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2009年5月10日 (日)

痴漢犯罪と痴漢冤罪を防止するアイデア

 先日、電車のなかで痴漢を働いたということで訴えられていた男性に、最高裁が逆転無罪の判決を下したことがニュースになっていました。この方は事件がきっかけで大学教授の職を追われることになったと言いますから、たかが痴漢冤罪事件と言っても些細な問題ではありません。周防正行監督の『それでもボクはやってない』という映画を観た人なら、いったん痴漢の嫌疑をかけられたらほとんど逃れる術も無く、自動的に犯罪者にされてしまうことの怖さを感じただろうと思います。満員電車で通勤している自分にとっても、これは他人事では済まされない問題です。痴漢事件は、その卑劣な行為そのものの被害と、身に覚えの無い罪を着せられるという二重の被害の構造を持っている。今回は、都会の中で日常的に起こっているこの不幸な事件を未然に防ぐためのアイデアについて考えてみました。

 この問題を考える時、私たち男性の側がまず肝に銘じておかなければならないことは、痴漢犯罪というものに対しては男と女とで認識のしきい値に違いがあるということだと思います。例えば自分のようなしなびた中年男でも、車内で魅力的な若い女性を見かけると、ついつい目がそちらに行ってしまうということがある。そこから痴漢犯罪の第一歩は始まっています。おじさんのいやらしい視線を感じて、不快な思いをするというのは、多くの女性にとって日常的な経験であるに違いない。多くの男性は、自分は痴漢犯罪には無縁だと思っているでしょうが、仮に聖書の中にある「女を情欲の目で見る者は姦淫の罪を犯したことになる」という厳格な道徳律に照らしてみれば、それでも無実潔癖だと言い切れる男性はそう多くはないような気がします。この問題の対策を考えるに当たっては、痴漢冤罪を起こさない工夫をするよりも前に、まずは痴漢犯罪そのものを根絶する方法を考えなければならない。明らかに言えることは、痴漢行為の疑いで取り調べを受ける男性よりも、痴漢行為の被害に遭って傷ついている女性の数の方が圧倒的に多いだろうからです。

 最近では都会の通勤電車に、女性専用車輌というものがほとんどの路線で設けられています。もちろん痴漢防止のための切り札と言っていい対策である訳ですが、私は以前からこれに違和感を感じていました。それは女性専用車と言っても、長い車輌の一番端っこに一輌だけ接続されているだけで、電車に乗るすべての女性を守るためのものではないという点です。いかにも鉄道会社が、我が社では痴漢犯罪防止のための対策を実施していますという言い訳をしているだけのように見えてしまう。女性専用車のマークを付けた車輌が、時間帯によっては普通車になってしまう、その点も分かりにくくて不親切です。で、私の考えたアイデアというのは、混雑する通勤電車のすべての車輌を、「女性優先車」と「男性優先車」と「一般車」の3種類に分けて、女→男→一般→女→男→一般…というように交互に連結するというものです。よく痴漢冤罪事件が話題になると、女性専用車があるなら男性専用車だって作って欲しいと言う男の人がいますが、ここでのミソは「優先車」であって「専用車」ではないというところにあります。つまり、女性優先車には男性も乗っていいけど、混む時間帯にはなるべく女性を優先にしてね、と車内放送でも繰り返しお願いするのです。一般車というのはもちろん家族連れやカップルのための車輌で、これについてはすべての座席をシルバーシートにしてしまうというアイデアもあります。(女性優先車と男性優先車にもシルバーシートは残します。) それぞれ電車の窓には、「女性優先」、「男性優先」、「シルバーシート」のシンボルマークを貼っておけば乗り間違いも無い筈です。時間帯で車輌の機能が変わるという面倒なルールも廃止しましょう。

