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2011年6月26日 (日)

「原発解散」はとてもいいアイデアだ

 小田嶋隆さんのエッセイはいつもとても面白いのだけれど、特に先週の記事は冴えていました。タイトルは『卓袱台返して菅笠ひとり旅』。無能で日和見なリーダーだと思われて来た菅首相が、ここに来て突然「脱原発」の方向性を決めるキーパーソンになってしまった、そういう内容の記事です。これだけ国民のあいだに反原発の気運が高まっているのに、閣僚を中心とした有力政治家のあいだには脱原発ということに消極的な人が多い。これは「利権」だとか「癒着」だとかいう以前の問題で、原発を組み込んだエネルギー政策は国策の基本であり、それをひっくり返すのは一家団欒の卓袱台をひっくり返すのも同じこと、そんなことが出来るのはテーブルマナーを知らないならず者か、例外的なアウトサイダーだけだというのです。「例外的なアウトサイダー」! これはつまり郵政民営化の時の小泉さんと同じじゃないですか。確かに大きな政策の転換を成し遂げるためには、派閥の力学の中からのし上がって来た政治家では、しがらみが多過ぎて無理なのかも知れない。『菅直人という無手勝流の真空政治家が宰相の座にある時に、この度のような空前の災害が起こったのは、もしかすると天の配剤であるのかもしれない』、そこまで小田嶋さんは書きます。

 結論はこうです。小田嶋さんの文章を要約するほど無粋なことはないので、記事からそのまま引用してしまいます。コピペせずに、一文字ずつ味わいつつ打ち込んでみます。『菅直人という政治家が、自らの信念に従ってアウトサイダーの立場を選んだのか、単に力不足のゆえに結果として傍流を歩いてきただけなのか、そのあたりの事情はよくわからない。が、とにかく、この機会を逃したら、脱原発はできないという、そのことだけははっきりしている。菅さんという一見眠そうなアウトサイダーが原発に引導を渡すというストーリーは、こうして考えてみると、なんだか非常に魅力的に見える。「まれびと」(流れてきた客人、流浪の異郷人)が、村に厄災をもたらす怪物を退治するという、神話の話型にもかなっている。ニュークリアを分解して、ニューでクリアなエネルギーを作る。たしかに、お伽噺じみている。このお伽噺を実現するためには、石原さんの言う、「集団ヒステリー」(←地すべり的な世論の爆発)が必要なのかもしれない。面白そうだ。私は乗るつもりだ。』 同じエッセイストのはしくれとして(?)、自分にもこんな文章が書けたらいいのにと思います。小田嶋さんに言われると、ほんとに面白そうです。私もぜひこのお伽噺に乗ってみたい。

 「原発退治のまれびと」というフレーズに夢中になっているところに、同じテーマを扱ったもうひとつの魅力的な文章に出会いました。BLOGOSというページで見付けた、カトラーさんという方の『菅直人首相が目論む?「脱原発解散総選挙」というウルトラ延命策』という長いタイトルの記事です。(元のブログ記事はこちらです。) 現在、菅首相はエネルギー政策の転換を目指して、「再生可能エネルギー促進法」という法律の成立に並々ならぬ意欲を見せているそうです。すでに退陣表明をしている首相の延命策に過ぎないという見方が大勢ですが、カトラーさんはこの法律の成立なくして日本の環境ビジネスに未来は無いだろうと言います。そしてやはり注目すべきは、最後の結論部分の文章です。これも引用してしまいます。『「一点突破、全面展開」とは、菅直人がよく口にする、自身が得意とする行動パターンのことだ。これを今の状況にあてはめ、菅直人になったつもりで今後の行動を勝手に想像すれば、仮に「再生可能エネルギー促進法」が通らない場合は、解散権を行使し、衆議院解散、総選挙に打ってでるのではないか。その場合に実施される総選挙は、「脱原発解散総選挙」とされ、脱原発の是非を問う実質的な国民投票となるだろう。私は菅直人という政治家については、お遍路姿を公開するような所が昔から虫が好かず、顔も見たくないくらいだが、仮にそうした状況が到来したら、迷わず菅直人政権を支持する。』

