« 国は外国人看護師・介護士を追い返すな! | トップページ | いっそ「天下り専用法人」を作ったら? »

2009年11月15日 (日)

マスコミは機能不全に陥っていないか?

 民主党が進めている「事業仕分け」が連日新聞やニュースを賑わしています。政府の事業の15パーセントに当たる447事業に関し、予算削減または廃止の決定を公開の場で行なって行くというものです。これに対して受けて立つ官僚側からは、まるで「公開処刑」のようだという怨嗟の声も聞こえています。まさに予算獲得が生命線だという役人の本音が出たものでしょう。事業仕分けというものが、もともと民主党が計画していた既定の路線だったのか、思いのほか予算がふくれ上がってしまったために採用せざるを得なかった窮余の策なのかは分かりませんが、〈このようなもの〉が現在の官僚主導政治のなかではぜひとも必要だったという認識においては、多くの国民が一致しているのではないかと思います。なにしろ役人の予算要求をろくに吟味せずに通して来てしまった前政権の怠慢が、800兆円という政府の累積赤字を生んでしまった訳ですから。ところが、新聞の報道などを見ていると、これに対するマスコミ各社の立ち位置は微妙なようです。ニュースネタとしては面白いので大きく取り上げられますが、報道各社がこれを評価するのか批判するのかがよく見えて来ない。いや、この問題に限らず、民主党が政権を取ってから取り組んでいる一連の活動に対して、マスコミは報道はすれども評価は保留という、及び腰の態度に留まっているように見えます。

 私は民主党の政策を支持するかどうかという以前に、ようやく日本の政治もまともに歯車が回り出したと考えるのですが、マスコミは相も変わらず(ゆるい)政権批判に終始していて、政治の変化の速さについていけていないような印象があります。むしろいま試されているのはマスコミの方なのではないだろうかとさえ思うほどです。自民党政権が半世紀以上も続いたので、日本のマスコミは権力に対して一定の間合いを取るだけでジャーナリズムとしての体をなすことが出来ていた。ところが、思いもかけず政権交代が起きたために、マスコミ各社はいま自社の立ち位置を見失って、民主党が矢つぎ早に繰り出す政策にどう対応していいか分からず、歯切れの悪い記事を垂れ流しているだけの状態に陥っているように見える。私は思うのですが、現在のような政治状況のなかでこそ、マスコミは民主党の個々の政策に賛成するのか反対するのか、真正面からコミットするべきではないでしょうか。例えば私が毎日目を通している朝日新聞の社説や「天声人語」などを読んでも、この点がまったく伝わって来ません。もしかしたら、ジャーナリズムというものは時の権力に対して一定の距離を保ち、批判の目を向けることに存在意義がある、そういう基本姿勢を報道各社は持っているのかも知れません。それはそれでひとつの見識かも知れませんが、おそらくそのような風見鶏的なマスコミのあり方では、これからの時代、読者・視聴者の心はつかまえられないだろうと思います。

 以前から感じている素朴な疑問です。朝日新聞と産経新聞とは、同じ日本の大手新聞社のなかでも、まったく対照的な立場に立つ新聞社だと考えられています。朝日がリベラル・左翼的な立場を代表しているのに対し、産経は保守・右翼的な立場を代表している。そのことは事実として間違いの無いことだとして、その政治的な立場は紙面のどこか、あるいはホームページの目立つところにでも公表されているのだろうか。例えば、「朝日新聞は憲法改正に反対します」、あるいは「閣僚の靖国神社参拝は認めません」、「温暖化ガス25パーセント削減を支持します」、そんなはっきりした宣言文が掲載されているなら、マスコミの無責任体質もずいぶん改善されるのではないかと思うのですが。政党のマニフェストを批判するより先に、まずは自社のマニフェストをはっきりさせろと言いたい。このところ特に若い人を中心に新聞離れが進んでいるということが言われていますが、もしもどこかの新聞社がその政治的立場を明確に宣言し、旗幟鮮明にするという企業戦略に転換したら、それだけで発行部数の低下にも歯止めをかけられるのではないかという気がします。(もちろん、この戦略で半分の読者を失う訳ですが、すべての読者を失うよりはマシな筈です。)

 そもそもうさん臭いのは、明確なマニフェストも無しに何故ひとつの新聞社が一貫した政治的立場を堅持していられるのかということです。入社試験や面接では、応募者は思想信条をチェックされ、それが採否の大きな目安になっているのだろうか? きっとなっているのでしょう。しかし、新聞社は決してこの判定基準のことを公開しません。また運よく記者として入社しても、記事は上層部の検閲を受けて、社の方針に合わないものは書き直させられるかボツにさせられるかなのだと思います。私はそのこと自体は構わないと思っています。もしも新聞社にも守るべきマニフェストがあるなら、それに反する記者や記事を黙認する訳にはいかないというのは道理に適っているからです。問題は、そのような選別や検閲が明示された基準の下にではなく、不明瞭な暗黙の了解の下に行なわれていて、それが得体の知れない社風として確立されているのではないかということです。自分の愛読する新聞が、そのような隠された思想的統制のなかで運営されているのなら、これはたまらないことです。(かと言って、一部の特定読者を対象にした機関紙のように、思想的に旗幟が鮮明過ぎることも問題ではありますが…)

 もしも自分なりに今の新聞のあり方を改善する方向性を考えるなら、記事はすべて記者の名前を入れた記名記事にして欲しいということがあります。社風・社是といった暗黙の思想統制の下で匿名記者が記事を書いているというのは、考えてみれば読者にとって最も信用の置けない構図です。もしもすべてが記名記事になるなら、新聞社は多少自社の方針に合わない記事でも、それが優秀な記事なら掲載するという度量を持てるようになるかも知れない。それは硬直的な思想方針に対して良い変化を与えるだろうし、また全体として記事の品質を高めることにもつながるだろうと思います。(新聞で記名記事の原則を守っているのは、たぶん競馬新聞だけです。勝ち負けのはっきりした世界だし、責任所在の明確さは一般紙も見習うべきですね。笑) とにかく政治の世界でもマスコミの世界でも、現代の有権者や読者・視聴者の支持が一番得られないパターンは、裏で得体の知れない権力がうごめいていると感じさせることにあります。民主党はいまこれに果敢に挑戦しようとしている。そのことについては、私は100パーセント支持したい気持ちなのです。(その点から言っても、小沢一郎氏には一刻も早く引退して欲しいと思います。) マスコミがこの世の中の流れに追従出来ないのであれば、インターネットの隆盛に押されるまでもなく、自ら自滅するかたちで新聞・テレビは没落して行くことになるだろうと予感するのです。

|

« 国は外国人看護師・介護士を追い返すな! | トップページ | いっそ「天下り専用法人」を作ったら? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/138790/46764795

この記事へのトラックバック一覧です: マスコミは機能不全に陥っていないか?:

« 国は外国人看護師・介護士を追い返すな! | トップページ | いっそ「天下り専用法人」を作ったら? »