緊急提言、21世紀のヴェルグル町よ出でよ!
定額給付金の支給が決まりました。今週のニュースで私がとても面白いと思ったのは、全国の698もの自治体で、定額給付金の支給に合わせて地域限定の商品券の発行を考えているということです。おそらく定額給付金そのものを商品券で支給することは国が許さないでしょうから、一度現金で支給してから商品券と交換する、あるいは住民がどちらで受け取るかを選択出来るようにするというやり方になるのだろうと思います。それだけの仕掛けでは商品券は世に出回りませんから、多くの自治体はそこにプレミアムを付けることを公表しています。つまり1万円で1万1千円分の商品券と交換出来るといったイメージです。最も高いプレミアムを付けるところでは、67パーセントもの上乗せがされるそうです(そういう市町村に住みたかったですね。笑)。これはつまり大人ひとりにつき1万2千円の定額給付金を、2万円にするということです。
給付金を配るだけでも手間なのに、何故多くの自治体がそんなことをするのかと言えば、理由はふたつあると思います。ひとつはせっかくの給付金を貯金に回さずに使ってもらおうということです。そのために今回の地域商品券には、半年とか1年とかの有効期限が設けられる筈です。もうひとつは、配った給付金は地元で使ってもらおうということです。定額給付金の使い途として、旅行を挙げる人が多いようですが、住民がみんな観光地に出掛けてそこでお金を使ったのでは、地域経済にはまったく貢献しません。地域商品券なら、他の市区町村では使えませんから、その点での心配は無いのです。(定額給付金による特需を当てにしている旅行業界にとっては嬉しくないニュースですね。) プレミアムで上乗せした分の金額は、自治体の負担になるのですが、それでも地域経済が活性化してくれれば後々の税収増も期待出来るという訳です。
私は以前の記事で、国は定額給付金を「減価紙幣」で配ったらどうかという提案をしました。これは定額給付金にかけるわずか2兆円という財源で、景気回復に向けた最大限の効果が得られるという素晴らしい提案なのですが(私のアイデアではありませんよ、シルビオ・ゲゼルという昔の偉い経済学者のアイデアです)、いまの自民党政権にはそれを取り上げる胆力も智恵も無いようです。だからこれはぜひどこかの自治体で検討していただきたい。やり方はとても簡単です。まずは下の図を見てください。これはあなたの町で発行する地域商品券の裏面のデザインです。(クリックすると拡大します。)
このプランでは、地域商品券に付けるプレミアムは国内最高の100パーセントとします。1万2千円の給付金が、倍の2万4千円になるということです。商品券の表の額面は2千円です。つまり大人ひとり当たり最高12枚が配られることになります。で、この裏面を見てください、この商品券は1週間ごとに少しずつ金額が目減りして行くのです。この例では4月の終わりに発行して、ゴールデンウィークの頃から使えることをイメージしています。5月10日までは表の額面通り2千円として通用しますが、次の月曜日になると1973円に減価してしまいます。お店のレジでは、常に今日の日付と商品券の時価を見ながら精算をすることになります。(レジでは預かり額を1973円と入力すればいいので、さほど面倒なことはないと思います。) こうして1週間に1.35パーセントずつ減価して行くと、ちょうど1年52週で時価は半分の千円になります。つまりプレミアム部分が消却されたことになるのです。で、翌年の4月26日以降は、この商品券はずっと千円として通用するし、銀行に持って行けば日銀券(千円札)に交換してもらうことも出来るようになる。つまり最初に国から支給された定額給付金の金額に戻るのです。
もう実施までの時間も無いことですし、今回はこの減価型の地域商品券をどのような方法で流通させるか、守らなければならないルールだけを箇条書きで書き出すことにします。それぞれどういう意味があるかを考えながら読んでみてください。またこのルールでは足りないと思われたり、何か問題があると気付かれた方は、コメントでご指摘いただけると助かります。
- 地域商品券は、定額給付金を受給する際に役所の窓口で申請すれば、給付金の金額の範囲内で交換出来る。商品券の金種は額面2千円の1種類のみ。交換時のプレミアムは100パーセント。交換は千円単位。