 カトラーさんもこのバクチに乗るつもりなんですね(笑)。面白いのは、このおふたりの論者が、問題は菅直人という政治家の個人的資質でもなければ、彼に対する国民の好悪の感情でもないと断じているところです。いまや政局の主役は、菅さんでも小沢さんでもなく、原発そのものに移ったということなのでしょうか。そして誰が菅さんの後継になるにせよ、新首相はいまより原発政策に容認的な人になる筈ですから、我ら原発反対派としては、この法律の成立と引き換えにやすやすと菅直人という切り札を手放す訳にはいかない。小田嶋さんは、解散総選挙のことにまでは触れていませんが、話はそこまで行かなくては嘘だと思います。考えてみれば、日本の政治がここ数年来低迷を続けて来たのは、必ずしも首相になった人たちの資質の問題だけではなかったのかも知れません。あれほど膨らんだ政権交代への期待が、短いあいだにしぼみ切ってしまったのも、民主党が不甲斐なかったせいというより、二つの政党のあいだに明確な政策の違いが無かったせいではないか。いまさら安保反対でもないし憲法改正でもない、ここに来て日本から政策上の対立軸が消滅してしまったかのようです。しかし、原発は違う。これは目の前の問題として、いますぐにでも国民に意思決定を迫るものだからです。

 この先日本が脱原発を基本方針にするか、安全性を高めた次世代原発と共存して行くかということは、これからの政策論の最も根幹に据えてもいいような基本問題だと思います。これはまた別途考えてみるべきテーマですが、原発政策を軸にして『保守対革新』とか「経済優先か福祉優先か」とかいったような、鋭く対立していながら、その実何が本質的な対立点なのかよく分からなかった従来の議論が再構築される可能性がある。菅直人首相は、ぎりぎりまで粘って〈再生可能エネルギー特措法を国会で通したあとで〉、よもやのサプライズを演出して衆院解散を仕掛けてみてはどうだろう。もちろんご自身は脱原発の先頭に立って、国民の審判を仰ぐのです。その際、昔小泉さんがやったみたいに、原発推進派は公認しないとか、選挙区に刺客を送り込むなんて荒技は使えません。菅さん自身がまったく国民の信任を得ていないからです。そこでウルトラC級の選挙戦略を練る必要がある。私のアイデアはこうです。まず菅さんは小沢一郎氏を選挙対策委員長に据えます。そのためには選挙後に自身が代表選に立たないと約束することが条件になります(これで辞任の約束は果たされます)。政策よりも政局で生き残って来た現実派のおふたりのこと、国民の反原発の気運に乗じるという作戦で手を結ぶことにわだかまりやためらいは無い筈です。こうして、政局巧者の「菅ー小沢」という最強のタッグが成立する。(笑)

 選対となった小沢さんが最初にやることは、民主党議員だけでなく、すべての国会議員に対してアンケートを取ることです。アンケートの文面は、「今後10年以内に国内のすべての原発を廃止することに賛成ですか、反対ですか?」というそれだけです。回答は、賛成、反対、どちらでもない、の3通りです。未回答も含め、アンケートの結果は全議員の名前とともに公表されます。(未回答または「どちらでもない」と答えた人については、これまでの活動や発言の実績から、選対が賛成・反対のどちらかに色分けします。) 今回の選挙は脱原発の是非を問う選挙ですから、その情報が有権者にとってぜひとも必要なのです。小沢氏は、各選挙区の他党の候補者を見て、最も当選確率の高い有力候補を見定め、その相手候補と同レベルの支持率を持った民主党候補をその選挙区に送り込みます。その際、相手候補とは脱原発賛否において対立する考えを持った候補者を当てるというのが、今回の選挙戦略のポイントです。つまり、他党の脱原発派には民主党の原発維持派を、またその逆の場合には逆を当てるということです。当然、多くの民主党候補にとっては「国替え」を強要されますが、これは仕方ありません。その代わり、どの選挙区の有権者であっても、脱原発に賛成か反対かを意思表示する投票が出来ることになる。カトラーさんの言う「脱原発の是非を問う実質的な国民投票」を、現在の選挙制度の下で実現するにはこれしかないと思います。国民はこの選挙を支持する筈です。

