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2010年9月 5日 (日)

これは政権交代の第二章ではないか

 世間では民主党の代表選の話題で持ち切りです。菅氏と小沢氏の一騎討ちという構図は、マスコミにとってもおいしいネタですから、選挙が行なわれる14日まで連日トップニュースで報じられることになるのでしょう。これを単なる民主党のお家騒動と捉えれば、いい加減うんざりするような話でしかありませんが、実はこれは昨年の政権交代劇の第二章の幕開けであって、これを経なければ本当の意味での政権交代は完遂しないのだと考えれば、また別の意味で興味が湧いて来るようにも思えます。民主党が政権を取ったとき、これは今後長く続く政界再編劇の始まりに過ぎないのではないか、そういう予感を私たちは持ちました。その予感の中心にはつまり小沢一郎という人がいた訳です。

 今回の代表選を私がどう捉えているかというと簡単です。日本の政権中枢のなかに今も残っている〈自民党的なるもの〉との最終決戦という位置付けです。小沢一郎というのはそれを象徴するひとつの記号であって、いわば最後に倒すべき〈ボスキャラ〉の役割を担っているということですね。実を言えば私は、菅さんという政治家にはあまり期待していません。いや、期待はしていたのですが、首相に就いてからの3か月の言動を見ていて、やはりこの人は一国のリーダーとしての資質を持った人ではないと思わざるを得なくなった(多くの国民がそう感じたと思います)。菅首相だけではありません、年金改革という大命題を与えられている長妻厚労相にしても、「コンクリートから人へ」という政策転換の最前線にいる前原国交相にしても、普天間問題や拉致問題でまったく存在感を示せなかった岡田外務相にしても、私たち国民の期待に応えるパフォーマンスを発揮しているとはとても言えない。しかし、一部の利害関係者だけが密室で談合して国の重要政策を決めていた前政権の頃から比べれば、格段の進歩があったということも認めなければならないと思うのです。もしも今回の代表選で小沢首相が誕生したとすれば、おそらく極端な派閥人事で閣僚を入れ換えるだろうし、そうなれば国民は期待を裏切られる以前に、政治に対する期待を持つことすら出来なくなってしまう。

 これに対して、一部では〈小沢総理待望論〉というのも勢力を拡大しているようです。とにかくあまりに言葉の軽い、安定感の無い総理大臣ばかりが続きましたからね。政治が空転している今こそ、一度はこの国の舵取りを小沢氏に託してみてもいいのではないか、そういう気分が世間の一部に醸成されているのです。木曜朝刊の読者投稿欄には、「清潔な無能より灰色の有能を」という見出しの文章が載っていました。国民のあいだに根強く残る小沢待望論を、これほど的確に言い表したキャッチフレーズも無いと思いました。菅首相は短期間のあいだに現実路線に大きく方向転換をして、これは官僚に籠絡されたのだろうという観測もあります。その点、小沢さんは発言がぶれないし、今でもマニフェストの原点に立ち返れと言っている。彼なら普天間の県外移設という難題をもう一度政策の俎上に乗せ、アメリカともタフな交渉をしてくれるかも知れない(あり得ないけど)。政治というのはつくづく幻想の上に成り立っているものだと思います。小沢と言えばいつもその上に〈剛腕〉という枕詞が付きますが、ひとつの形容詞によってこれほど買い被られた政治家もそうはいないのではないか。

 しかし、大多数の国民はもう少し冷静です。世論調査では、次期首相に相応しいのはどちらかという質問に、菅氏と答えた人が69%もいたのに対し、小沢氏と答えた人は15%ほどだったからです。もしも国民が直接次の総理大臣を選べればいいのですが、残念なことに私たちにはその一票が与えられていません。投票権を持っているのは412人の民主党所属国会議員、2382人の地方議員、そして34万人余りの党員・サポーターといった人たちです。(党員とサポーターとの違いは年会費の違いだそうです。党員が6000円なのに対してサポーターは2000円。ずいぶん安いんですね。今からでもサポーターに登録すれば投票権を貰えるのかな?) 票の配分は国会議員ひとりが2ポイントずつを持ちトータル824ポイント、地方議員はトータル100ポイント、党員・サポーター分は300ポイントになっているそうです。もしも〈首相公選〉という制度があれば、世論調査の結果からも菅首相の続投は確実な筈です。しかし、民主党議員の派閥構成を見れば小沢氏の方が有利に見えるし、党員・サポーターも自ら所属する組織の利益を守るという動機で投票するのでしょうから、世論の動向とは正反対の選挙結果になることも十分予想出来ます。国民にとってやるせないのは、議員投票が無記名の秘密投票であることです。これだけ明確な世論の意思表示があるのに、あえてそれに逆らった投票をしても(明示的には)それが知られることがない。これは実現する可能性の強い小沢政権のありようを今から暗示するような事実です。せっかくここまで政治がオープンになって来たのに、また密室政治、談合政治に逆戻りするということです。