 もしもそんな電車があったら、ラッシュアワーの乗客はどのような乗車行動をとるでしょう? いくら優先車輌と言っても、混雑する時間帯に男性が女性優先車に乗り込むことは勇気が要る。逆も同じです。私の想像では、なんとなく自然に男女の棲み分けが進むような気がします。(通勤時間帯の乗客の男女比は路線によっても異なるでしょうが、その偏りは一般車が吸収することになります。) これは私の仮説ですが、女性専用車以外の現在の通勤電車は、実は痴漢にとって非常に都合よく出来ているのです。一般的な通勤電車における乗客の男女比は、6対4か7対3くらいのものでしょう。その割合で車内に乗客を詰め込むというのは、端的に言って痴漢行為を誘発しているようなものです。痴漢を働こうとしている男にとって、〈ターゲット〉となる女性の周りを他の男性客が取り囲んでいる状況の方が好都合な筈だからです。うまくやれば痴漢の嫌疑を他の男にかぶせることだって出来る。(あ、これは自分の経験から言っているのではありませんよ、あくまで想像です。笑) 痴漢常習犯の男が女性優先車に乗り込んだら、周りはみんな女性ばかりで、痴漢のし放題で喜ぶと思いますか? そんなことはあり得ないですよね。男女別優先車輌の発想は、痴漢犯罪が起こりやすい乗客の男女比をくずしてやるところにその眼目があります。

 公共の交通機関に乗るのに、そこまで神経質なルールで縛られる必要があるのだろうか? ただでさえ殺気立っている満員電車の雰囲気がいっそうギスギスするだけじゃないの? そう感じる人がいるとしたら、それこそ典型的な男性側の視点だと指摘しておきましょう。例えばこんな比喩を考えてみます、ひなびた温泉地に行って風呂に入ろうとしたら混浴だった。喜ぶのは男だけで、ふつう女の人は嫌悪を感じるだけでしょう。今日、都会の公共浴場で混浴というものがあり得ないように、都会の通勤電車での「混合乗車」というものだって、半世紀後の目から見たらあり得ないことに映るかも知れません。男は鈍感で単純だから、毎日の通勤電車で感じる〈軽い情欲〉というものを、何か淡いときめきのようなものと勘違いして、浮かれた気分になっていたりする。心理的な面から見ても、痴漢犯罪は男女間で非対称であるという点に問題の本質はあるのです。女性の読者であるあなたには、もっと大変な秘密をお教えしましょうか。車内の痴漢行為というのは、何もあなたがたがそれと気付くようなものだけではないのです。あなたが混んだ電車の中で見知らぬ男と身体を接触させる時、うつろな目をしたその男の心の中で何が起こっているかをあなたが知ったとしたら、あなたはまさに心理的な痴漢行為を働かれたことに気付く筈です。

 インターネットで調べてみると、女性専用車というのは鉄道会社が取り決めた強制的なルールではなくて、あくまで男性側の理解と任意協力で成り立っているものなのだそうです。だったら「女性専用車」という強権的・威圧的なネーミングが良くないですね。ここは「お年寄りや体の不自由な方の優先席」と同じ命名規則で、「女性優先車」と名付けた方がずっと自然だし、その方が男性からも女性からも受け入れられやすいのではないかと思います。だからまず呼び名を変えるところから始めてみたらどうでしょう。そしてもしもこれが一般に受け入れられたとすれば、次には「男性優先車」だって当然作られていいし、それが長い車輌のなかの一輌ずつである必要も無い。ごく自然に私が提案したようなスタイルに収まって行くような気がします。これを試してみるのに、コストはさほどかかりません。どこかの鉄道会社のどこかの路線で、とりあえず実験してみてはいかがでしょう?

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コメント

検索をしておりましたところこのブログにたどり着きました。
まずは突然の書き込みお許し下さい。
先頃京浜東北線内で、両手と荷物をがっちりつり革につかみ、カバンには「チカン等えん罪防止予防対策実施中!」と書かれたカードをぶら下げている人を見かけました。思い切ってお声をおかけし知恵を拝借しようとしたところ裏面も見せていただき、裏面には「チカンえん罪防止 平成の御触書十箇条」と記されたえん罪予防策のことが書かれていました。
ここまでしなければ防げないのかと思った反面、男性として最大限予防する、またはえん罪を防ぐための一つの手段として今回見たようにえん罪防止を自分から積極的にしているとアピールするのも一つの手かと色々考えたところです。

投稿: ハタ坊 | 2010年9月18日 (土) 03時06分

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