 私はこの選挙によって、日本は脱原発の方向に大きく舵を切るだろうと予想している訳ではありません。このブログで私自身は原発反対派に転向したと宣言しましたが、日本が今後も経済大国としての地位を守って行くためには、原発はやはり必須だろうとも思っています。選挙の結果は、おそらく拮抗したものになるでしょう。そして選挙の結果がどう転ぶにせよ、そこから本当の意味での政界再編が始まる筈です。貧しくても安全な未来を選択するのか、多少のリスクを取っても再び豊かな未来をつかみ取るのか、政界再編のあとに成立する〈整理された二大政党制〉は、その選択肢を私たちに突きつけるものであるかも知れない。その時に、菅直人という政治家がまだ存在感を保っているかどうか、私には分かりません。が、彼の名が、この国の政治史のなかで特異な地位を占めて長く記憶されることになるのは間違いない。名宰相としてではなく、日本という国が大きく方向転換をする分岐点に立って、自らを〈転轍器〉として投げ出した、ひとりの殉教者として記憶されることになるのです。学生運動から始めて、「利権」からも「癒着」からも、それどころか国民の「人気」や「人望」からも遠いところにあった菅さんの長い政治人生は、そのために〈天〉が準備したものだったのかも知れません。(ほんとうかい? 笑)

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2011年6月19日 (日)

この夏は「節電てんでんこ」で

 この夏は本当に深刻な電力不足が起こるのでしょうか? これだけ電力危機が叫ばれて、節電に向けた社会的圧力が高まっていると、むしろ大幅な電力需要の減退が起こって、電力各社の業績に大きなダメージを与えるのではないか、その確率の方が高いような気がします。電力会社の業績が悪化するだけならいいのですが、もしかしたら需要が予測よりも大きく下振れすることで、電力供給が不安定になることだって考えられます。電力不足で大規模な停電が起こるというのは分かりやすい話ですが、逆に電力需要に対して供給の方が大きくなり過ぎても問題が起こる可能性がある。過電圧によって電力会社の設備にトラブルが起これば、やはり大規模な停電を引き起こす原因となり得るからです。電力会社は通常時でも、時々刻々の電力使用量の変化を予測しながら、発電量を細かくコントロールしています。

 今年はこの電力使用量の予測も難しいものになるのではないかと思います。東京電力は最近「でんき予報」なるものを始めました。東電はこれまでの経験から、天候や外気温の変化がどのように電力使用量に影響を与えるか、それを正確に予測するためのロジックを確立している筈です。ところが今年に限っては、その予測ロジックが有効に機能しない可能性があるのです。何故なら「でんき予報」そのものが電力消費に与える影響については、過去の経験知をまったく持っていないからです。例えば、発電量に対して電力使用量が95%を超えた時点で、テレビやラジオが一斉に節電を呼び掛けたらどうなるでしょう。それに呼応して多くの家庭が一斉にエアコンのスイッチを切ったとしたら、その急激な電力需要の縮小に果たして電力会社の設備は耐えられるだろうか。(なにしろエアコンは家庭の電力使用量の半分以上を占めているのです。) まあ、私のような素人の心配することでもありませんが、世間の非難を一身に浴びて思考停止に陥っているように見える東電が、自ら発信するでんき予報なるものの副作用を計算に入れているか、その点については注意を促しておきたい気がします。

