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2010年3月14日 (日)

巷間哲学者流「日本を救う10の方法」

 我ながら辛気臭い記事が続きました。ここらでうつむいていた顔を少し上げて、前方に目を向けたいと思います。昨年民主党による政権交代が実現した時、私たちはこれでやっと日本の政治が変わるかも知れないという期待を持ちました。その後の民主党の奮闘ぶりと迷走ぶりは、やはりこの国を根本から変えることは容易なことではないのだという、諦めに近いヘンな納得の気持ちを私たちにもたらしただけでした。ここに来て民主党への支持率はどんどん低下していますが、有権者はべつだん期待を大きく裏切られたなんて思ってはいない。いまの政治に対する国民の気分をひと言で表すなら、「やっぱりね…」というコトバが一番ふさわしいような気がします。今年は参院選の年に当たります。いまのところ間違いなく予想出来ることは、前回の衆院選と比較して今回は投票率が大幅に落ち込むだろうということだけです。

 正直なところ、私はいまの民主党政権は過去の自民党政権よりも百倍くらいマシだと思っているのですが、この政権に日本の未来を託せないことにもまた100パーセント同意するしかありません。鳩山首相の脱税疑惑や小沢幹事長の不正献金疑惑なんて実はどうでもいい話で(おふたりに辞めてもらえばいいんだから)、もっと根本的な問題はこの政権が日本の未来に対して何のビジョンもロジックも持っていなかったということです。「コンクリートから人へ」なんて口で言うのは簡単でも、それにしたって先立つものはお金です。もしも国家予算が十分にあるなら、子ども手当だって年金改革だって、おそらく基地問題だってすぐに解決出来る。言ってみれば民主党は、破産管財人の立場で入って来たのに、債務整理もそっちのけで明日の買い物の計画ばかり立てているようなものです。(誰が思い付いたのか知りませんが、予算編成で各省別のシーリングをはずしてしまった時点で、民主党の命運は尽きましたね。日本国の命運も尽きたかも知れん。) 国の財政がこれほど悪化してしまったのは、無駄な公共事業のせいでもないし、公務員の数が多過ぎたせいでもない、時代の転換期に特有な構造的な問題があるのです。それを見ずに小手先の事業仕分けなどで財政問題が建て直せる訳がない。国民は変革を期待して国政を預けたのに、何故その期待に応えるような思い切った政策を打ち出せないのか?

 いま国政は八方塞がりの状況ですが、それは政権党が従来の枠組の中でしか政策を発想しないからだと思います。インターネットで検索すれば、日本を救う方法なんてすぐに十個やそこら見付かります。別に経済学者や社会学者でなくても、私たち庶民のなかにだってアイデアはいろいろある。その中にはもちろん空想的で実現性の薄いものも多い訳ですが、現代のように大きなパラダイムシフトが求められている時代には、一見荒唐無稽であるようなアイデアの中にこそ、八方塞がりの状況を打破する可能性を秘めたものがあるかも知れない。…という訳で、私のおすすめする救国の秘策、十項目です。過去にこのブログで書いたものもあるし、インターネット上で見付けた他人のアイデアもあります。それぞれ参照先の記事のURLを載せておきますので、リンク集としてもご利用ください。

1.政府貨幣発行

 いわゆるセイニアーリッジ政策です。国の財政がピンチだったら、政府がお金を刷って自分でそれを使えばいい。日銀の国債引き受けでも同じだという人もいますが、それは違うでしょう。誰が持とうと国債は国債、借金証書であることに変わりはないからです。政府貨幣と聞くと、すぐに「とんでもない!」と反応する人がいますが、そういう人は800兆円とも言われる国の借金のうち、どのくらいが利子で積み増されたものなのか、また1400兆円の国民資産のうち、どのくらいが本当の元本だったのかをよく考えて欲しいと思います。借金は一定限度を超えると、もはや借り手にとっても貸し手にとってもコントロールの利かないものになる、そんなことは誰でも常識として知っている訳です。債務超過の民間企業なら倒産という選択肢もあるけれど、国の場合はいったんつぶしてやり直す訳にはいかないのですから、こういう非常時にはふだんは使わないカンフル剤的な政策も必要だと考えます。政府がそれをやらないのなら、国民が声を上げてそれをやらせるくらいの覚悟を持つべきです。

