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2009年11月22日 (日)

いっそ「天下り専用法人」を作ったら?

 多分に政治的パフォーマンスじみた「事業仕分け」の討論のなかで、民主党議員が天下り官僚の人数を執拗に問い質している場面がありました。あれを聞いて違和感を覚えたのは私だけではないだろうと思います。ある公益事業がムダであるかどうかを決めるのは、その事業体に所属する天下り官僚の数とは関係が無い筈のものだからです。どうもこのところ「天下り」だとか「渡り」だとかいうコトバが、官僚いじめの殺し文句としてひとり歩きしている感がある。ふつうに当たり前に考えてみれば、公益法人にだって無くてはならないものがたくさんあるし、その中には専門性を持った天下り官僚を人材として必要としているところもあるのではないかと思います。ステレオタイプに描かれるような、「天下り先確保のためだけにそれほど必要性の無い公益法人を作り、そこの役員として天下り官僚が収まり、週に1日か2日それも午前中だけの出勤で年収1千万円以上を貰っている」、そんなパターンはむしろ例外なのではないかという気がします。(そうでもないのかな?) 天下りをするのは何も役員級の大物官僚ばかりではない訳ですし、現役時代に培った知識や人脈などを活かして比較的安い給料で滅私奉公的にハードワークをこなしている元官僚の人たちだって、きっとたくさんいるに違いないと思います。(むしろそう信じたい。)

 私の場合、親戚にも知人にも公務員という職業の人がほとんどいないので、実態がどうなっているのか分からないのですが、ちょっと調べただけでも国家公務員の人事制度はとてもヘンです。若い頃に受けた試験で「キャリア」と「ノンキャリア」という身分に截然と分けられてしまい、ノンキャリはいくら頑張っても出世は課長止まり、キャリアは実績を上げていなくても自動的に出世して行くが、組織のトップにまで昇りつめられるのはひとりだけなので、競争に敗れた人は早々に関連法人に天下りして行く。一応定年は民間企業と同じで60歳ですが、定年が見えて来た頃からは早期退職勧奨というのを受けて、一般職員でも定年を待たずに関連の政府系組織に移って行くのが慣行となっている。(認識が間違っているようでしたらご指摘ください。) こういう仕組みが、働く人に気分よくいい仕事をさせるためにふさわしいものであるかどうかは今回は措きます。問題は、各省庁の抱えている公務員の数が、現実的に多過ぎるのだろうということです。おそらく公務員の仕事は、民間企業以上に中高年になると適応が難しいといった仕事ではないと思います(認識が間違っていたらご指摘ください)。民間でもパフォーマンスの低い社員は肩叩きの対象になりますが、公務員の退職勧奨というのはそれとは意味合いが違います。もともとはその省庁の業務に必要とされる以上の職員を雇い入れていることに問題の大元はあるのだと思う。(そうでなければ、職員を定年まで手放す理由は無いのだから。) 民主党は、天下りを無くすために公務員の60歳定年を守らせる方向で検討しているようです。それは採用する公務員を減らす政策とセットにすれば、将来的には正しい制度改革の方向になるでしょう。が、これによって公務員の数が適正なものになるためには数十年を要します。その間の施策としては、何か別のアイデアを考えなければならない。

 現下の政治的情勢のなかで、いわゆる「天下り法人」の評判が悪いのには、それなりの理由があるのだろうと思います。ほんとうに省庁が権益確保を主目的に(天下りも権益のひとつ)公益法人を作る場合もあるでしょうし、縦割り行政のなかで機能が重複した法人が複数存在している事実もあるのでしょう。すでに事業として意義の薄れたものに対しても、組織を維持するために貴重な税金が費やされている例だってたくさんあるに違いない。いま民主党は、大なたを振るってこれらの公益法人からムダな事業費を取り上げようとしている訳ですが、気を付けなければいけないのは、削られるのは「事業費」であって、組織を維持するための人件費や経費はその中には含まれないということです。どんなデタラメな公益法人だって、社会への貢献がまったくゼロのところは無いでしょう。100の予算を注ぎ込んで20の公益しか生み出さない法人が事業仕分けで予算を20削られたら、80の予算は人件費と経費に消えて、何も事業が遂行出来ないのでアウトプットはゼロになる。これは行政のコスト効率を悪くするだけの愚策中の愚策だと言えます。もしもコスト効率の悪い事業は、組織ごと解消して人件費もゼロにするというなら筋は通ります。が、さしもの民主党にだってそこまでの大なたは振るえないだろうし、仮にそれをやれば官製の失業者を巷にあふれさせるだけの結果になる。長い目で見て「事業仕分け」のようなものが必要なのは確かだとしても、単年度の予算確保のためだけにそれをやるのは弊害の方が大きいのではないかと思います。むしろ早急に手を打たなければならないのは、過剰な人員を抱える行政機関全般の人事対策についてです。

