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2008年10月26日 (日)

私の聴いて来た音楽(ワールド・ミュージック編)

 テレビも映画もほとんど見ない、最近は小説も漫画もほとんど読まないとくると、書きたいテーマも限られてしまうし、文章にも何と言うか、〈奥行き〉というものが無くなってしまうのを感じます。このことはブロガーとしての欠陥になるだけでなく、少なからず交友関係にも悪影響を与えています(「自己同一性」の話や「明るい自死」の話では、酒の席が盛り上がる訳もありませんから。笑)。世間一般的な意味で趣味は何かと尋ねられれば、これはもう音楽と答えるしかないのですが、これも人と共通の話題になりにくい音楽ばかりを聴いて来たので、人付き合いをよくすることには全く貢献していないのです。音楽の趣味がマニアックだという意味ではありません、マニアックな趣味なら、同好の士を見付けて薀蓄を語り合うのも楽しいものでしょう。私の聴いて来た音楽はジャンルもバラバラで、しかもただ好きなだけで薀蓄が深い訳でもありませんから、友達を作ることにも女性を口説くことにも役立ったためしが無い。そんな人間が音楽のことを書いても面白くも何ともありませんが、まあ、好きな音楽のタイトルを列挙しておくだけでも、インターネット検索でこの記事を探し当ててくれる変わった人もいるかも知れない、そう思って今回の記事を書くのです。まずは私がCDショップに行くと真っ先に向かうワールド・ミュージックのコーナーから始めます。

1.レディスミス・ブラック・マンバーゾ(Ladysmith Black Mambazo)

 南アフリカの男声コーラスグループです。もとは地元の教会などで歌っていたマイナーなグループだったのが、ポール・サイモンに〈発見〉されて、世界的な人気グループになりました。私も一時期すっかりはまってしまい、1年間くらい彼らの音楽だけを聴き続けたことがあります。数えてみたらCDを16枚も持っている。来日した時にはコンサートにも行きました。ちょうどネルソン・マンデラ氏が解放された翌日の公演で、コンサートはさながらお祭りのようでした。客席の後ろから現れて舞台に駆け上がった彼らに握手もしてもらったっけ。ほとんどがアカペラ(無伴奏)のコーラスなのですが、人間の声ってこんなに豊かな表現力を持っているんだと驚かされます。おすすめのアルバムを1枚挙げるなら、やっぱりポール・サイモンがプロデュースした『Shaka Zulu』でしょう。今ではアマゾンでも品切れのようですが、中古盤なら割と簡単に手に入るみたいです。

2.ドゥミサニ・マライレ&エファット・ムジュール
  (Dumisani Maraire / Ephat Mujuru)

 独裁政権下でアフリカの中でも最貧国のひとつと言われるジンバブエですが、もともとは豊かな自然に育まれた古い王国だったのだそうです。この国に古くから伝わる「ムビラ」という楽器があります。「親指ピアノ」と訳されることもある小さな素朴な楽器なのですが、その音色に魅せられてしまい、自分でも楽器を集めたことがありました(全然弾けないのですが)。インターネットで検索すると、日本人でこの楽器を習いにジンバブエまで行く人も多いらしい。たぶん日本人の心の琴線に触れるものがあるんだと思います。ドゥミサニ・マライレとエファット・ムジュールという二人のムビラ・マイスターが協演した『ショナ・スピリット(Shona Spirit)』というアルバムは、ムビラ音楽の最高傑作と言ってもいい作品です。何か不思議なグルーヴ感とヒーリング感覚が味わえます。伝統楽器ムビラのもっと呪術的な音に触れたいという方には、ステーラ・ランビサイ・チウェーシェの『KUMUSHA』もおすすめ。

3.ラヴィ・シャンカール(RAVI SHANKAR)

