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2010年7月25日 (日)

我が敬愛するエコノミスト

 インターネットで毎回欠かさず目を通しているページがあります。このブログでも何度か取り上げたことのある内田樹さんのブログを始めとして、インターネットが普及し始める以前から現代社会に対する警鐘を鳴らし続けているビル・トッテンさんのコラム、日経BP社のサイトで人気の小田嶋隆さんのエッセイなどが特にお気に入りです。最近、そんな私のお気に入りに、もうひとつのページが加わりました。大和総研という会社のチーフ・エコノミストという肩書を持つ原田泰さんの連載コラムです。原田さんの名前を知ったのは、中央公論の6月号に載ったベーシックインカム論を読んだのが最初でした。これに触発されるかたちで私も政策としてのベーシックインカムについて長い記事を書いたのですが、原田さんの論文はこれまで私が読んで来たベーシックインカムに関する文章のなかでも特に印象に残る一篇だったのです。簡単に言えば、文章のはしはしに筆者の人間性というか人柄がにじみ出ている、そういった印象を強く受けたのです。

 ブログ記事にベーシックインカムのことや財政問題のことを取り上げることも多いので、関連する情報を図書館やインターネットで調べる機会も結構あります。そこで感じることは経済学者だとかエコノミストと呼ばれる人たちの、何か前時代的なとでも呼びたいような閉鎖性や排他性です。こちらは経済学の専門家ではないので、そこで述べられている学説の正しさよりも、どうしても文章を透かして見える筆者の人間性を先に見てしまいます。最近はどんな専門的な分野の学者さんでも、その世界のことを素人にも分かりやすく語ってくれる優れたエッセイを書く方が増えて来たような気がします(例えば福岡伸一さんのような)。ところが経済学という分野だけは、いまだにケインズ派だとか新古典派だとかいった党派に分かれて、相手を攻撃することを第一の目的にしたような文章が多いように見受けられるのです。たぶん理論は精密になって来ているのでしょうが、その文章を一般の読者が読んでどういう印象を持つか、その点についてあまりに無頓着な書き手が多いように感じます。経済学というのも、他の人文系の学問分野と同じで、数式や理論によってすべてが割り切れるものではないので、もしも自説を多くの人にアピールしたいのであれば、少なくとも現代の読者のテイストに合わせた書き方という点で工夫の余地があるのではないでしょうか。

 エコノミストという肩書の人のなかでも、新しい記事が発表されるのを楽しみにしているエッセイストもいます。例えば山崎元さん森永卓郎さんなどがそうです。リベラルな立場の人たちなので、自分のような人間にとっても読みやすいという理由もあります。でも、基本は書き手の人柄やバランス感覚の良さです。(森永さんがバランス感覚がいいなんて言うと、反論してくる人がいるかも知れませんが、あれはあれでひとつの〈芸〉として意識的にやっているんだと思います。笑) 原田泰さんのコラムについて言えば、短い文章のなかに非常に簡潔に論旨がまとめられていて、しかも読者をハッとさせる着眼点が毎回提示されている、まさに名文と呼ぶにふさわしい文章だと私は評価します。何かこう世間に超然としたスタイルも含めて、現代版の「徒然草」といった趣きさえあります。でも、こんなことを私がいくら書いても説得力はありませんね、本文を読んでいただいた方が早い。いい文章がたくさんあるのですが、例えばこんな一文はいかがでしょう。

『バラマキは悪くない

定額給付金や児童手当などは、バラマキであるとして評判が悪い。しかし、なぜバラマキがいけないのだろうか。実は、財政政策を不況対策として使うのなら、バラマキ以外に方法がない。

今回の不況対策を考えると、まず、仕事と住宅を一挙に失った人を助けるために、失業保険に入っていない人にもなんらかの手当をすることに反対する人は少ないだろう。しかし、雇用保険に入っていなかった人を、入っていた人よりも優遇する訳にもいかない。すると、それほど多くの予算を使うことはできない。過去最大15兆円の景気対策を行うとすれば、従来型の公共事業の復活ということになってしまう。それに便乗してアニメの殿堂も出てきたわけだ。

時間があっても賢い支出のできない人々に、景気対策のように時間がないときに支出させれば、賢くない支出のオンパレードになってしまう。それよりもバラマキの方がマシではないだろうか。そもそも、失業しにくい正規社員は雇用保険に入っているが、失業しやすい非正規社員は雇用保険に入っていないというヘンな制度を作り、それがヘンだと分かった今になっても、まともな制度設計の議論ができない人々に、賢い支出などできるはずがない。

私は、景気対策は、法人税と所得税の減税で行うのが一番良いと思うが、大企業優遇、金持ち優遇との批判があるだろう。それなら、一律に配っても、子供の数に応じて配っても、悪くはない。

膨大な財政赤字を抱えているときに減税などとんでもないという議論があるだろうが、財政支出を増やしても赤字が増えるのは同じである。不況でも財政政策は使うなというのなら首尾一貫はしているが、従来型公共事業は良くてバラマキが悪いと主張するのは根拠がない。

ばら撒かれたお金は、国民が自分で考えて使うことができる。しかし、政府がお金を使えば、国民が自分で考えて使えるお金が減ってしまう。国民が自分で考えて使えるお金が増えるバラマキの方が良いに決まっている。 』

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