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2009年4月12日 (日)

小沢一郎氏のための演説原稿

 民主党小沢代表の公設第一秘書が逮捕されるに及んで、いよいよ自民党対民主党の政権争いは泥試合の様相を帯びて来ました。民主党内部でも小沢氏退陣論が公然と口に出され、逆に自民党からは不人気な小沢氏続投への期待がささやかれている。私はこのブログで、次の選挙では政権交代に期待すると書きました。同時に民主党はこの機会にトップを交代すべきだという意見も発表しています。その考えにいまも変わりはありませんが、こうも絶妙なタイミングで検察を動かす国家権力の闇の部分を見せつけられると、ここはもう少し小沢さんに踏ん張って欲しいと思う気持ちも禁じ得ないのです。一連の小沢さんの発言を聴いていると、やはりこの人は政治家として言葉の足りない人だと思わざるを得ません。確かに追い詰められているには違いありませんが、一流の政治家ならそれを撥ね返すくらいの言葉の力を見せつけてもらいたいものです。今回は、もしも私が小沢さんのスピーチライターだったとしたら、こんなふうな演説を彼にさせてみたい、そんな思いつきで記事を書いてみました。断っておきますが、もともと私は小沢一郎という政治家が嫌いだし、いますぐにでも代表を辞任してもらいたい気持ちに変わりはありません。ひとつのネタとしてご笑覧いただければと思います。

 『このたびの一連の事件では、国民の皆さんには大変なご心配をおかけしました。突然降って湧いた不正献金疑惑と、それに続く秘書の逮捕、これは私個人にとって大きな試練であったと同時に、我が国の政治のゆくえにも暗雲を垂れ込めさせる事件であったと思います。ことのいきさつはどうあれ、多大な期待をかけていただいた国民の皆さまに、余分な心配をおかけしたことにまずはお詫びを申し上げなければなりません。本日、私が皆さんにお伝えしたいことは、我が身の潔白を証明することではありません。それはやがて歴史が証明することだと私は信じています。一番重大な問題は、今回の事件の本質は、戦後一貫して続いて来た自民党の一党支配のなかで既得権を獲得して来た者たちによる最後の抵抗であるということです。

 ここで私は週刊誌の記者の方々が喜びそうな陰謀説を主張したい訳ではありません。また検察を背後で操っている黒幕は誰かなどと詮索したい訳でもありません。事件の原因の半分は私自身の不徳の致すところであり、身から出た錆びであることも承知しておる。が、それでも私はここで潔く身を引く訳にはいかんのです。何故なら、ここで私が身を引いてしまっては、この国が変わることを好ましく思わない者たちを権力の世界に野放しにしたままになってしまうからだ。今回の事件が起こる前までは、私も単純に次の選挙での政権交代を目標にしていたし、民主党の代表として政権獲得後の役割もわきまえているつもりでいました。しかし、いまは違います。どうやら私には、政権政党のトップに収まるよりも、もっとずっとたいへんな役割が与えられているらしい。それはすなわち、既得権の上にあぐらをかき、この国の根元を腐らせて来た者たちに一撃を食らわすという「壊し屋」の役割です。

 この国の新しいかたちを作って行くためには、まずは古い建物を壊して土地を更地にしなければなりません。幸いなことに、我が民主党には既成のしがらみにとらわれない有能な若手議員、中堅議員がたくさん集まってくれた。新しい日本の設計図を描くのは、自分のような老人ではなく、彼らに任せておけば安心だと私は思っとります。ただ、残念なことに、彼らは政と財と官との癒着の構図がどれほど根深いものであるか、身をもっては分かっておらん。既得権にしがみつく者たちがどのような隠れ蓑をまとっていて、彼らが本当は何を怖れているのかが分かっておらんのです。こう言っちゃあ何だが、私は今では珍しいほどの古いタイプの政治家です。最近は自民党の先生方もだいぶ小粒になってしまった感がありますが、私は野党にいながら誰よりも自民党らしさを残している最後の政治家だと言えるかも知れない。これは、まあ、国民の皆さんにも信じてもらえることだと思いますが、私はたいていの自民党議員よりも献金を集める力だって持っています。むろん違法なことはしちゃいないが、叩けばいくらだってホコリが出る身の上だ。民主党が真の意味で政権政党になるためには、私のような人間がひと暴れして、守旧派を蹴散らすことから始めなければならないのではないか、これがこの1ヶ月間、事件の渦中にあって私がたどり着いた結論です。

