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2008年9月 7日 (日)

二世議員は法律で禁止すべきである

 今週は福田首相の突然の辞任表明で持ち切りでした。昨年9月に辞めた安倍さんと同じく、たった1年の短期政権だったのですね。二代続けての政権投げ出しなどと言われながら、あえてこの時期に辞任を決めたのは、民主党の小沢党首の無投票再選という事態に対比させて、より〈民主的な〉自民党をアピールすると同時に、有権者の関心をこちらに引き戻す思惑があったのだと思います。今週の新聞の見出しを拾ってみれば、その作戦は図に当たったと言えそうです。何人かの後継者候補が名乗りを上げて、街の話題は一気に次の総理大臣が誰かということに集中してしまった。誰が選ばれるにせよ、新しい総理のもとで解散総選挙ということになれば、少なくとも福田さんの手で解散した場合よりは、よほど有利な条件で自民党は戦えることになると思います。そういう意味で、この時点での福田首相の政治的決断を評価するという論調もあるようです。まったく情けない話です。そんなことは永田町というムラ社会の内輪話に過ぎないではないか。いまこの国は、少子高齢化や社会格差の拡大といった構造的な問題を抱えて、次の新しい国家のグランドデザインを描かなければならない重大な歴史的局面にあるのです。そんな時期に政争の駆け引きに終始しているような政治家たちを、何故私たちは選んでしまったのだろう?

 安倍、福田という二人の首相が、主に精神的な重圧に耐えられずに政権を放り出すという事態に立ち至ったことを重く見るべきだと思います。たぶん誰もが感じていたことだと思いますが、安倍さんも福田さんも、在任期間の終わり頃になるとなんだか言動がヘンだった。安倍さんなんて、現役総理がよもや自殺するんじゃないかとささやかれたこともありましたね。「この人、大丈夫かしら?」、そんな心配を国民にさせるような人物が、一国のリーダーとしてふさわしい訳がありません。これはよく言われるように、苦労を知らないままトップにまで祭り上げられてしまった二世議員のひ弱さが露呈したものなのかも知れません。以前の自民党では、派閥の対立の中でリーダーを鍛えて行く教育システムが働いていたが、今はそれが機能しなくなっている、そんな意見もどこかで見かけました。が、そこにはもっと別の問題があるように思うのです。そもそも今の国会議員のなかには、政治家になるための基本的な資質に欠けている者が相当数含まれているのではないだろうか。いくら教育システムがしっかりしていても、そこに入学して来る人たちに素質が無ければ、優れた人材など育成出来る筈がない。国の政治家というものは、国民すべての生活と生命を預かるいわばエリート中のエリートです。どんなボンクラでも鍛えればそれなりの政治家になれる、そんな低いレベルでは困るのです。オリンピック選手団を送り出すに当たって、「せいぜい頑張ってください」などと言う、そんなコトバを発する人間が一国の首相であっては困るのです。

 いまの自民党の代議士のうち、半数以上が二世三世の世襲議員なのだそうです。優れた政治家の子や孫のなかに、優れた政治家としての資質を持った人間が生まれる確率はゼロではありませんから、議員の世襲ということを一概に否定すべきではないという意見もあるでしょう。しかし、国会議員はわずか数百人しかいない訳ですから、もしもそこに集まっているのが国民のなかから本当に選び抜かれた人たちであるならば、同じ家系から二代三代にわたって議員を輩出する確率などほとんどゼロである筈です。だとすれば、おそらくいまの国会に三割以上はいるであろう二世三世議員たちは、真に議員たるべき優秀な人たちからその席を奪っていることになる。これは国家にとっての大損失です。日本は経済は一流でも政治は三流だなどと言われます。それはたまたまそうなったのではないと思います。経済界では(特に大企業では)社長が自分の息子に社長の座を譲るなどという慣習は、もうとっくの昔に廃れている訳です。それは企業の発展や存続のためにはマイナスでしかないことが経験的に証明されているからです。ところが一国の経営陣であるべき国会だけは、まるで街の小さな個人企業のように世襲制を温存している。これでは日本という国の競争力が低下するのも当然です。ここ10年くらいのあいだに、日本は経済成長力や一人当たりのGDPでどんどん他国に抜かれています。世襲制度が無ければ絶対に首相になどなれなかった筈の変人や病人が立て続けにトップに就いて来たのですから仕方の無い話です。

