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2011年5月 8日 (日)

原発問題に関する私的覚え書き

  1. 原発が危険だというくらいのことは誰でも知っていた。しかし、原発がこんなにも「汚い」ものだったことに、あらためて私たちは気付かされた。それが今回の事故の一番の教訓である。しかもこれは広島・長崎を経験した日本人だけの感覚ではなくて、世界中の人々が共通に持っている感覚であったことも私たちは否応なく知らされた。いまや日本は世界中から憐憫とそして忌避の目で見られている。
     
  2. 風評被害を広めるなと言う人は、多くの国々が私たちが想像した以上に「ニュークリア・コンシャス」であったという事実に目をふさいでいる。低濃度の放射性物質が健康に与える影響など大したことないと言う人は、それを誰に向かって言っているのか自省する必要がある。避難区域の住民に向かってそれを言うのなら、あなたは人でなしだ。日本製品の輸出先の国々に向かってそれを言うのなら、あなたは商売人として失格である。
     
  3. 感情的な議論が蔓延しているなかで、アタマのいい人たちは「正しい知識に従って放射能を怖がろう」といったことを言う。得体の知れないものを怖れるのは未開人の心性だというのだ。よろしい、では私たちは楽観論にも悲観論にも陥ることなく、放射能の危険性について正しい知識を持つことから始めようじゃないか。しかし、そのためにはひとつ政府にお願いしたいことがある、それは汚染地域(もちろん関東も含む)の住民に対して、最低でも世帯に1台、携帯用の線量計を支給して欲しいということだ。
     
  4. 例えば国内で販売されるすべての携帯電話に、高性能の線量計を組み込むというアイデアはどうだろう。「ガイガーカウンター付きケータイ」――これは究極のガラパゴス戦略と言ってもいい。放射線のいいところは、微少の線量でも比較的簡単な装置で正確に測定出来るという点だ。新たな技術を開発する必要も無いし、コストも大してかからないのではないかと思う。その上で、政府は国民が放射線と折り合って暮らして行けるよう啓蒙して行くのである。
     
  5. 外出する時、飲料水を飲む時、食品を買う時、または雨が降った時など、必ず線量計をかざして放射線量を計ることを日常の習慣として定着させるのである。おそらく今のような状況にあっても、スーパーに行って野菜や魚にガイガーカウンターを当てる行為は、多くの人にとってマナー違反としてはばかれるのではないかと思う。が、みんなでやれば恐くない。それが政府の推奨することであるならなおさらだ。これが定着すれば、買い物の際に毎回商品をチェックしなくても、流通段階で一定基準以上の汚染食品は自然に排除されるだろうし、基準以下の放射線量なら不当に排除されることもなくなるだろう。
     
  6. 私はジョークかアイロニーのつもりでこんなことを書いている訳ではない。本気である。すでにフクシマは取り返しのつかない現実の事故として起こってしまったのだ。汚染地域の浄化にはこれから長い年月を要するだろう。こんな場合に、風評被害を政府が抑えようとしても逆効果になるだけだ。むしろここは政府が先手を打って、「放射能と共存しよう」というキャンペーンを張ってしまった方がいい。最近は低濃度の放射線はむしろ健康にいいという説も出て来ているらしい。ある条件の下ではそれも真実だろうと私は思う。それも含めての「ニュークリア・コンシャスネス」ということである。
     
  7. もちろんこのガラパゴス戦略は諸外国にはまったく理解されないだろう。昔、メガネをかけカメラを首にさげた日本人が戯画化され、軽侮の対象となったように、いつも携帯ガイガーカウンターをかざしている日本人は世界中の嘲笑の的になるかも知れない。しかし、いつかは日本人のこの習慣が、先見の明を持ったものとして世界中から認められる日が来るだろうと私は思う。しかもそれはそう遠い未来のことではない。現在の世界の状況を考えれば、フクシマやチェルノブイリどころではない破局的な原子力事故が起こるのは、ほとんど必然とさえ思えるからだ。それがどこの国で起こるかは問題ではない。それが起こった時、世界中がパニックに陥るだろうが、すぐにみんな気付くだろう、そうだ、日本人のようにやればいいのだと。
     
  8. 今週、菅総理が浜岡原発の停止要請を出した。中部電力もこれを受け入れる決定をしたそうだ。良かった。震災以降、初めて菅さんが評価出来る政策を打ち出したと思う。だが、このまま日本が脱原発の方向に転換したとしても、時すでに遅しである。すでに日本は処理し切れないほどの核廃棄物を抱えてしまっているし、日本が原発を止めても途上国では今後も原子力へのニーズは衰えないだろうから。今回の事故の教訓を活かして、日本が世界に先んじるためには、原発を廃止するだけでは十分ではない、すでにある核物質とどう共存するか、そのお手本を身をもって示すことの方が重要である。これはヒロシマ・ナガサキ・フクシマを経験した国民の世界史的な使命と言ってもいい。

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