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2010年1月17日 (日)

これが巷間哲学者流「競馬必勝法」だ!

 今週はちょっと気分を変えて小ネタをひとつ。昨年私を最も驚かせたニュースは、民主党による政権交代でもなければオバマ大統領のノーベル賞受賞でもなく、新聞の片隅に載った脱税事件に関する小さな記事でした。香港に本社を置くデータ分析の会社が、自ら開発した競馬予想ソフトを使って、日本の競馬で160億円(!)もの賞金を荒稼ぎした挙句、社長である英国人は税金も収めないまま海外に高跳びしたというのです。これを聞いて私がショックを受けたのは、「しまった、先を越された!」と思ったからです。というのも、私はずっと以前から、競馬というのは必勝法のあるギャンブルだと思っていたからです。

 最近はもう自分で馬券を買うこともほとんど無くなりましたが、昔は仲間と一緒に毎週のように競馬場に通っていた時期がありました(このブログを始めるずっと前のことです)。小心者なので、あり金をどーんと賭けることも出来ない、今にして思えばずいぶんみみっちいギャンブラーだったと思います。賭け金が少ない上に穴馬ばかりを狙うので、当然結果はいつも負け越し。たぶん生涯の馬券成績をつけていたとすれば、かなりの額をJRA(と大井競馬)に貢いだのではないかと思います。そんななかでも、競馬に勝つための理論だけはいつも考えていました。そしてついに究極の必勝法を発見したのです。それで何故いつも負けてばかりだったかと言うと、それを実践するためには膨大なデータとそれを瞬時に処理出来るコンピュータが必要だったからです。当時は自分もプログラマーという職業の人間でしたが、パソコンの性能は現在に比較すれば格段に低く、それに何よりもインターネットを通じての競馬情報提供というサービスがまだ始まっていなかった。私の理論は第一にオッズ(配当率)を重視するものでした。いまでこそネットで投票締め切りのぎりぎりまで、ほぼリアルタイムでオッズ情報が手に入れられる訳ですが、当時はオッズを見るためには実際に競馬場か場外馬券場に足を運ぶしかありませんでした。仲間が競馬場に着くとパドックに向かって一目散に駆け出すのに対して、私は馬券売り場の片隅にあるオッズ・プリンターに向かって一目散に駆け出すのです。一度なんか、実験のつもりで新聞の馬柱も見ず、どんな馬が出走するのかさえ全然知らないまま、オッズ・プリンターから吐き出される数字とその変化だけを見ながら馬券を買い続けたこともあります。丸一日やって結果は全敗でしたが… (どんな競馬ファンやねん? 笑)

 私の発見した必勝法の理論は、いたって単純なものですが、いまでも古びていないと思います。と言うより、これはあらゆるギャンブルについて当てはまる基本の法則とでも呼ぶべきものなのです。つまり、賭けの対象となる事象と予想されるオッズとを比較して、期待値が1を超えているなら買い、1以下なら見送るというそれだけのことです。具体的な例を挙げるなら、もしもある馬が優勝する確率が50パーセントだったとして、その馬の単勝配当が200円(2倍)を超えているなら買うべきだし、そうでないなら買ってはいけないということです。パスカルが賭けの問題から確率論を生み出したのは有名な話ですが、せんじつめればギャンブルとは確率の問題に過ぎない、これは少しでも理論的にものを考える人にとっては当たり前の事実だと思います。ところが、多くの競馬ファンはこの単純な事実が分かっていないのですね。競馬の予想とは勝ち馬を当てることだと思っている。これはまったくの間違いです。どんな強い馬でも走る前から100パーセント勝つことが決まっている訳ではありません。レース中に故障したり、落馬したり、不利を受けたりすることもあるでしょう。そういったファクターもすべて考慮して、その馬が勝つ確率を出来るだけ正確に見積もる、そしていくら勝率が高くてもオッズが期待値1を割るなら、その馬券は買うべきではないというのが合理的な判断なのです。私がこういう話をすると、たいていの人は、「競馬はそんな理屈どおりには行かないよ」というようなコトバを返して来ます。これは何を意味するか? 競馬というのは参加者同士が賭け金を奪い合うゲームですから、競馬にロマンを求めるそうした昔ながらの単純な馬券師たちが、今回の事件に登場したようなコンピュータ予想グループのいいカモになっている、要するにそういうことなのです。

 ギャンブルにとってオッズが何よりも重要だということは、もっと単純なゲームを例にとれば分かりやすいかも知れません。3つか4つの数字を自分で選ぶ「ナンバーズ」という宝くじがありますよね。あれにも必勝法があると言えば、貴方は驚きますか? しかし、あるのです、もしも自分にだけオッズが知らされていたとすれば。4つの数字を並び順どおりに当てるナンバーズ4のストレートというゲームを例に取りましょう。買い目は0000から9999までの1万通りですから、特定の数字が来る確率は1万分の1です。一口200円なので、200万円を超える配当が付くならその数字は買いです。過去の当選金額を調べてみると、ほんのたまにですが200万円以上の高額配当が付くこともあるようです。日本の宝くじは、控除率(つまりテラ銭)が50パーセント以上という割のよくないギャンブルですから、期待値が1を上回る買い目は滅多に出ません。それでも1万通りの数字のなかにはオッズの偏りがかなりあって、毎回配当額は大きく乱高下している。もしも200万円を超える配当の付く数字だけを一生買い続けたなら、かなり高い確率でナンバーズ4で勝ち越すことが出来る筈です。もちろん実際には締め切り間際のオッズなど知りようもありませんから、期待値1を超える数字だけを買うなんてことは不可能です(投票を管理するコンピュータのオペレータなら、こっそり覗き見ることが出来るかも知れません)。それでもこの法則を頭に入れておけば、ナンバーズで多少は有利な戦略というものを考えられます。例えばこのゲームに参加する人の中には、誕生日や記念日といった日付に因んだ数字を買う人が多いと思われますから、日付や年号に読み替えられる数字を省くだけでも期待値は相当高くなるだろうと想像されます。