 この夏の節電対策については、これまでもこのブログではいろいろなアイデアを書いて来ました。それでもまだこの話題にこだわるのは、政府の発表した15%の節電目標が、あまりにも国民のあいだで深刻に受け取られ過ぎていて、停電よりもむしろ節電による二次被害の方が懸念されるからです。とにかく15%だろうが10%だろうが、一律の節電目標というのが一番よくない。もしも政府が節電を呼び掛けるなら、各家庭でエアコンの温度を高めに設定するなんて危険なことは言い出すべきではないと思います。むしろこう言うべきです、在宅時には無理な節電をしないでください、もしも節電に協力していただけるなら、エアコンを止めて外出をしましょう、今年は街なかにたくさんの〈クールスポット〉を作りますから、特に電力使用のピーク時にはそこで過ごすようにしてください、と。そして公共施設や交通機関や店舗など、人が集まる場所では例年どおりの冷房温度にするよう行政指導をします。これはとても大事なことです。すでに私たちは一律15%の節電を刷り込まれていますから、たまたま入った百貨店で冷房が十分に効いていたりすると、そのことで文句を言う人が必ず出て来る。すると店側も悪評を怖れて冷房を弱めに設定することになります。こうして街はどこにもオアシスの無い砂漠のような場所になってしまう。熱中症で倒れる人も続出するでしょう。外出する気持ちも萎えてしまった人々は、結局家に引きこもり、家にいれば冷房を使わない訳にはいきませんから、電力消費はうなぎ登りという悪循環になる…

 これだけの想像でも、目標値を一律に設定した節電への取り組みが、いかに的外れなものであるか、理解していただけたのではないかと思います。私の考えでは、この夏の節電対策のポイントは、いかに人々を家から外に連れ出すか、それを政策的に誘導出来るかという点にあります。そのための一案として、夏限定で高速料金を無料化したり、ガソリン税を引き下げることで、自動車の利用率を高めるというアイデアについてはすでに書きました。企業の中には、勤務時間をシフトしたり残業を抑制することで節電に協力しようという動きもあるようですが、効果は疑問です。従業員は、会社を出れば自宅かお店か、いずれにしてもどこかで電力を使うことになるからです。むしろ事務所などのオフィスでは、休日を増やす代わりに、就業時間をいつもより長めに設定した方が節電のためにはいいかも知れません。お店も同じです、冷房温度を高めに設定した店内に客がまばらというのでは、電力効率がとても悪い。快適な温度の店内で、たくさんのお客さんになるべく長居をしていただく、それこそが節電への協力でしょう。この夏百貨店やショッピングセンターなどでは、休憩用にたくさんの椅子を置いたりするのもいいですね。政府はそのような快適で長居オーケーのお店や施設に、「クールオアシス」というネーミングを用意して、それを示すステッカーやノボリを配布してはどうでしょう。もちろんオアシスを求めて外出する人が増えれば、景気のためにもいいに決まっています。

 今回の震災で「津波てんでんこ」という言葉があることを知りました。津波から逃れるためには、ひとりひとりがお互いを構わずに高台を目指せという教えだそうです。これをもじって言えば、この夏私たちが心がけるべきは「節電てんでんこ」ということなのだと思います。節電を気にかけない訳ではないけれど、みんなが無理をして一律15%の目標に向かう必要は無い。お年寄りや体の弱い人がいる家庭では、電気を惜しむべきではないし、遊びざかりの子供のいる家庭では、家族揃って出掛けることがすなわち節電への協力になる。節電への協力も各人各様、てんでんこがいい。いずれにしてもこの夏に大規模停電は起こりません。最後は電力会社が計画停電で帳尻を合わせるからです。だとすれば私たち消費者があまり深刻に電力不足で悩む必要は無い訳です。すべての家庭がテレビやパソコンをずっとつけっぱなしにして、でんき予報を固唾を飲んで見守っているなんてのは、節電対策としても本末転倒でしょう。電力会社には、時々刻々の「現在の電力使用量」というものの発表は取りやめてもらいたい、個人的にはそう思います。あれは電気を使う国民への脅迫状であり、節電てんでんこへの挑戦状に他なりません。