2.資産課税

 とにかく問題は、凍りついた国民資産1400兆円にどうやって火をつけるかです。いくら所得税や消費税の税率を上げたところで、それは痩せ細ったフローをさらに細くするだけのことです。税制改革を考えるなら、むしろこの巨大なストックに目を向けなくてはいけない。いまでも相続税や贈与税といったストックに対する課税はありますが、あまりに控除額が大きいのと捕捉の目が粗いのとで、有効な徴税手段となっていない。国民の金融資産はGDPの3倍近くあるのに、国の税収内訳を見れば、資産課税の割合は2パーセントにも満たないのです。格差問題だって、所得格差はよく話題になるけれど、もっと深刻な資産格差はあまり話題になりません。これからの時代、政府は所得の再配分よりも資産の再配分を真面目に考えるべきです。このための税制改革案として、例えば預金課税なんてアイデアもありますが、なんたって私のおすすめはマイナス利子の付いたお金、つまり減価貨幣の導入です。これについてはもうたくさん書き過ぎました。とりあえずどんなイメージのものか知りたい方はこちらをどうぞ。

3.ベーシックインカム

 最近話題のベーシックインカムです。もう「BI」という略称でも通じるようになって来ましたね(一部の人には)。国民ひとりひとりに月額5万円から10万円くらいの基礎所得を、国が無条件に配ってしまうという政策です。そのメリットについてはもうさんざん書いて来たので、ここでは繰り返しません。ひとつだけ強調しておきたいことは、これからの社会はもうBI(的なもの)が無ければ、うまく回って行かないだろうということです。自動化された機械やコンピュータなどによって業務を効率化することは、個々の企業の経営者や株主にとっては嬉しいことです。人件費がカット出来ますからね。しかし、社会全体で見れば失業率のアップと慢性的な需要不足が起きる。まさに現在の日本の状況です。要するにこれまでの経済の仕組みでは、産業の効率化は資本家により多くの富をもたらすだけで、労働者はせっかく豊かになった社会の恩恵を受けられないという構造だった。これは双方にとって不幸なことです。BI(的なもの)があって初めて、産業の効率化は社会の持続的な発展と結びつく。逆に言えば、BIの無い社会でこれ以上の効率化を追求しても、それは経済格差を広げ社会の歪みを大きくすることにしかつながらないということです。

4.国内限定通貨

 これが私のイチオシの政策です。これと上に述べた政府通貨、減価貨幣、BIを組み合わせることでいろいろな政策が考案出来ます。簡単に言えば、日本全国で使える〈地域通貨〉を国が発行してしまおうということです。地域通貨が目指すのは「地産地消」ということですが、これこそが経済のグローバリズムが進んだ世界で日本が目指さなければならない方向だと思うのです。中国が何故世界の工場と言われるほど急速な工業化を達成出来たかと言えば、通貨(人民元)のドルペッグ制を頑なに維持していることが一番の要因と言えるのではないかと思います。これは成長著しいベトナムなども同じです。もしも日本だって1ドル360円の固定相場制を守っていれば、製造業で新興国の追随は許さなかった筈です。でも、そんなことは国際経済のルール違反ですよね。これをやられている訳だから、先進国の国内産業はたまったものではない。いまさら固定相場制には戻れないけれど、国内の産業を守るために国内だけでしか使えない第二の通貨(もちろん政府通貨)を発行することなら国際ルール違反にもなりません。国内人件費には主に国内通貨を使い、輸出入や金融取引には強い日本円を使う、これは最強の通貨政策になると思います。

