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2009年8月23日 (日)

二大政党制なんてまだ先の話

 いよいよ衆議院選挙が一週間後に迫りました。新聞各紙のアンケート調査によると、民主党が圧倒的な優位に立っていて、単独過半数(241議席)はおろか300議席をうかがう勢いなのだそうです。もしもこうした事前の報道によって、有権者のバランス感覚が働いて自民党に一部の票が戻るようなことがあれば、それはマスコミ報道が持つ功罪の「罪」の部分に当たると思います。というのも、今回の選挙では民主党がいくら勝っても勝ち過ぎということはないと私は考えているからです。有権者の代表的な意見として、「自民党へのお仕置き」だとか「民主党に一度政権を担当させてみる」といったコトバが聞かれますが、今日の政治の危機的状況はそんな生やさしいものではないと思う。戦後の政治体制はすでに制度疲労によって崩壊してしまっていて、仮に民主党政権が長続きしなかったとしても、我々にはもう自民党政治に戻る選択肢は残されていない。いや、むしろ自ら退路を断つくらいのつもりで私たちは今回の総選挙に臨まなければならないと思うのです。つまり自民党に対しては、「お仕置き」などというレベルではなく、解党に追い込むくらいのダメージを与えなければならないということです。

 もともと民主党は自民党から分離した政党ですし、政策面で両者に大きな違いがある訳でもありません。憲法問題にしても防衛問題にしても、それぞれの党のなかにも対立する意見がある訳ですから、たとえば民主党を選ぶことによって有権者は何かしらの政策を選択したことにはなりません。では、今回の政権交代の意味はどこにあるのか? 官僚政治からの脱却? 行き過ぎた経済格差の是正? もちろんそうしたことも重要であるに違いありませんが、もっと本質的なことは、政権交代によって戦後64年に亘って続いて来た「対米従属」という国のあり方が変わる可能性があるということだと思います。民主党にその自覚や覚悟があるのかどうか、マニフェストを読む限りでは分かりません。と言うより、これははっきりとマニフェストに書けるようなことでもない。もしも「日米防衛体制の見直し」だとか「外貨準備における米ドルの比率縮減」などという公約を掲げたら、それこそアメリカの政府と世論を敵にまわすようなもので、とても賢い戦略とは言えません。とにかく日本は64年ものあいだ、アメリカの方針に従うことを旨とする政府をずっと戴いて来てしまった訳で、そこからの脱皮ということは相当戦略的に進めなければ実現出来ないと思います。そして私が次の政権に期待するのはその一点だけです。

 この問題に関して、吉田繁治さんのメルマガにとても有益な提言が書かれていました(本文はこちらでも読めるようです)。ひとつは政権が代わることによって、これまで政府とアメリカのあいだで交わされていた「密約」が反故に出来るということです。最近も非核三原則をめぐって自民党と米政府のあいだに密約があったことが暴露されていましたが、密約というのはその名の通り非公式な秘密の約束ですから、当事者が代わってしまえば守る必要も無くなる。アメリカが自民党と交わした密約を盾に、新政権に対して圧力をかけることは出来ない、むしろ内容によってはその露呈を恐れて闇に葬ることだってあるでしょう。新政権にしても、そうした密約があったことを知ったとしても、それは国と国の正式な約束ではないと突っぱねることが出来る。つまり、政権が交代するだけで、対米従属から一歩離脱することが可能になるのです。もうひとつは財源の問題です。いま自民党は民主党のマニフェストについて、財源も明らかにしていない画餅の公約だと非難していますが、日本政府は米国債を中心にした100兆円もの米ドル資産を持っている。自民党政権はこれを絶対に売れないけれども(アメリカがそれを許さないから)、新政権になればそこから財源を持って来ることだって不可能ではない筈です。もともとは国民の資産なのです。国内経済がこんな状態なのに、それを塩漬けにしておく意味はない。すでに今回の円高ドル安によって、30兆円分くらいの国の富が失われているのですから、これを早急にどうにかすることは新政権の重要な使命でもあります。

 今回の総選挙によって、日本も本格的な二大政党制の時代に入るというのは早計だと思います。もしもこれから民主党と自民党が二大政党として政権を争うような時代が来るとすれば、それは私たち有権者が選択を誤ったことの結果であるに違いない。政界再編の波はむしろこれからやって来るでしょう。そのなかで政策の対立軸を明確にした真の二大政党が姿を現して来るかも知れない。が、それは自民党と民主党というふたつではない筈です。だから今回の選挙というのは、政権選択がテーマの選挙ではなくて、戦後政治にひとつのピリオドを打ち、日本が本当の意味で独立した国になるための契機とするべき選挙だと考えます。半世紀くらい後に中立な歴史的視点で振り返ってみれば、あの時にようやく敗戦後の体制が変わり始めた、そう認識されるのではないでしょうか。とにかくここまでが長過ぎました。毎年アメリカから出される「年次改革要望書」によって国内の政策が決まるような、歪んだ政治のあり方はもう終わりにしなければならない。民主党はこれまでの自民党政治のなかで、アメリカとのあいだでどのような密約があり、政府内でどのような隠された対応がなされて来たのかを徹底的に暴き、その総括をするべきです。それこそが次期政権の最大の使命だし、この点でもしもやり方が妥協的で追及が甘いようなことがあれば、民主党は国民の期待を裏切ったことになる。憲法問題や靖国問題などは喫緊の問題ではないので、その次に来る政権に任せておけばよろしい。が、自民党一党独裁のあとに来る最初の政府には、戦後政治の落とし前だけはきちんとつけてもらわないと困る、これが今回の選挙が持つ本当の意味だと考える訳です。(もちろん国民としては日々の生活がありますから、民主党政権には年金や福祉の政策もちゃんと運営して行ってもらわなければならない訳ですが…)

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コメント

本当に300議席こえるんですかね
アナウンスメント効果とか関係ないくらい
自民の旗色が悪いのか・・・
まあ来週が凄い楽しみですけど

投稿: ニュースで暇つぶし | 2009年8月25日 (火) 11時49分

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