 この10年間の政治を振り返ってみて、一番大きな変化は何かと言えば、やはり構造改革というものでしょう。小泉前総理は、「自民党をぶっ壊す」と言って、旧来の利権体制にメスを入れる政策を次々と導入しました。今日の世界的な大不況で、小泉さんのやったことはすべて間違いだったという意見が優勢になって来ましたが、私自身は小泉改革をそれなりに評価しています。むしろ心配なのは、国民の不満に乗じて自民党のなかの守旧派が息を吹き返そうとしていることです。結局、小泉さんが退けば誰も改革を続行しようという人はいない。何故そんなことになってしまったのだろう? もともと小泉さんという人は自民党の主流派ではありません。一匹狼のようなところのある変わった政治家です。だからこそしがらみにとらわれない思い切った改革が断行出来たのだと思う。それを支えたのは、国民の皆さんの絶大な支持です。言ってみれば、それは自民党の中から自然に湧き起こった改革ではなかった。ひとりの風変わりな部外者が、自民党を引っ掻き回したに過ぎなかった。いまさら郵政民営化には反対だったなどと、しゃあしゃあと口に出す麻生さんを見ていると、自民党の本質は何も変わっていなかったことが分かるのです。彼らにとって、いまの不景気は大歓迎であるに違いない。麻生さんは不況対策の補正予算を国会に通すことを理由に、首相の座にしがみついている。深刻な不況は、自公政権が金権政治に再び戻ることへの免罪符を与えたのであります。

 かつては田中角栄さんの後継者と言われ、いままた不正献金の嫌疑をかけられているこの私が、金権政治の批判をするなんて滑稽なことかも知れない。しかし、ものごとにはすべて時代背景というものがあります。これは自民党だけでなく、我が民主党でも同じですが、これまでの政党運営は財界からの献金無しには成り立たなかった。政治というものは実に金のかかるものだ、そのことは私自身が誰よりも身にしみて分かっております。ただ、そういう政治のスタイルももはや過去のものです。次の政権政党は、自らの政治スタイルをも変えて、まさに聖域無き改革に取り組まなければならない。今週、民主党は企業・団体献金を全廃する改革案を発表しました。私が岡田克也君らに指示して作らせたものです。これまでも政治資金を規制する動きはあったし、そのための法律も作られましたが、それは巧妙な抜け穴を設けたザル法に過ぎなかった。しかし、よろしいか、政界の裏の裏まで知り尽くしたこの小沢一郎が陣頭指揮を取るからには、今回は抜け穴は絶対に許さん。これは私の政治的パフォーマンスではありません。たとえこの法案が実現しなかったとしても、私自身は今後一切の企業献金を受け付けないことをここで皆さんにお約束します。

 正直に申し上げますが、今回の事件が持ち上がるまで、私は次期政権政党の党首として総理大臣の椅子を射止めたかった。それを最大の目標にして長い政治家人生を歩んで来たのであります。しかしこの1ヶ月で私の心は変わりました。かつては自民党の主流派にいて、誰よりも古い自民党の体質を受け継いでいるこの私が、政権末期の自民党と対決しようとしている。考えてみれば、これほど皮肉な運命もありません。今回の事件は、私に政治家としての天命を教えてくれた。私は政権党の総裁となって新しい時代の幕開けを飾るような人間じゃありません。そうではなく、自分の古巣であり、いまもその恩を思えば涙がこぼれるほどの愛惜を感じている自民党を、この手で葬る「おくりびと」となること、それこそが政治家小沢一郎の最後の使命であると私は悟ったのです。いやいや、こんなところで感傷的になっていてはいけない、もともと私は地道にコツコツ積み上げて行くタイプの人間ではない、既成の体制を引っ掻き回してぶっ壊すのが大好きな人間だ。そういう人間がどのようにひとつの歴史の幕引きをするか、ぜひ国民の皆さんに見届けてもらいたい。そのための最後のチャンスをどうか私に与えていただきたいのです。そして、民主党から新しい総理大臣が就任した後には、私は静かに表舞台を去るだろう。もうそこには私を必要とする何ものも残っていないからです。小沢一郎のような政治家は、この私をもって最後にしたい、これが本日皆さんにお伝えしたかった私の心からのメッセージなのであります。』

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