« 「日本にも緑の党を」に賛成、だけど… | トップページ | こうなったら「首相輪番制」だ! »

2011年6月 5日 (日)

「ロングテール緑の党」ってどうでしょう?

 中沢新一さんの呼びかける「日本版緑の党」が、もしも実際の政治政党として実現するなら、ぜひ応援したいと思います。が、そのための道は険しいものになるでしょう。現在の日本の国政選挙は、既存の大政党だけを優遇して、小政党や新興政党を徹底的に排除するように制度化されているからです。小選挙区制の下では大政党以外が議席を獲得することはほとんど不可能なので、小政党は比例区だけに絞って候補者を立てる訳ですが、そこには供託金の壁が立ちはだかります。日本は世界一、選挙に立候補するための供託金が高い国です。衆院選でも参院選でも、比例区にひとりの候補を立てるためには600万円を供託しなければならないのです。しかも落選すれば全額没収、これも世界に例を見ない厳しい制度です。さらにひどいのは、大政党の指定席である小選挙区では、供託金は半分の300万円と安くなっている点です。民主主義国家などと言いながら、その基盤である選挙制度が大政党に有利なように露骨に歪められているのです。これは民主党と自民党の議員にとっての既得権ですから、国政の内部から選挙制度を見直そうという動きが活発化することもありません。

 私は国政選挙は選挙区をやめてしまって、全国単一の比例区にしてしまえばいいと思っています。そうすれば一票の格差という問題も解消するし、得票数の割合がそのまま政党の議席数の割合になりますから、国民の意思が歪められることなくストレートに選挙結果に反映されるようになる。しかし、現実問題として選挙制度を変えることは、全国の原発を止める以上に難しいことですから、とりあえず現在の制度を前提に新しい政党を立ち上げるしか選択肢はありません。ここで思い出すのは、以前このブログで書いた「ロングテール新党構想」のことです。今日の政治は、ひと言で言えばポピュリズムの政治です。すでに知名度を得た政党、すでに知名度を得た候補者が、最大公約数の票を集めて議席を獲得する。それが民主主義の政治にかなったものであるかどうか私には分かりませんが、選挙における「ロングテール戦略」というのは、その対極の考え方に基づくものです。ロングテールというのは、(ご存じの方も多いと思いますが)何年か前にマーケティング理論としてもてはやされた考え方で、現代のような価値観が多様化した時代には、大ヒット商品をひとつ生み出すよりも、多様な商品を品揃えよく並べた方が売上に寄与する、そういう考え方のことです。この理論を選挙戦略に応用するのです。すなわちひと握りのスター性のある候補者を立てて票をかき集めるのではなく、知名度は低くてもその分野で実績のある人たちをたくさん候補者として集めて、知名度よりも専門性で勝負するのです。

 以前の記事で書いたアイデアを少し改良しながら、「ロングテール緑の党」の構想について簡単に説明します。新党を立ち上げる中沢教授は、党の設立主旨を広くアピールすると同時に、党員とサポーターの募集を始めます。いや、この党はフラットな組織を目指しますから、党員とサポーターの区別も要りませんね、サポーターだけで十分です。重要なことは、党が掲げる政策綱領やマニフェストだけでなく、選挙戦略についても最初に明確に示しておくということです。例えば、サポーターの年会費を2000円とし、そのうち半分を供託準備金としてプールしておく。もしも10万人のサポーターが集められるなら、それだけで年間の準備金は1億円になります。つまり比例区に16人くらいの候補者を立てられる計算です。立候補者はサポーターの中から自薦、他薦で募ります。解散総選挙はいつ起こるか予測出来ませんから、ふだんから次の選挙を目指して候補者の名簿順位を決めておきます。名簿順位は、全サポーターのインターネット投票によって決められます。選挙で何人の候補者を擁立するかは、その時の準備金の残高によります。16人分の供託金しかない時に、30人が立候補すれば、14人は足切りせざるを得ませんが、それはサポーターが投票した結果なので仕方ありません。拘束名簿方式を採る衆院選では、党内の投票結果がそのまま比例区の名簿順位になります。非拘束名簿方式の参院選では、党内投票は候補者の足切りに使われるだけで、当選順位は実際の選挙によって決まることになる訳です。

