのことです)も何千万台の単位である筈です。前者を止めて後者を動かせば、この夏の電力不足解消の一助になる筈だ、この理屈のどこが間違っていますか?

投稿: Like_an_Arrow | 2011年6月23日 (木) 00時23分

>前者を止めて後者を動かせば、この夏の電力不足解消の一助になる筈だ

それは、マイカーをエアコン代わりで使う場合であって、移動という行為を伴わない場合ですね。
マイカーで移動すれば、相当なエネルギーが必要です。ちなみに、マイカーの移動のためのエネルギー消費量は、鉄道の8倍以上です。

http://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa54/ind020102/003.html


>エネルギー効率が良い悪いの問題ではないのです。

エネルギーを消費すると相応の熱を発生するというのは、中学生の理科で習う内容だと思います。
同じ効果を得るためには、エネルギー消費のより少ない方法を選択すれば、熱の発生量も少なくなります。つまりはヒートアイランド現象が発生しにくくなります。そうすると、温度上昇の抑制により、冷房消費の抑制にもつながり、さらには電力消費の抑制にもつながります。

よって、エネルギー効率の問題は、今回のテーマに大いに関係します。


>交通量が2倍まで増えて、やっと電力消費量は3%増える計算です。

自動車交通量が2倍って、どんな現象か想像していますか?渋滞多発どころか完全に道路は機能マヒですよ!もっと言うと、渋滞多発によってエンジンのアイドリング時間が増えます。つまり通常よりも多くの熱を発生します。「2倍で3%増加」と単純にはいきませんよ。


>単純な話なんです。

このテーマを定量的に評価しようとするのは、大学などの研究機関が1つの研究テーマとしうるほど複雑です。


家庭での冷房使用抑制のために外出を促進するという発想自体はいいのですが、その場合は鉄道などの公共交通機関利用促進を図るべきです。あと、12時~15時のピーク時間帯を公共施設で過ごすというのもいいですね。実際、節電対策でそのような説を述べている方もいらっしゃいます。

家庭での冷房使用抑制のためには、自らが別途熱量発生の原因を作るのではなく、電車を利用したり公共施設に移動したりするように、「自分がいようがいまいが冷房が利いている」環境、つまり他の冷房環境に乗っかるのがいいですね。

投稿: 通りすがり | 2011年6月23日 (木) 06時56分

補足です。
他の冷房環境に乗っかる案については、ちゃんと述べてらっしゃったんですね。自動車利用促進ばかりに目がいっていました。大変失礼しました。

高速道路無料化やガソリン値下げといった、節電に逆効果になる案については当然反対ですが、「クールスポット」など、自動車利用促進につながらないその他の案については、概ね賛成です。

投稿: 通りすがり | 2011年6月23日 (木) 07時14分

通りすがりさん、こんばんは。

自動車利用の節電効果については、お互い最後まで折り合えなかったようですが、その他の案にはご賛同いただけたようで、少しほっとしました。

「通りすがり」と言わず、たまにはまたお立ち寄りください。

投稿: Like_an_Arrow | 2011年6月24日 (金) 00時15分

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