5.土地の国有化

 結果の平等はあり得なくても、機会の平等は保証されなければならない、これは今日の私たちの基本的な合意事項であろうと思います。人間が産み出したものでもない土地というものが私有されていることの理不尽さは、改めて説明するまでもないことです。すべての土地を国有地にすることなど、一見非現実的に思われるかも知れませんが、そうでもありません。共産主義のようにいきなり国が私有地を召し上げるのではなく、地主にはしかるべき保障をしながら段階的に土地の国有化を進める。今でも高い相続税は地主にとって悩みのタネですから、条件によっては国に土地を売り払ってしまった方が得だという認識も生まれて来るでしょう。接収された土地は入札によって民間に貸し出されます。そこで入って来るレンタル料が税金に代わる国の収入になります。所得税や法人税は大幅に下げることが出来ます。実際のところ地主が得ている地代というものほど、社会にとって非生産的なものはありません。人間が住む土地や事業を行なう土地がすべて国からの借地であるなら、まさに機会の平等が実現されたことになる。これはシルビオ・ゲゼルという昔の偉い経済学者が考えたことです。

6.トービン税

 トービン税のことを書くのは初めてですね。これはジェームズ・トービンさんという経済学者が提唱した税制度だそうです。国際間の金融取引に極めて低率の(例えば0.05%程度の)課税をすることで、投機目的の取引を抑制しようというものです。40年も昔に発表されたアイデアだそうですが、先見の明がありましたね。なにしろ最近は金融取引が実体経済の100倍の規模にも達しているそうですから。国際的な為替取引に適用するためには、一国だけの制度改正では難しいのではないかと思います。例えばこれを日本では証券取引に応用してみてはどうでしょう。〈投資〉と〈投機〉を見分ける最も簡単な方法は、売り買いが頻繁にされているかどうかです。その会社の将来性に投資しようという人にとって、低率の証券取引税はさほど問題になりませんが、「サヤ取り」を狙って売り買いを繰り返すデイトレーダーにとっては結構痛手になるでしょう。私が以前提案したのは、株を買った人は最初の一年間はそれを売れないというルールを作ることでした(売れば超高率の課税)。株券が電子化された今なら出来ますよね。日本人は昔からカタギが「株に手を出す」なんてことはしなかったものです。

7.地方分権

 最近は国政の中からも地方分権ということが言われるようになりましたが、これは地方への負担の押し付けをカムフラージュしているだけのコトバでしょう。もしも本当に地方分権を言うなら、徴税権や立法権も自治体に委譲して、国の役割は国防と外交と皇室の運営くらいに限定すべきです。国政の財源も自治体からの供託金だけになります。そこまで徹底してやるなら地方分権にも意味がある。いまの仕組みのままで地方の権限を強くすることは、大きな政府をますます大きくするだけのことだと思います。もしもこういう真の意味での地方分権が実現すれば、メリットはたくさんあります。税制度を自治体ごとに変えられるなら、ベーシックインカムや自治体発行の地域通貨という政策だって、がぜん現実味を帯びて来る。地方の特徴に応じた「国づくり」が可能になるのです。よく福祉の発達したスウェーデンやデンマークのことがモデル国家のように語られることがあって、しかし日本は国の規模が違うのだから、そんな北欧型の福祉国家は目指せないという人がいます。だったら道州制か連邦制を採用して、国のサイズを適正規模に分割してしまえばいい。そうなったら私は、多少貧しくてもBIのあるのんびりした地域に住みたいと思います。