 私は政治家の世襲は法律できっぱりと禁止してしまうべきだと考えています。こんな意見を書けば、それは職業選択の自由を侵すものだとか逆差別だとかいう反論が出るでしょう。しかし、この悪弊が現実に国家に与えているダメージのことを考えれば、そんなきれいごとを言っている余裕は無いと思う。実際にイギリスなどでは議員の世襲に一定の制限をかける法律を定めているようですし、民主党の岡田克也氏などもそうした考えを持っているようです。どうせなら国会議員の三親等以内の親族はいっさい立候補出来ないというくらい徹底したルールにしてしまえばいい。世襲議員が国会の三分の一を占めているということは、有能な人を三分の一だけ締め出しているというだけの意味ではありません。たとえ何の血縁も無い人が実力で国会議員になっても、いまの制度ではその中で頭角を現すことは容易ではない。また人徳も器量も無い人ばかりが首相や大臣のポストを占めることが当たり前になってしまったので、政治家という職業に対する国民の尊敬も地に堕ちてしまった。そんな状況では、素質や能力のある人も政治を志さなくなってしまいます。つまり潜在的な隠れた逸材をその入り口で遮断してしまうのが現行の制度なのです。「経済は一流、政治は三流」ということの最も本質的な原因はそこにあるのだと思います。

 次の選挙では、政権交代があるのか無いのか、そこが焦点になります。ただ、おそらくこれは今後長く続くであろう政界再編のほんの序章に過ぎないのではないかという気がします。経済政策においても、外交政策においても、また憲法改正といった問題においても、いまの自民党や民主党はそれぞれ一枚岩ではなく、内部に対立の火種をたくさん抱えているからです。そんななかで私はこんな政界再編劇があったら面白いと思う、つまり世襲議員ではない実力のある議員たちが新党を起こし、世襲廃止の法律を成立させてしまう。それで二世議員だとか、派閥政治だとか、族議員だとかいう旧来の悪弊を一掃したあとで、ほんとうに実のある政策論議を戦わせる場を作る。これは日本の政治の質を画期的に高めることにつながると思います。また、逆にこれくらいの荒療治をしなければ、この国の政治は変わりようがないに違いない。政治家はエリート中のエリートであるべきだと書きましたが、真のエリートというのは無私の心をもって国民のために働ける人でしょう。そういう政治家をどれほど私たちは渇望していることか。志の高い、覚悟を決めた政治家を生み出すためには、「政治家は一代限り」というルールを徹底させる必要があるというのが私の意見なのです。

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コメント

Like_an_Arrowさんへ

今回は暴論度が高いですね。

2世(以上)が禁止なら、私がすぐに思い浮かぶだけでも、福田、安倍以外で、
小泉さん、麻生さん、小沢さん、鳩山さん(兄弟二人)、石原さん(国会議員の
ほうの)、河野洋平、その息子、全部禁止ですよね。

エリート教育の必要性は認めます。2世議員の問題点も認めますよ。
でも、エリート教育の弊害も、2世議員の利点もあるんじゃないですか。

Like_an_Arrowさんはエリート教育として、戦前の陸軍大学校、海軍大学校や、
いまの東大のようなものを想定しているんですか。それとも松下政経塾のような
もの?どうも頭でっかちの秀才をイメージしてしまう。
それにエリート教育を徹底した場合、ある程度、世襲になるのが自然じゃ
ないですか。国家公務員、大学教授、医者なんてそうでしょう。
エリート教育でろくな政治家が育たないと「やっぱり庶民感覚は分からない」
なんて言うのでしょうか。

2世議員の利点としては、とにかく政治家の教育というのは時間がかかるし、
これほど総合力が必要な職業はない。特に、人間関係力が必要なのですが、
こういったものは学校教育で伸ばすのは限界がある。どうしても一種の徒弟制度の
ような、OJT的な修行過程が必要になる。そうだとすれば、2世議員も書生制度も
悪いことばかりではないと思います。

第一、50歳過ぎに政界に転身した福田康夫なんて2世政治家としては、
例外中の例外ですよ。首相というより政治家になるべきではなかった。

あと、イオングループの御曹司の岡田克也が議員の世襲に制限をかけると
言っているのは、なんだか割り切れないですね。
2世議員がダメの理由の一つに「カバン」があるわけでしょう。
お金の苦労をしらない岡田さんが言うとウソっぽく聞こえるんですよね。
「カンバン」だって他の議員と比べれば岡田さんにはあるんじゃないですか。
ちなみにイオンは大企業だと思うけど、現社長(岡田克也の兄)は世襲ですよ。

投稿: Saitaman | 2008年9月 9日 (火) 23時48分

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