 計画停電の話が出ましたから、これについても卑見を少しだけ。この夏も必要があれば計画停電を実施する旨、東電は発表しています。これは仕方が無いと思います。この3月に大混乱を起こした経験から、停電区域と無停電区域を分けることも仕方がないと思います。ただ、真夏の猛暑のさなかに停電時間2時間は長過ぎます。せいぜい1時間、可能であれば30分以内に抑えるべきです。猛暑のなかで冷房が止まっても、生命を危険にさらさないためには、たぶんそのくらいの時間でなければならない、この点は3月とは条件が違うことを電力会社は再考すべきです。そしてもうひとつ、計画停電の地域をあらかじめ告知することも止めてはどうでしょう。停電は予告なしにいきなりやって来る、これを私は「ロシアンルーレット方式」と呼んでいるのですが、メリットは次の点です。もしもあらかじめ停電区域がアナウンスされていると、その他の地域では節電へのインセンティブが無くなってしまうのに対し、ロシアンルーレット方式なら(無停電区域以外の)すべての電力利用者が常に節電を心がける理由を持つことになるのです。いや、工場や病院など、たとえ30分でも〈抜き打ち〉の停電は困るという利用者もいる筈ですから、該当地域に対しては停電の1時間前に告知するルールでも構いません。(告知はテレビやインターネットではなく、地域の緊急放送網を使って行ないます。ラウドスピーカーを使ってのアナウンスです。) もしも〈ロシアンルーレット〉というネーミングがまずいなら、こちらは「停電てんでんこ」と呼んでもいいです。

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2011年6月12日 (日)

こうなったら「首相輪番制」だ!

 今週はあまり時間が無いので、小ネタをひとつ。内閣不信任案は造反派の腰くだけで否決され、次の興味は菅総理がいつ退陣するかという点に移って来ました。次期総裁候補として、前原さんや枝野さんや野田さんの名前が取りざたされています。まあ、誰がなっても菅さんよりはマシではないかと思いますが(これでも以前は菅さんに期待したこともあったんですよ)、この際民主党は、首相の選び方について思い切った改革をしてみてはどうでしょう。首相公選、つまり国民が直接次の首相を選べる仕組みを取り入れるのです。

 ここ何年ものあいだ、日本では総理大臣が1年くらいで目まぐるしく変わる状況が続いています。それが外交面での日本の地位低下を招いている、そんな意見もよく聞きます。でも、これに関しては違う見方だって出来ると思うんです。菅さんだって鳩山さんだって、就任時にはとても大きな期待を集めていた筈です(それは当初の支持率を見れば分かります)。しかし、人気は長続きしませんでした。就任から3か月くらい経つと、国民は「この人じゃダメだ」ということを敏感に察知する。そんな国民感情からすれば、1年間なんてとてもじゃないけど長過ぎるのです。企業が人を採用する場合だって、試用期間は3か月です。そこで私の提案、総理大臣にも試用期間を設けて、3か月おきに改選するというのはどうでしょう?

 本当の意味での首相公選を実現するためには、法律を改正することが必要ですから、これはあくまで民主党内の代表選についての改革案になります。これならいまの法律と制度のもとで実行出来るし、地に堕ちた民主党の人気をV字回復させる切り札になるかも知れない。やり方は簡単です。前回の代表選で菅さんと小沢さんが激しいバトルを繰り広げた、あの時のことを思い出してください。当選した方が総理大臣になると分かっていたあの選挙に、投票権を持っていたのは民主党議員と民主党の党員・サポーターという人たちでした。菅さん辞任後の次の代表選、つまり次期首相選びでは、党員・サポーターだけが投票を行なうものとします。議員をはずす理由は簡単です、彼らはこの選挙の直接の利害関係者なので、国民とは異なる視点で投票する可能性が高いからです。(もちろん彼らも党員としての一票は持っています。) 現在、民主党の党員・サポーターになるために、どのような審査があるのか知りませんが、今後は年会費さえ払えば誰でも簡単にサポーターになれるようにします。つまり、2千円くらいのお金を出せば、誰でも「総理大臣を選ぶための選挙権」が買えるのです。(但し、これは日本国籍を持った二十歳以上の成人に限定します。前回の代表選では、外国人サポーターが日本の総理大臣を選ぶ選挙に投票するという、とんでもない事態が発生しました。)