8.環境政策の転換

 鳩山総理大臣は、2020年までにCO2を25パーセント削減することを国際公約として掲げました。あれって一体何だったのでしょう? 事前に国会での話し合いや国民の理解を得るというプロセスはあったのでしょうか。少なくとも私は知りません。何故あの発言が国内で大問題にならなかったのか不思議でしかたない。あれひとつでも鳩山さんが辞任する理由としては十分だったと思うんですが。ともあれ、日本はいい加減CO2削減を最大目標にした環境政策から脱却すべきです。私は京都議定書も日本を陥れるために先進国が仕組んだ陰謀だったという認識を持っていますし、地球が温暖化しているという通説にも疑問を持っています。そういう仕組まれた国際世論から日本は早く目を覚ますべきです。むしろ日本は、CO2削減といった後ろ向きの目標を立てるより、例えば空気中のCO2を固定化するといった環境技術で世界に貢献すべきでしょう(本当にCO2が問題であるならば)。環境保護が重要なことは認めますが、この地球を人類誕生の前に戻すことは不可能です。これからの環境対策は、技術によって環境に働きかけ、地球を人類(とその他の生物)が住みやすい惑星に作り変えていくという視点で論ずるべきだと思います。

9.インターネット・カジノ特区

 最近の記事で書いたアイデアです。日本にも「カジノ特区」を作ろうという意見への反論として書きました。特定の地域に「ハコものカジノ」を作るのではなく、インターネットの世界に国営のカジノを作ってしまおうという主張です。救国の秘策と呼ぶのは大袈裟だと思われるかも知れませんが、そんなことはありません。ここでの眼目は、年間に二十数兆円もの売上を上げている(GDPの5パーセント!)パチンコ業界への規制とセットにすることです。日本人が世界に類を見ないギャンブル好きで、全国に13000もあるパチンコ店がそのニーズを受け止めている以上、これに対抗するためにはインターネットを利用するしかない。国が本気でギャンブルとしてのパチンコ(つまり換金制度)を規制するなら、それに代わるものを用意しておかなくてはなりません。裏社会の資金源にもなっていると言われるパチンコ産業に流れ込むお金を、国の財政収入に振り替えるなら、子ども手当の財源くらい簡単に捻出出来る。財政難で苦しんでいる民主党は、何故ここに目を向けないのでしょう。やっぱり業界との癒着があるのかな?

10.基地問題の解決策

 これも最近の記事で、普天間基地は硫黄島に移転するのがベストだろうと書きました。もっとお金をかけずに出来る、いいアイデアがあります。今週茨城空港が開港しました。発着便が1日2便だけという寂しいスタートです。全国の都道府県には、同じような赤字空港がたくさんあるそうです。だったら簡単なこと、収益率で比較してワースト10くらいの地方空港をすべて米軍基地に転用してしまったらどうでしょう。基地の誘致は地方経済の振興になるという一面を持っていますから、国がその方針を決めたなら財政難の自治体にとっても内心歓迎すべきことであるに違いない。地域住民の中には反対する意見も出るでしょうが、空港建設を決めた自治体議員を選んだのは自分たちなのですから、その反対意見にはあまり説得力がありません。私は日本に米軍基地は要らないと考える人間ですが、もしも当面それを認めざるを得ないものなら、国全体でその負担を分かち合うべきだと思います。赤字空港の基地転用によって、沖縄に集中していた基地が全国に散らばれば、これは将来の地方分権にとってもいいことです。本来の国防という視点からしても、基地は全国に分散していた方が軍事的にも好都合であるに違いありません。

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コメント

いろいろ感心しながらトキドキ読んでいます。
今度の記事はブログで引用して紹介させていただきました。9.10はちょっと、という気もします。とくに10は日本の国防族の動きとかややこしいところがあり、ネタということでしょうか。問題提起としては当然アリだと思いますが。

投稿: ハルキ | 2010年3月16日 (火) 08時23分

ブログのURLはこれです。
http://mirainet.exblog.jp/

投稿: ハルキ | 2010年3月16日 (火) 08時25分

ハルキさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。ご返事が遅くなり、申し訳ありません。(遅すぎだっちゅーの。笑)
ブログ記事も拝見しました。取り上げていただいてありがとうございました。先週からまたベーシックインカムについて書いていますので、よろしければ参考にしてみてください。

投稿: Like_an_Arrow | 2010年3月27日 (土) 07時05分

非常に興味深く読ませていただいています。

投稿: 元創価犯 | 2010年7月17日 (土) 00時00分

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