 党内のインターネット選挙のやり方で、ひとつこんな工夫を導入したいと思います。投票するサポーターは、各人2票ずつの投票権を持つものとします。立候補者のなかから二人を選んで投票出来るのです(一人に対して2票という投票は出来ません)。そしてこれとは別に、各サポーターはマイナス1票の投票権を持ちます。この人にだけは党の候補者として立って欲しくないという人がいたら、この1票を行使してもらうのです。何故そんな仕組みが必要かというと、知名度のある立候補者がこの党を踏み台にして政界への足掛かりにする、そんな事態を阻止するためです。ロングテールの理念を守るため、あるいは衆愚制に陥らないためと言ってもいい。例えば今回の緑の党で言えば、反原発や自然エネルギー推進といった分野で実績ある候補者のなかに、浪人中の東国原氏あたりが紛れ込んだらどうなるでしょう? 新党がそうそうたくさんの議席を獲得できる筈はありませんから、緑の党からの当選は東国原氏たったひとりなんてバカげたことにもなり兼ねない。しかし、サポーターが1票ずつの拒否権を持っていれば、こうした〈異物〉が紛れ込んでしまう危険性を回避出来るのではないかと思うのです。ただ、この点はもっと議論が必要ですね。各人に与えられたマイナス1票だけでは、東国原さんのような人が何人も紛れ込んだ時に、排除し切れないかも知れない(笑)。むしろこれまでの活動や発表した論文などの実績から、不適切な人をふるい落とす仕組みを取り入れた方がいいかも知れません。大事なのは、それが恣意的な振り分けになってしまわないような基準を工夫することです。

 ロングテール政党は、決して政権与党を目指すものではありません。例えば「緑の党」なら、脱原発・自然エネルギー推進という一点に争点を絞って政治活動を行ないます。この党が、憲法改正に賛成か反対か、死刑制度に賛成か反対か、なんてことまで争点にしたら、誰も気軽にサポーターになどなれなくなるし、政党としても後々の分裂の要因を抱え込むだけのことでしょう。(この点で既存のグリーン勢力である「みどりの未来」は、分をわきまえずに欲張り過ぎています。) もちろん国会議員になれば、どの党の所属であろうとすべての議案に投票権を持つ訳ですから、緑の党から送り出した議員が護憲派なのか改憲派なのかは気になるところかも知れません。ただ、それは党内選挙の際にプロフィールとして明らかにしておけばいいだけのことです。国会におけるこの人の役割は、原発の安全性に関して質問主意書を出したり、新エネルギー政策に親和的な他党の議員と組んで新しい法案を提出したりすることにあるので、その他の領域の問題についてはむしろ中庸な立場を守ることが求められます。私はこのような専門性を持ったロングテール政党がたくさん現れて来て、そこ出身の議員が国会のなかにたくさん生まれればいいと思っています。そして私たち有権者は、自分にとって関心のある分野でいくつかの党のサポーターとなり、そこから意中の候補者を国会に送り出すことで国政に参加するのです。

 今週、国会では野党が提出した内閣不信任案への投票がありました。茶番劇と呼ぶことさえ虚しいような国会風景に、国民は怒りを通り越して呆れ果てています。これは政権末期なのではない、日本の政党政治そのものが末期症状を呈しているのです。政権交代によって二大政党体制が実現したと言っても、民主党と自民党のあいだにどのような本質的な政策の違いがあるのでしょう。有権者は、もはや政策を基準に政党を選ぶことが出来なくなっている。すべての政策分野に対して総花的にマニフェストを打ち出す大政党を百貨店に喩えるなら、特定の政策分野に対して強い独自性を打ち出すロングテール政党は専門店に喩えられます。いま、消費者、じゃなかった、有権者のニーズがどちらにあるかということは、多少でもビジネスセンス(?)のある人なら誰にでも分かることでしょう。特に原発事故のあと、支持政党を持たない大多数の有権者が何を求めているかを考えれば、このタイミングで緑の党(のようなもの)を立ち上げるという中沢さんの着眼は、まさしく時宜を得たものだと言えます。ただ、それを学者の視点から理論付けただけでは何も起爆しない。具体的な戦略が必要なのです。もしも新しい緑の党を、従来の政党政治に対するアンチテーゼとして構想し、実現することが出来たなら、そこからほんとうの意味での「日本の大転換」が始まるのではないでしょうか。

|

« 「日本にも緑の党を」に賛成、だけど… | トップページ | こうなったら「首相輪番制」だ! »

コメント

>民主党と自民党の議員にとっての既得権ですから、国政の内部から選挙制度を見直そうという動きが活発化することもありません。

これにつきましては私の著書「参政員制度」でも指摘しました
http://www2.osk.3web.ne.jp/~mine2/
まさに参入障壁です。
霞ヶ関と永田町の常識で国を支配し 国民の常識が法となるのを阻止するものです。
今回の府、市長選挙でも みようにより共産党までも含めて霞ヶ関と永田町の常識で大阪を支配しようとしました
しかし市民は変革の橋下氏を支持しました
従来の霞ヶ関の操り人形の議会は国民が愛想を尽かしたとも見えます
維新の党は今後大きなウネリとなるかも知れません
ただ 維新の党は議会の抵抗も大きいので 住民意思が後押しできるような制度 すなわち住民投票・国民投票・参政員制度などが必要かと思っています

投稿: mine | 2011年11月30日 (水) 10時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/138790/51862000

この記事へのトラックバック一覧です: 「ロングテール緑の党」ってどうでしょう?:

« 「日本にも緑の党を」に賛成、だけど… | トップページ | こうなったら「首相輪番制」だ! »