- 地域商品券は、裏面に書かれた時価で通用する。金額は1週間単位で減価する。減価するタイミングは、日曜日の深夜、正確には月曜日の午前3時とする。
- 地域商品券は、市内(または区内、町内、村内)の指定された店舗や事業者に対する支払いに使用出来る。店舗や事業者はあらかじめ役所に申請することで、「地域商品券使えます」と書かれたステッカーおよびノボリを支給される。地域商品券を取り扱うことの出来る業者は、小売業に限らない。流通業や製造業、農林水産業にも適用される。
- 店舗や事業者は、地域商品券を代金として受け取らないという選択も出来る。但し、この場合特定の商品に対しては受け取らない、あるいは特定の顧客や取引先に対しては受け取らないといった選別は出来ない。地域商品券は、扱うか扱わないかの二者択一となる。
- 制度開始時に地域商品券を受け取らないことを選択した店舗・事業者でも、役所に申請すれば途中から取り扱い業者になることが出来る。また逆に、受け取ることを選択した業者が、地域商品券の取り扱いを止めることも出来る。但し、この場合も役所に届け出ると同時に、顧客への周知を徹底させ、取り扱い停止までに1ヶ月以上の猶予期間を持たせなければならない。
- 地域商品券で支払いをする場合、おつりは出ないものとする。但し、商品券と日銀券を合わせて支払う場合、日銀券の部分にはおつりが出る。また店舗や事業者が出すつり銭のなかに地域商品券を含ませることは出来ないものとする。
- 地域商品券を譲渡・売買することに規制は設けない。金券ショップのようなところで自由に値付けをして売買することも構わない。ネットオークションなどで売買することも問題無い。
- 地域商品券の裏面に書かれた最後の週になった時点で、毎週の減価はストップする。この時の商品券の時価は千円である。時価千円に達した商品券は、地元の銀行・金融機関で千円札(日銀券)と交換することが出来る。
- 地域商品券を扱う事業者は、同じ市内に在住する従業員に対して、賃金の一部を地域商品券で支払うことが出来る。この場合、金額は支払日の時価で見るものとし、また1ヶ月の支払いの上限は(時価ではなく)商品券の表の額面で2万4千円を超えない額であるものとする。さらに特定の従業員に偏ることなく、支給対象の従業員には同額の商品券を配ること。
- 地域商品券は、住民税や固定資産税など、市が徴収する税金や公共サービスへの支払いに使うことは出来ない。また電気・水道・ガスなどの公共料金支払いにも使えない。
と、こんなところでしょうか。最後の条項は、地域商品券というものが民間の経済を活性化させる目的のものであるところから必須の項目となります。この「減価するお金」が流通し始めた時のイメージについては、すでに何度も書いているのでここでは繰り返しません(1、2、3、4)。とにかく地域内のお金の流れがとても早くなり、経済が非常に活性化することは間違いありません。それは1929年に始まった世界大恐慌のさなか、この制度を取り入れたオーストリアのヴェルグルという町で、地域経済が奇跡のように復興した、その先行事例が証明しています。いま多くの自治体が計画している商品券は、住民が1回使ったらそれで終わりですが、我々の考えている地域商品券は、減価しながらすごいスピードで市中を駆けめぐるのです。これが地域経済に影響を与えない訳がありません。しかも気付かれた方もいらっしゃると思いますが、これを実行するのに自治体の懐は痛まないのです。通常のプレミアム付き商品券では、プレミアム部分の負担は自治体が負いますが、減価商品券は国から出る定額給付金の金額で払い戻すだけでいいのです(しかも1年後に)。その分、誰かが損をするのでしょうか? 商品券を受け取ったお店や企業が、次にその商品券で仕入をするまでの間の減価額を負担しなければならないことは確かです。しかし、それは全体としての消費の活性化によって充分補償されるものでしょう(そうでなければ商品券の取り扱いを止めればいいだけの話ですから)。貨幣の流通スピードをコントロールするという経済政策は、最近の金融政策のような、誰かの犠牲の上に誰かを救うというようなゼロサムの奇術ではないのです。もしもどこかの地方都市がこれを採用して、めざましい効果を上げることに成功したなら、それはこれからの世界を変えるほどの起爆力を私たちに見せつけたことになるのでしょう。
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