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2011年5月29日 (日)

「日本にも緑の党を」に賛成、だけど…

 福島原発の事故が、各国の原子力政策を大きく動かしています。ほとんど意思決定能力を喪失してしまったように見える日本政府よりも、外国の方が動きが速いのは皮肉なことですが、ここに来て原子力に関してはかなり明確な勢力図が描かれつつあるようです。はっきりと原子力政策を縮小する方向に舵を切ったのがドイツとスイス、今後も原子力を推進する考えを表明しているのがフランス、アメリカ、中国といった国々です。まあ、ドイツはフランスから大量の電力を買っている訳ですから、エネルギー政策転換のお手本とはとても言えないと思いますが、国民の意思がストレートに政策に反映される点は同じ民主主義国家として羨ましい限りです。

 ドイツで反原発の民意を代表しているのが〈緑の党〉です。ドイツ緑の党は、1998年から2005年まで連立政権の一翼として政権を担った実績のある大政党で、政権を離脱してからはしばらく低迷が続いていたのが、フクシマの事故で再び支持率を回復し、いまやメルケル首相率いるキリスト教民主同盟に次ぐ第2党の位置にまで躍進しているのだそうです。日本でもこれからの原発政策をどうするかということは、最も重要かつ緊急の問題である訳ですが、民主党のなかにも自民党のなかにも原発反対派と推進派の議員が混在しているような状況のなかでは、たとえいま解散総選挙になったとしても、国民はどこに投票していいのか分からない。え? ああ、そうでした、原発反対ということなら社民党がありましたね。私も比例区ではいつも(消去法の結果)社民党に一票を投じている選挙民ですが、この党が民主党や自民党と並ぶ第三極に躍進するなんてことは、百年待ってもあり得ないというのが現実です。

 人類学者の中沢新一さんが、内田樹さん、平川克美さんとの鼎談のなかで「緑の党のようなもの」を作ることを宣言したのだそうです。「のようなもの」という言い回しにどのような意図がこめられているのか分かりませんが、調べてみると日本にはすでに緑の党(のようなもの)が存在しているのですね。一番大きな勢力は「みどりの未来」という政党であるようです(今回初めて名前を聞きました)。ウィキペディアの説明によれば、現在の「みどりの未来」にたどり着くまでに、実にたくさんの名前の「緑の党のようなもの」が離合集散を繰り返して来たようです。「日本みどりの党」、「みどりといのちのネットワーク」、「ちきゅうクラブ」、「原発いらない人びと」、「希望」、「みどりの会議」、「みどりのテーブル」、「虹と緑」etc。この系譜のなかからこれまでに国政に議員を送り込んだ実績としては、俳優の中村敦夫さんと、いまは〈みんなの党〉に鞍替えした川田龍平さんの二人だけであるようです。本家ドイツの緑の党と比べて、その影響力の微々たること、まさに「緑の党のようなもの」と呼称するにふさわしいのかも知れません。

 現在の「みどりの未来」のホームページを見ると、この政党が掲げる基本政策集がエクセルとPDFでダウンロード出来るようになっています。一読して、何故この国で緑の党がメジャー政党になり得ないのか、その理由が分かったような気がしました。脱原発・自然エネルギー推進ということ以外にも、実に魅力的な政策メニューのオンパレードです。環境保護政党として、遺伝子組替作物の規制やクルマ社会からの脱却といったことを謳っているのは当然として、その他にも月10万円のベーシックインカムの支給だとか、地域通貨への支援だとか、死刑廃止だとか、選挙における供託金の廃止だとか、私がこのブログで主張して来たようなことはほとんどすべて網羅されている(どうせなら裁判員制度廃止も盛り込んで欲しかったけど。笑)。にもかかわらず、これを読みながら、私は共感よりも腹立たしさを感じました。こうした「理想」について語るのに、私のような無名のブロガーですらどれほど慎重にコトバを選び、自分のなかで議論を戦わせて来たか、その苦渋の跡を踏みにじられたように感じるからです。月10万円のBIなんて軽々しく言うけれど、その財源はどうするのでしょう? 原子力を自然エネルギーに転換するためのコストは誰が負担するのでしょう? これでは社民党のマニフェストと選ぶところがない。一から十まで机上の空論に過ぎないと感じます。

 雑誌『すばる』の6月号に、中沢新一さんの「日本の大転換」という文章が載っています。先の「緑の党結党宣言」を受けて基本的な考え方を述べたものだと思いますが、本屋で立ち読みをしてがっかりしました。そこには人類史におけるエネルギー転換の意味に関する〈大きな思想〉が語られているだけだったからです。もしも政治的勢力としての緑の党を目指すなら、こういう抽象的な〈上から目線〉の議論を出発点にしてはダメだと思います。脱原発を実現するために必要なのは、私たちの思想的な枠組みを転換することではない、再生可能エネルギーの産出コストを原子力よりも安くするための方法について戦略を練ることです。そのために税制を見直し、技術開発の研究費に対して思い切った予算化を行なうことです。(孫正義さんのメガソーラー構想も、〈いまある技術〉を前提にしてハコモノを先に建設するような工程表では失敗は目に見えています。いま投資するなら、基礎技術の研究開発に対してこそすべきでしょう。) これを日本の国策として、世界中のどの国よりも先行して取り組む方針を打ち出す。もしもそうした戦略的なエネルギー政策を掲げる緑の党が現れるなら、私はまっさきに党員になってもいいと思っています。

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コメント

まさに先々週に枝野大臣が「これまで もんじゅ に掛けたⅠ兆数千億円を 自然エネルギーなどの開発研究に投じておれば日本は今頃は・・・・」と議会で嘆息されておられました。
もんじゅ 関連でも多くの特殊法人などが生まれているでしょう。そうしたところに天下った人々、御用学者族議員達は多くの情報を加工して必要性を唱えます。
しかしフランスが匙を投げた技術です。反対論はⅠ6年以上も前からあります。
原発と関連技術は人知で制御できないことを理解し  まさに廃止を決断する時期です
役所そして献金組織に遠慮せざるを得ない議員という職種の人々では簡単にはいかないことでしょう
国民投票や参政員制度で「国民の常識も参加して決める」のが民主主義ではないでしょうか

投稿: ミネ | 2011年11月28日 (月) 11時09分

的を射た論考にまったく同感です。敬意を表します。

投稿: kokkai-kanteidan | 2011年11月29日 (火) 01時09分

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