 ということで、もうお分かりになったと思いますが、競馬というゲームはデータ予想と抜群に相性の良いものなのです。要するに、現代の日本の競馬は、このオッズ情報をコンピュータ分析の専門家たちに優先的に提供するという、私に言わせればほとんど八百長まがいの歪んだ情報公開を行なっているのです。いや、オッズ情報は競馬場にいる人たちにも平等に公開されているのかも知れませんが、最近は馬券の種類も格段に増えている訳で、詳細なオッズ情報がリアルタイムに公開されていたとしても、これをまともに分析出来るのはコンピュータ馬券師だけだというのは分かり切ったことであるからです。競馬の本場であるイギリスの事業家が、何故わざわざ日本にまで来て競馬予想を始めたのかといぶかる記事もありましたが、そんなことは当たり前のことなのです。3連単のような高額配当馬券を含む複雑な馬券体系があり、主催者はほとんど無料でリアルタイムのオッズ情報を提供していて、競馬新聞には出走馬の詳細な調教タイムなども公開されている、どれをとってもデータ分析派にとっては有利な要素ばかりです。しかも馬券を買うのはたいしてオッズなど気にもしない昔ながらの競馬ファンが中心なのですから、プロにとってこんなおいしい稼ぎの場は世界中見回してもあり得ないのだろうと思います。今回のニュースがショッキングなのは、たまたま脱税事件ということで競馬で荒稼ぎしているシンジケートの存在が発覚した訳ですが、おそらく彼らは氷山の一角に過ぎないので、他にも同じような方法で常勝している連中はたくさんいるに違いないということです。それほどいまの日本の競馬にはスキが多いのです。

 海外に高跳びした英国人社長たちが、どのようなロジックで予想ソフトを作っていたのか、競馬ファンならずとも気になるところだと思います。もちろんその内容は私にも分かりませんが、ひとつだけ確かに言えることがあります。彼らは単に勝ち馬を予想していたのではなく、個々の馬券に対してオッズと当選率を掛け合わせた「期待値」を精密に計算していたに違いないということです。そうでなければ億という単位の金が稼げる筈はないからです。宝くじよりもマシだとは言え、競馬は25パーセントものテラ銭を天引きされる過酷なギャンブルです(単勝と複勝は20パーセント)。この不利をひっくり返すには 人気の盲点につけこむしかありません。インターネットを検索すれば、あやしげな競馬情報提供サイトや予想ソフトがいくらでも見付かりますが、それらのなかにリアルタイムなオッズ情報と連動して、期待値で推奨馬券を割り出す方式を採用しているものはほとんどないだろうと思います。何故って、もしもその方式を真面目に追求して行ったら、本当に儲かる馬券術が編み出されてしまうだろうから。そんなものを(たとえ有料でも)公開しようという人はいない筈です、自分で使って儲けた方が手っ取り早いですからね。数分間で勝負が決する競馬というゲームは、株取引などと違って手元資金がたっぷり無ければ大きな勝負が出来ないという仕組みのものではありません。1万円の元手が短期間に1億円に化ける可能性のあるギャンブルなのです。いくら評判のいい競馬予想ソフトでも、市販ソフトとして売り出して、1億円を売り上げることは容易ではないだろうと思います。本当に儲かる予想ソフトは、構造的に決して市場には出て来ないようになっているのです。

 もしも貴方が真面目な競馬ファンであるなら、今回の事件にはもっと危機感を持つべきだろうと私は思います。ここ数年間にJRAが提供するPATサービスが広く普及し、複雑な組み合わせの馬券が誰にでも簡単に買えるようになりました。そのことと今回の事件のあいだには大きな関連があることを、私たちはよく考えてみなくちゃいけない。これは私の予想ですが、日本の競馬がデータ分析によって儲かるということが証明されてしまった以上、これからは世界中から異業種の専門家が大挙して、しかも誰の目にも見えないところで参入して来る可能性があります。例えばマーケット分析ソフトの開発者だとか、金融工学の博士号を持った研究者だとかいった連中です。我ら日本の由緒正しい競馬ファンは、最低限の理論武装をして彼らに立ち向かわなければならない。今回の記事に私は「競馬必勝法」というタイトルを付けました。が、実は私たちはまだそのスタートラインに立っただけです。オッズの数字は所与の前提条件ですが、重要なのはあらゆる種類の馬券が固有に持っている筈の当選率を、他の予想法を出し抜くくらいの正確さで計算するロジックをどう組み立てるかという点なのです。で、これについても私は独自のアイデアと理論を持っているのですが…、もちろんそれをここで貴方に(無料で)紹介する訳には行きません。(笑)

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