 いずれにせよ今月14日には結果が出ます。問題はその後のことです。どちらが勝ったにしても、選挙後は協力して挙党一致でやって行くなんてことを言っていますが、そんなことが可能なのでしょうか? 選挙で白黒を決したことで、両派閥が再び結束するなるなんてことがあり得るだろうか? あり得ないし、あってはならないことだと思います。そんな欺瞞に満ちた挙党体制を私たちは見たい訳ではない。端的に言って負けた方は党を割るべきだし、そこから政界再編の第二幕が始まるというのがあるべき方向でしょう。この国ではまだしばらく政治的な混乱が続くことになりますが、半世紀以上も続いた政治構造を転換するのですから、ことが一朝一夕には成らないのは当たり前の話です。

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コメント

テレビ、新聞の調査結果と、ネットの調査結果では、なぜ正反対になっているのか。疑問に思われませんか?

投稿: いちファン | 2010年9月 8日 (水) 21時08分

新聞社が実施する世論調査が、どの新聞でもほぼ同じ結果になるのは、無作為抽出という調査方法を採っているからです。もしも自社の新聞の講読者を対象にアンケート調査をすれば、朝日新聞と産経新聞とでは結果が全然違って来る筈です。

インターネットでの世論調査で回答しているのは、無作為抽出で選ばれた人たちではありません。そのページに関心を持っている読者のなかで、さらに自分の意見を表明したいという人たちの考えが集計されているだけで、これは世論調査などと呼ぶべきものではないでしょう。菅さんや小沢さんの演説会を聴きに来た人にアンケートを取っても、それが世論を代表する意見だとは言えないのと同じことです。

もっとも、この考え方からすれば、国政選挙の結果だって世論を忠実に反映しているとは言えません。選挙に行って投票をする人たちという母集団には、すでにバイアスがかかっているからです。ただ、選挙にも行かず、民主党の代表選にも関心を持っていないような人の意見を、熱心なサポーターとして活動する人の意見と同列に扱うべきかどうか、これはまた別の問題ではあります。

投稿: Like_an_Arrow | 2010年9月 9日 (木) 23時06分

拙い質問に、丁寧にお返事くださりありがとうございます。
ご説明いただきよくわかりました。
ひとつだけ、思うことがあるのですが、新聞社が実施する世論調査は、個人宅への電話での調査方法だと思いますが、無作為抽出だといっても、昼間、家の電話に出ることができる人に限られていると言うことを考えると、そのデータも偏っていることになるのではないでしょうか。

投稿: いちファン | 2010年9月11日 (土) 16時08分

その通りだと思います。最近の若い人のなかには、携帯電話以外に自宅の固定電話は持っていない人も多いでしょうし、キャッチセールスやオレオレ詐欺のようなものへの警戒から回答を拒否する人だって結構いると思います。本当に偏りの無いデータというのはあり得ないでしょう。

それでも新聞社の世論調査というのは、かなり手間ひまをかけて厳密に行なわれているみたいですよ。インターネットで検索したら、日経新聞社のこんなページが見付かりました。

http://www.nikkei-r.co.jp/phone/results/faq.html

これによると、たまたま昼間電話に出た人に聞き取り調査をするのではないようです。家族人数を聞いて、その中の一人をランダムに抜き出して、もしその人が不在ならかけ直すんだそうです。へえー。我が家はそんな電話を受けたことが無いので知りませんでしたが、調査員の方も大変ですね。

でも、最近は世論調査による内閣支持率の数字が、その内閣の存続を決めるようなところがありますから、重要な意味を持つ調査であることも事実です。どうせなら公的な機関がもっと大々的に世論調査を行なって、その結果を積極的に政治に活かしたらどうだろう、そんなアイデアをいま記事にまとめているところです。

投稿: Like_an_Arrow | 2010年9月12日 (日) 00時42分

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