 党員・サポーターの投票をもって首相公選と呼ぶことは出来ませんが、かなり国民の声が反映された首相選びが実現することは間違いありません。民主党にとってはサポーターを一気に増やすチャンスでもあります。投票はハガキだけでなく、インターネットや携帯メールでも出来るようにしましょう。そしてここが今回の提案のキモになりますが、いったん首相が選ばれても、3か月ごとに新たに代表選を行なって、国民の支持を受けていない首相はどんどん交代させる仕組みを定着させるのです。これはいい意味で日本の政治に緊張感を与えるだろうと思います。もしもそんなに簡単に首相を交代させることに抵抗感があるようなら、現職に選挙でのアドバンテージを与えてもいい。例えば対立候補は現職に対して得票率で3%以上上回らなければ交代は起こらないといったルールを追加するのです。そしてもうひとつ重要なルールとして、この制度の導入と同時に民主党は首相の解散権を封印しなければなりません。(やぶれかぶれ解散が頻繁に起こるようでは、ほんとうにこの国は滅んでしまうから。) その代わり、代表選でサポーターは、候補者を選ばずに「解散総選挙」に一票を投じることが出来るようにします。そして有効票の過半数を解散総選挙票が占めた場合は、その時点で現首相はただちに解散総選挙を行なわなければならないというルールにするのです。どうでしょう、これでアンチ民主党の人たちさえもサポーターとして取り込むことが出来ます。(笑)

 いや、私は伊達や酔狂でこんなことを書いている訳ではありません。そのことは、もしもこれをやられたら自民党にとってどれほどの脅威になるか、それを想像してもらえば分かると思います。とにかく私たち国民は、この国難とも言える状況のなかで、自分たちが直接首相を選べないことにものすごいフラストレーションを感じているのです。もしも自民党が先手を打って、次の総選挙で与党に返り咲いたあかつきには、この「首相準公選制度」を採用すると公約すれば、支持率は大幅に上がると思います。(少なくとも私は支持します。ちなみに個人的には、次期首相は民主党なら原口さんか金子さんに、自民党なら河野太郎さんにやらせてみたい。二世議員廃止法案はとりあえず封印します。笑) 逆に民主党は、菅さんの辞任を待たずに、いますぐにでもこれを始めるのがいいですね。菅氏はのらりくらりと辞任を先延ばししそうな雰囲気ですから、サポーターが選挙を通じて引導を渡してやった方がいい。いま民主党内では、野田氏を擁立しようという動きが活発なようですが、そこには国民無視の派閥の論理しかありません。野田さんなら小沢派も懐柔出来るし、大連立にも持ち込みやすいというのです。こんなことばかりやっているから、国民にとことん愛想をつかされるのに、どうしてそれが分からないのだろう?

 日本の政治家が小粒になったという声を耳にします。小選挙区制になって以来、その傾向に拍車がかかったという意見も目にします。が、私はこれは時代の流れのなかで、必然的に起こって来たことだとも思うのです。何故って、私たちはもう〈大物政治家〉なんてものをこれっぽっちも求めてはいないから。過去の大政治家、例えば吉田茂だとか田中角栄なんて人が、いまの有権者の視線にさらされたら、そもそも政治家にさえなれなかったのではないか、そんな気がします。この困難な時代に求められるているのは、カリスマ性を備えた親分肌の政治家ではありません、山積する問題にその都度的確な判断が下せる有能な経営者のような政治家です。親分肌の人間はいつの時代でも自力でのし上がって来ますが、優秀な経営者は発掘して育てなければならないものです。この10数年間に私たちが見て来たことは、派閥のなかでは有力と思われていた政治家が、実際に首相に就けてみるとまったくの期待はずれだったり、一匹狼の変人と思われていた人が、意外と強いリーダーシップを発揮して国民の人気を集めたりといったことでした。要するに、やらせてみなけりゃ分からないのです。これは国民にとって分からないだけではありません、本人たちにとっても分からないのだと思います。(菅さんも鳩山さんも麻生さんも安倍さんも、まさか自分がこれほど首相として不適格だとは夢にも思っていなかった筈です。) もしも「首相輪番制」でいろいろな人を試すことが出来るなら、小粒になった民主党や自民党のなかからだって、第二、第三の小泉純一郎が出て来るかも知れない。私はサポーターになって、その人の登場を待ちたいと思います。

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2011年6月 5日 (日)

「ロングテール緑の党」ってどうでしょう?