 ご存知、インド音楽の大御所です。シタールという楽器の音色も好きで、さすがにこちらは楽器を集めはしませんが、お気に入りのCDは何枚かあります。ビートルズ時代のジョージ・ハリスンが、シタールを学ぶためにインドのラヴィ・シャンカールを訪ねたという話は有名です。その後ふたりの交友は終生続いたようで、1997年にはそのジョージ・ハリスンのプロデュースで『チャント・オブ・インディア(CHANTS OF INDIA)』というアルバムを出しています。これが素晴らしいのです。ラヴィ・シャンカールの音楽も、ついにここまで清澄で平明なものになったか、なんて言い方をすると偉そうですが、肩肘張らずに聴けるのに実に奥が深い。特に最後から2曲目の『Prebhujee』という曲は出色だと思います。あともう1枚、ミニマル音楽の作曲家フィリップ・グラスとの共作『パッセージズ(Passages)』というアルバムも捨て難いですね。こちらはふたりの巨匠が作曲、編曲、演奏でコラボレートした作品集で、ジャンルの違いを超えた傑作になっています。

4.『Call of the Valley』

 インド音楽の有名な演奏家3人が協演した名作アルバム。と言っても、私はインド音楽に詳しい訳ではなく、たまたま聴いて愛聴盤になったのがこの1枚というだけなので、傑作という以上に語るべき薀蓄はありません。インターネット情報によれば、「シャントゥールの名人シヴ・クマール・シャルマ、インドの人間国宝でバンスリ(フルート)の名人ハリプラサッド・チャウラシア、ギタールのブシャン・カブラ」が参加しているとのことです。シャントゥールというのは、ハンマーダルシマーとも呼ばれるピアノの祖先のような楽器ですね。バンスリというのはインド特有の竹のフルート。ギタールというのはその音色から小型のシタールのようなものではないかと思います。とにかくその3つの楽器の音色が複雑に絡まり合い、曲の素晴らしさとも相俟って深い音楽体験をさせてくれる。気持ちを落ち着け、精神を統一させたい時に聴くのはこのアルバムと決めています。

5.マールタ・シェベスチェーン(MARTA SEBESTYEN)

 ハンガリーの国民的な歌手だそうです。日本ではあまり知られていないと思いますが、映画『イングリッシュ・ペイシェント』の主題歌を歌った人と言えば、思い当たる人もいるかも(私は思い当たりません。笑)。一度聴いたら忘れられないような独特な魅力のある声を持った女性シンガーです。この人にも一時期はまったことがあって、CDも何枚か持っています。ムジカーシュというグループにボーカリストとして参加しているアルバムも多いのですが、私はソロ・アルバムの方が好き。特にその中でも1枚を選ぶとすれば、『Apocrypha』という1992年発表のアルバムを。タイトルのApocryphaというのは、聖書などの「外典」や「偽典」を意味する言葉だそうで(インターネット情報)、このアルバムも宗教的な(しかもあまり敬虔とは言えないような)雰囲気に包まれています。こういう音楽を聴いてしまうと、最近の洋楽なんて聴いていられない気分になって来る。ぜひ深夜ひとりで部屋の電気を消して聴いて欲しいアルバムです。

6.マドレデウス(Madredeus)

 こちらはポルトガルのリスボンを拠点に活動するグループ。ポルトガルの伝統音楽と言って思い浮かぶのはファドですが、彼らはファドをベースに様々な音楽の要素をミックスさせて独自の音楽を創り出している人たちです(これもインターネット情報)。日本でマドレデウスを有名にしたのは、テレビCMにも使われた『O Pastor(邦題は『海と旋律』)』という曲で、私もこの曲を聴いてCD屋に走ったのを覚えています。ボーカルも素晴らしいのですが、ウィキペディアによればリードボーカルのテレーザ・サルゲイロは、ナイトクラブでファドを歌っていたところをスカウトされた人なのだそうです。彼女の歌の表現力は、やはりそういうバックボーンがあってこそなんですね。アルバムを1枚選ぶとすれば、やはりあの名曲が入った『EXISTIR(邦題は代表曲と同じ『海と旋律』)』を採りたい(すべてのアルバムを聴いている訳ではないので、これがベストとは言いませんが)。アルバム全体としても素晴らしい出来栄えです。

7.フェイ・ウォン(Faye Wong、王菲)

