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2009年8月30日 (日)

日本を分かりやすくする委員会

 政権を取ることが確実になった民主党は、マニフェストで「国家戦略局」なるものを創設すると公約しています。閣僚や有識者から30名ほどを選び出し、政策の最高決定機関にしようというのです。なんだかとても危うい構想だという気がします。例えば年金問題ひとつ取っても、それを解決に導けるのは最高の賢者30名の智恵によるものとは考えられません。これからの年金の仕組みをどうするかという問題でも、失われた年金記録の照合という問題でも、それは非常に技術的・実務的な問題であって、専門家の知識を動員しなければ答えは見付からないだろうと思います。また民主党の鳩山代表は、選挙期間中に新しい戦没者追悼施設を作ることも公約に掲げていましたが、これなんかも国家戦略局で話し合われて詳細が決まるのでしょうか。だとすれば何だか恐ろしい気がする。そもそも選挙の追い風に乗ってこんな政策を追加したこと自体が思い上がったことだし、これから国家戦略局がそうした政策をどんどん決定して行くなら、この国は自民党政権時代には想像も出来なかったような強権的な独裁国家になってしまう危険性さえあると思います。

 今回の選挙で私たち国民は、民主党の基本思想(そんなものがあったとして)に一票を投じた訳ではありませんでした。とにかくこれまでの政治のあり方を変えなければならない、その一点だけが民主党を選ぶ理由だった訳です(ちなみに私自身は民主党を選んでいませんが。笑)。こういう形で選挙に勝った民主党は、少なくとも政権第一期のこの4年間については、党派性というものがはっきり現れる政策は極力排して行く態度を取ることが重要だと思います。もしも政策決定機関のようなものを作るのなら、国家戦略局という名称がまず良くない。少なくとも私は政権1年生の民主党に、国家戦略などという大上段に構えたものを任せたくはない。自分がもし政策諮問機関の名前を付けるとしたら、そう考えて思い付いたのが「日本を分かりやすくする委員会」というものです。これはぜひ新政権に採用していただきたいコンセプトです。

 戦没者追悼問題などを論じるよりも以前に(それも重要な問題であることは認めますが)、この国にはもっと身近な問題で議論すべきことがたくさんあるような気がします。一般の生活者の目線で見た時、とにかく行政や法律の仕組みが複雑になり過ぎている、そう感じることがよくあります。役所に行って何か手続きをしようとすると、何故あんなにたくさんの書類を書かされて、窓口をたらい回しにされるのだろう? 何故法律の文章はあんなに分かりにくくて、しかもどうでもいいような細目ばかり取り決められているのだろう? これは現代という時代が複雑になり過ぎているので、それに合わせて制度も複雑にならざるを得なかったということでは決してないと思います。むしろひとつの政権が長く続き過ぎたために、加筆に加筆を重ね、修正に修正を重ねて今のような状況になってしまったに違いない。むろんそこには法律の草案作りを役人に任せて来た前政権の怠慢ということが、根本的な原因としてあるに違いありません。

 私はコンピュータの業界で飯を食っている人間ですが、この業界のコトバで「スパゲッティ・システム」という言い方があります。コンピュータ・システムに機能の修正や追加をしながら使い続けていると、ついにシステムはスパゲッティのようにこんがらがって、誰にも全容が把握出来ないお化けのようなものになってしまう。そういう状態でシステムを使い続けている会社はとても多いのです。現代はコンピュータが無ければ企業の経営も成り立たない時代ですから、スパゲッティ・システムが経営に与える悪影響には深刻なものがあります。大きな事業転換や企業の合併などという経営判断において、システムがネックになることは珍しいことではありません。いまの日本というのは、まさに「スパゲッティ国家」と呼ぶに相応しい状況なのではないだろうか。これが一企業のコンピュータ・システムなら、これまでの仕組みを全部捨てて、新しいシステムを一から作り直すという選択肢もあります。(私どもの業界はそれで商売させていただいている訳です。笑) しかし、ひとつの国家において全部のシステムを一挙にリプレースすることは不可能です。とにかく新政権は、戦争やクーデターの後のように一から国作りを始められる訳ではないのですから、負の遺産をすべて引き継いだ上で政治を行なわなくてはならない。とすれば、このスパゲッティを解きほぐす能力こそ民主党政権にとって何より重要なものである筈です。

 国家戦略局も結構ですが、むしろ民主党には現在の法律や役所の仕事の仕組みを徹底的にチェックして、その問題点を洗い出す作業から始めていただきたい。その際には国民の声を吸い上げる窓口もぜひ設置して欲しいと思います。その中で明らかな矛盾や無駄がたくさん発見されることでしょう。そしてそれがイデオロギーに関らない問題であるならば、どんどん改正して行っていただきたい。誰でも思い付くような明らかな問題がたくさんあります。何故主婦がパートで働いて、年間103万円の収入を超えると一挙に扶養家族から外れてしまうのか? 何故公的年金は25年以上掛け金を払っていなければ資格をもらえず、ひと月でも足りないと年金ゼロになってしまうのか? 何故国が指定した難病には医療費が補助されるのに、認定されていない難病ではそれが受けられないのか? こうした問題は政治思想がどうこういう話ではない、これまでの自民党政権とそれと馴れ合って来た官僚組織が放置して来た行政の怠慢と呼ぶべき問題です。民主党政権には、これまでのいびつな対米従属関係からの脱皮を期待すると前回書きました。国内政策においては、政治イデオロギーはいったん棚上げにして、こうした誰の目にも明らかな問題を地道にひとつずつ正して行ってもらうことを期待します。

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