 中沢新一さんの呼びかける「日本版緑の党」が、もしも実際の政治政党として実現するなら、ぜひ応援したいと思います。が、そのための道は険しいものになるでしょう。現在の日本の国政選挙は、既存の大政党だけを優遇して、小政党や新興政党を徹底的に排除するように制度化されているからです。小選挙区制の下では大政党以外が議席を獲得することはほとんど不可能なので、小政党は比例区だけに絞って候補者を立てる訳ですが、そこには供託金の壁が立ちはだかります。日本は世界一、選挙に立候補するための供託金が高い国です。衆院選でも参院選でも、比例区にひとりの候補を立てるためには600万円を供託しなければならないのです。しかも落選すれば全額没収、これも世界に例を見ない厳しい制度です。さらにひどいのは、大政党の指定席である小選挙区では、供託金は半分の300万円と安くなっている点です。民主主義国家などと言いながら、その基盤である選挙制度が大政党に有利なように露骨に歪められているのです。これは民主党と自民党の議員にとっての既得権ですから、国政の内部から選挙制度を見直そうという動きが活発化することもありません。

 私は国政選挙は選挙区をやめてしまって、全国単一の比例区にしてしまえばいいと思っています。そうすれば一票の格差という問題も解消するし、得票数の割合がそのまま政党の議席数の割合になりますから、国民の意思が歪められることなくストレートに選挙結果に反映されるようになる。しかし、現実問題として選挙制度を変えることは、全国の原発を止める以上に難しいことですから、とりあえず現在の制度を前提に新しい政党を立ち上げるしか選択肢はありません。ここで思い出すのは、以前このブログで書いた「ロングテール新党構想」のことです。今日の政治は、ひと言で言えばポピュリズムの政治です。すでに知名度を得た政党、すでに知名度を得た候補者が、最大公約数の票を集めて議席を獲得する。それが民主主義の政治にかなったものであるかどうか私には分かりませんが、選挙における「ロングテール戦略」というのは、その対極の考え方に基づくものです。ロングテールというのは、(ご存じの方も多いと思いますが)何年か前にマーケティング理論としてもてはやされた考え方で、現代のような価値観が多様化した時代には、大ヒット商品をひとつ生み出すよりも、多様な商品を品揃えよく並べた方が売上に寄与する、そういう考え方のことです。この理論を選挙戦略に応用するのです。すなわちひと握りのスター性のある候補者を立てて票をかき集めるのではなく、知名度は低くてもその分野で実績のある人たちをたくさん候補者として集めて、知名度よりも専門性で勝負するのです。

 以前の記事で書いたアイデアを少し改良しながら、「ロングテール緑の党」の構想について簡単に説明します。新党を立ち上げる中沢教授は、党の設立主旨を広くアピールすると同時に、党員とサポーターの募集を始めます。いや、この党はフラットな組織を目指しますから、党員とサポーターの区別も要りませんね、サポーターだけで十分です。重要なことは、党が掲げる政策綱領やマニフェストだけでなく、選挙戦略についても最初に明確に示しておくということです。例えば、サポーターの年会費を2000円とし、そのうち半分を供託準備金としてプールしておく。もしも10万人のサポーターが集められるなら、それだけで年間の準備金は1億円になります。つまり比例区に16人くらいの候補者を立てられる計算です。立候補者はサポーターの中から自薦、他薦で募ります。解散総選挙はいつ起こるか予測出来ませんから、ふだんから次の選挙を目指して候補者の名簿順位を決めておきます。名簿順位は、全サポーターのインターネット投票によって決められます。選挙で何人の候補者を擁立するかは、その時の準備金の残高によります。16人分の供託金しかない時に、30人が立候補すれば、14人は足切りせざるを得ませんが、それはサポーターが投票した結果なので仕方ありません。拘束名簿方式を採る衆院選では、党内の投票結果がそのまま比例区の名簿順位になります。非拘束名簿方式の参院選では、党内投票は候補者の足切りに使われるだけで、当選順位は実際の選挙によって決まることになる訳です。