 テレサ・テンの中国語曲に惚れ込んでいることは既にこのブログで書きましたが、中国語圏で彼女に続く歌い手といえば、やはりこの人ではないかと思います。フェイ・ウォンはテレサの名曲をカバーしたアルバムも出していて、そのアルバムの製作中にテレサが急逝するという事件があり、彼女は台湾での葬儀にも駆けつけています。北京で生まれた彼女は、テレサ・テンの歌を聴きながら育ち、テレサに憧れて歌手を志したのだそうです。そのフェイ・ウォンの1枚、というか1曲を選ぶとすれば、中島みゆきの『ルージュ』をカバーした『容易受傷的女人』を挙げたいと思います。これはフェイ・ウォンを一躍スターダムに押し上げた曲で、〈歴史的名唱〉と言っても過言ではない作品です(『Coming Home』というアルバムの収録曲です)。中国語の意味は分からないけれど、とにかく切なくて、聴いていて胸が苦しくなるほど。最近はアジア圏でも音楽の流行り廃りが速いので、もうフェイ・ウォンなんて若い人は聴かないのかも知れません。でもやはり歴史に残したい歌手だと思います。

8.ミー・タム(My Tam)

 ベトナムを代表する女性シンガーのひとりだそうです。ベトナムの伝統音楽ではなく、ポップス系のミュージシャンに分類される人だと思います。たまたま友人から教えられて、『YESTERDAY & NOW』というアルバムをiPodに入れて聴いているのですが、その抜群の歌唱力と曲の良さでいっぺんにファンになってしまいました。歌として聴くと、中国語も美しい響きを持つ言語だけれども、ベトナム語というのも柔らかくて気持ちのいい響きの言語なんですね。曲の英語タイトルからすると、甘いラブソングが多いみたい。1970年代に思春期を過ごした自分としては、ベトナムと言うとどうしても戦争のイメージがあって、若い世代の中からこんな表現をする人も現れて来たんだ、そんなことを思って感慨にひたってしまうのです。ミー・タムの他のアルバムも手に入れたいと思っているのですが、CDショップにも無ければ、アマゾンやiTunesストアでも取り扱っていないんですね。どなたかCDの入手方法をご存知の方がいらっしゃったら、教えていただけると助かります。

9.スマトラ島バタク族の歌

 インドネシアのスマトラ島の原住民であるバタク族は、昔から首狩り族として恐れられていた民族なんだそうです。しかしまた、彼らは非常に美しいメロディの民謡を数多く持つことでも知られていました。私は若い頃からその代表的な民謡である「シンシンソ」という曲が好きで、レコードを探していた時代がありました。だから1990年代になって、ビクターの「WORLD SOUNDS」シリーズで『シンシンソ』が発売された時は嬉しかったです。このアルバムには、シンシンソを含むバタク族の民謡が、2組のミュージシャンによる演奏で収録されています。素晴らしいのは、プロの歌手でもない、日本人駐在員の方のお抱え運転手だったというハスギアンという人の歌声です。今ではもうこの人の消息も不明だということですが、こうした録音が残ったことだけでも幸運なことだったと思わなければなりません。シンシンソは『船歌』というタイトルでテレサ・テンも歌っています。

10.日本国内のワールド・ミュージック

 ワールド・ミュージックというジャンルに含めるべきか分かりませんが、日本にもトラディショナルなベースを持って活躍している注目のミュージシャンがいます。「TINGARA」は沖縄音楽を現代風に洗練させた楽曲で人気のグループ。もしもエンヤが好きだという人なら、間違いなくはまると思います。どのアルバムも完成度が高いのですが、もし1枚選ぶなら『さきよだ』を。「OKI」はアイヌ音楽の伝統楽器トンコリを復刻して、それを基本にトラディッショナル曲やオリジナル曲を聴かせてくれる人。おすすめは『KAMUY KOR NUPURPE』というアルバム。もうひと組、これはたぶんCDを入手することは難しいと思いますが、「もも」というグループを最後に紹介しておきます。たまたま野外ライブの演奏に出会って、その場で自主制作盤のCDを買いました。インターネットで探しても情報はほとんど無いと思います。いまはもう活動はされていないのかな。パーカッション、カリンバ、三味線などの伝統楽器に乗せて歌う嵯峨美雅子さんの温かいボーカルが素敵です。『光るいのちの歌』というのがライブアルバムのタイトル。どなたか近況をご存知の方がいらっしゃったら教えていただけますか?

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