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2009年12月 6日 (日)

年の瀬に向けて気持ちが晴れない

 来年営業を始める茨城空港は、1日に1便、ソウル行きの飛行機が発着するだけの利用見通ししか立っていないのだそうです。これでは当初の予想の十分の一の利用客しか見込めず、空港に入る予定だったレストランや売店の業者からも入居をキャンセルされてしまったと言います。たぶん空港建設の計画を立てたのは、今よりもっと経済状況の良かった頃でしょうし、まさか政権交代が起こって「コンクリートから人へ」なんて政策の方向転換が起こることを予想出来た訳もありませんから、この計画を推進した人たちを一方的に責める訳には行かないと思います。が、それにしてもタイミングが悪かった。「事業仕分け」で既存事業の多くが予算を削られるなか、レストランも売店も無い、1日1便だけの空港として営業を開始するのは、どう考えても体裁の良い話とは言えません。きっと地元茨城県の方たちも、内心忸怩たるものがあるのではないかと推察します。

 いや、これは笑いごとではないし、他人ごとでもありません。いま国の背負った借金は800兆円、地方自治体の借金も加えると1千兆円を軽く超すと言われています。このことは国や自治体が税金で賄える以上の公共事業を続けて来たことの結果です。この国の場合、世界のどの国よりも国民が貯蓄好きだったということがあるので、ある程度国や地方の借金が大きくなることは仕方が無かったと思います。問題は、1千兆円の借金をしてまで作ったもののなかに、茨城空港のようなものがどれだけ含まれているかということです。私は民主党の「コンクリートから人へ」という政策の転換を無条件に支持する者ですが、それにしても政権交代が起こるのが遅過ぎたとも感じています。最初のバブルがはじけた1990年頃にこの転換が起こっていたら、この国は今とはどれだけ違ったものになっていただろうか? 最近、ベーシックインカムという考え方が話題になっていて、私もこれを面白いと感じているのですが、冷静になって考えてみれば、もう今の日本にはそんなものを実行する余裕などありはしないのです。子ども手当でもベーシックインカムでもいい、もしも20年前にそうした政策を(試行錯誤しながら)始めていたら、少子化だってかなり食い止められただろうし、政治不信によって国民が1500兆円ものお金を貯め込むことだってなかった筈なのです。でも、もう遅い。家庭だって同じでしょう、借金をしこたま抱え込んだあとで家計を見直しても、改善出来ることは限られている。

 それにしても、なるべく規制を廃して市場の自由な選択に任せれば、社会はうまく回って行くという新自由主義の主張は、なんて見え透いたウソだったのだろうといまさらながら思います。企業が目指しているのは、あくまで自社の利益追求という一点であって、社会全体の調和ある発展などという理念は、市場原理のなかには最初から組み込まれてはいないからです。合理化⇒リストラ⇒人員削減という流れは、企業の論理としては筋が通っていても、大局的に見れば決して幸福な社会に向けた道筋ではない。そんな分かり切った理屈を覆い隠してまで、規制緩和を強引に進めた小泉だとか竹中だとかいう人たちの罪はまことに重かったと思わざるを得ない。(小泉政権下では二十万人近い人が自殺しましたが、一体この間に誰が政治のおかげで幸せになったというのでしょう。) 大きい政府と小さい政府なんていう呼び名も、構造改革派が作り出した非常にたちの悪いスローガンでした。行政をスリム化することは必要だとしても、それは福祉の切り捨てや規制緩和によって成し遂げられる訳ではない。現在の複雑な社会保障制度をベーシックインカムに統合するだけで、あるいは納税者番号制度を導入して複雑な窓口業務をシステム化するだけで、どれだけ行政の仕事が減るかを考えてみれば分かることです。しかし、その複雑さを隠れ蓑にしてさまざまな利権が根を張っている今日の社会では、ものごとをシンプルにすることすら容易ではないらしい。特定の利益団体や特定の支持階層に選ばれて政権に就いている政党には、根本的なところで社会を変えて行く力は無いということでしょうか。

 なんだか毎年、年の瀬が迫ると街が浮かれ出すのに反比例して気持ちが落ち込みます。長引く不況で、また来年もたくさんの学生さんが就職先も決まらないまま社会に放り出されることになるらしい。世の大人はロストジェネレーションなんてコトバでひと括りにするけれど、これはまったく絶望的なまでに残酷な事実だと思います。(私も過去に就職浪人をしたことのある身なので、その苦しさはよく分かるつもりです。) 若者が将来に希望を持てない社会に未来はあるのだろうか。政治のあり方も、企業のあり方も、私たち自身の生活のあり方も、すべてを根本的に見直さなければならない時期に来ていると思うのですが、その突破口がどこにも見当たらない。

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