 ということで、今回書こうとしているネタはもうバレてしまっていると思いますが(笑)、要するに問題は公務員の余剰人員をどうするかということですから、今後は「事業ありき」で公益法人を作るのは止めて、天下り役人の受け皿となる、むしろそれだけを目的とした専門の行政法人を作ってしまえばいいのではないか、ということなのです。名付けて「セカンド・キャリア促進機構」。ふざけている訳ではありません。工程表はこうなります。まずは公務員の既存の公益法人への天下りを全面禁止にする。それだけで実質定年を延長すれば、各省庁には窓際族(死語?)のおじさん・おばさんが増える一方ですから、退職勧奨を受けるくらいの年齢になった職員はこの新しい行政機構が一手に引き受けることとする。場所なんか全国にいくらでもある国有施設の空いているフロアでよろしい。準備するものは職員分の机とパソコン、それに会議室とロッカーがあれば十分。これなら大した費用もかかりません。この組織に「天下った」職員は、給料が多少下がるのも仕方ありません、いまどき民間でも出世コースから脱落した中高年は給料が下がるのが当たり前ですから(私のことです。泣)。ここではキャリアもノンキャリも待遇面での差別は一切受けないものとします。つまり同じスタートラインからの再出発となる訳ですね。行政機関にありがちなヒエラルキカルな組織体制は避けて、なるべくフラットな組織づくりを目指しましょう。もちろん省庁ごとに組織を分けるなんてことはしない、国でひとつだけの特定目的法人になります。つまり、そこでは様々な経歴や専門性を持った、出自の異なる公務員の方たちが一堂に会することになるのです。

 で、この新しい行政法人が具体的に何をするのかと言えば、何もしません。いや、予算を取って執行するという意味では何もしないのです。ここは純粋な企画立案機関になります。親会社や上部組織からテーマが与えられる訳でもない。ここに配属された人は、組織のなかで同志を募ってプロジェクトを立てるか、あるいは既存のプロジェクトに加わり、自らの専門性を活かしながら企画書の作成に携わる。企画の内容は、政府に向けた政策提言でもいいし、出身組織に向けた業務改善の提案でもいいし、どこかの行政機関に向けた官民連携の新しいフレームワークづくりといったものでもいい。とにかく「日本を良くする」という目的に沿ったことなら何でもいいのです。そして優秀な企画は実際の政策として採用されることになる訳ですが、政策実施に対しては自らは一切関わらない。組織にはその予算は与えられていないからです。要するに目指すところは、政府系のシンクタンクという地位です。日本はアメリカなどと違って政権を補佐する政府系シンクタンクが無いと言われますから、ちょうどいいじゃないですか。日本の公務員の方たちは、学歴も高く非常に優秀な人たちである筈です。私は、この組織は日本最高のシンクタンクになる可能性を秘めていると思います。最高という意味は、最も優れた理論や戦略を描けるという意味ではありません、最も深くこの国の将来を憂い、滅私奉公でこの国のために働ける人たちが集まっている組織はここ以外にはあり得ない、そういう意味です。もちろん成果主義は取り入れますが、総じてここでは給料が安い。高給を望む人は民間のコンサルティング会社にでも行けばいいのです。ここで働く人たちを動機づけているのは、若い頃に公務員を志した、その時と同じ「志」です。国のために働くことを決意した公務員にとって、これ以上の理想の天下り先というものが考えられましょうか?

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コメント

私もシルビオゲゼルに興味があります。

投稿: kouso77 | 2009年11月22日 (日) 20時56分

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