 党内のインターネット選挙のやり方で、ひとつこんな工夫を導入したいと思います。投票するサポーターは、各人2票ずつの投票権を持つものとします。立候補者のなかから二人を選んで投票出来るのです(一人に対して2票という投票は出来ません)。そしてこれとは別に、各サポーターはマイナス1票の投票権を持ちます。この人にだけは党の候補者として立って欲しくないという人がいたら、この1票を行使してもらうのです。何故そんな仕組みが必要かというと、知名度のある立候補者がこの党を踏み台にして政界への足掛かりにする、そんな事態を阻止するためです。ロングテールの理念を守るため、あるいは衆愚制に陥らないためと言ってもいい。例えば今回の緑の党で言えば、反原発や自然エネルギー推進といった分野で実績ある候補者のなかに、浪人中の東国原氏あたりが紛れ込んだらどうなるでしょう? 新党がそうそうたくさんの議席を獲得できる筈はありませんから、緑の党からの当選は東国原氏たったひとりなんてバカげたことにもなり兼ねない。しかし、サポーターが1票ずつの拒否権を持っていれば、こうした〈異物〉が紛れ込んでしまう危険性を回避出来るのではないかと思うのです。ただ、この点はもっと議論が必要ですね。各人に与えられたマイナス1票だけでは、東国原さんのような人が何人も紛れ込んだ時に、排除し切れないかも知れない(笑)。むしろこれまでの活動や発表した論文などの実績から、不適切な人をふるい落とす仕組みを取り入れた方がいいかも知れません。大事なのは、それが恣意的な振り分けになってしまわないような基準を工夫することです。

 ロングテール政党は、決して政権与党を目指すものではありません。例えば「緑の党」なら、脱原発・自然エネルギー推進という一点に争点を絞って政治活動を行ないます。この党が、憲法改正に賛成か反対か、死刑制度に賛成か反対か、なんてことまで争点にしたら、誰も気軽にサポーターになどなれなくなるし、政党としても後々の分裂の要因を抱え込むだけのことでしょう。(この点で既存のグリーン勢力である「みどりの未来」は、分をわきまえずに欲張り過ぎています。) もちろん国会議員になれば、どの党の所属であろうとすべての議案に投票権を持つ訳ですから、緑の党から送り出した議員が護憲派なのか改憲派なのかは気になるところかも知れません。ただ、それは党内選挙の際にプロフィールとして明らかにしておけばいいだけのことです。国会におけるこの人の役割は、原発の安全性に関して質問主意書を出したり、新エネルギー政策に親和的な他党の議員と組んで新しい法案を提出したりすることにあるので、その他の領域の問題についてはむしろ中庸な立場を守ることが求められます。私はこのような専門性を持ったロングテール政党がたくさん現れて来て、そこ出身の議員が国会のなかにたくさん生まれればいいと思っています。そして私たち有権者は、自分にとって関心のある分野でいくつかの党のサポーターとなり、そこから意中の候補者を国会に送り出すことで国政に参加するのです。

 今週、国会では野党が提出した内閣不信任案への投票がありました。茶番劇と呼ぶことさえ虚しいような国会風景に、国民は怒りを通り越して呆れ果てています。これは政権末期なのではない、日本の政党政治そのものが末期症状を呈しているのです。政権交代によって二大政党体制が実現したと言っても、民主党と自民党のあいだにどのような本質的な政策の違いがあるのでしょう。有権者は、もはや政策を基準に政党を選ぶことが出来なくなっている。すべての政策分野に対して総花的にマニフェストを打ち出す大政党を百貨店に喩えるなら、特定の政策分野に対して強い独自性を打ち出すロングテール政党は専門店に喩えられます。いま、消費者、じゃなかった、有権者のニーズがどちらにあるかということは、多少でもビジネスセンス(?)のある人なら誰にでも分かることでしょう。特に原発事故のあと、支持政党を持たない大多数の有権者が何を求めているかを考えれば、このタイミングで緑の党(のようなもの)を立ち上げるという中沢さんの着眼は、まさしく時宜を得たものだと言えます。ただ、それを学者の視点から理論付けただけでは何も起爆しない。具体的な戦略が必要なのです。もしも新しい緑の党を、従来の政党政治に対するアンチテーゼとして構想し、実現することが出来たなら、そこからほんとうの意味での「日本の大転換」が始まるのではないでしょうか。

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