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2007年7月 1日 (日)

「ロングテール新党」ってどうでしょう?

 前回の記事で、同じ比例区の選挙でも、参議院方式(非拘束名簿)の方が衆議院方式(拘束名簿)よりも、民意を反映出来る良い制度だと書きました。ひとつの政党内での当選順位を、党幹部の思惑で作られた名簿によって決定されるよりも、候補者個人の得票数によって決定した方が、ずっと透明性は高いし、公平感もあると思ったからです。ところが、2000年に初めてこの方式が採用された時には、野党はこぞって猛反対をしたんですね。もちろん制度改正が自党に不利に働くという判断から反対したのだろうと思いますが、今も続くこの参院選の非拘束名簿方式は、インターネットで検索してみると一般的にも評判の悪い制度のようです。

 その理由として多くの人が挙げているのは、非拘束名簿方式では、大量に票を集める人気候補の余った票が、同じ党の別の候補に〈横流し〉されるからというものです。だから例えば、非常に人気のあるタレントなどを擁立すれば、その獲得票の〈おこぼれ〉で、あとひとりかふたりが繰り上げ当選してしまう。それを狙って各政党は、これまで政治には何も関係が無かった有名人の獲得合戦に走るという訳です。しかし、私はこの弊害は、ちょっとした工夫で是正出来るものではないかと思っています。現在の参院選のやり方では、候補者の個人名を書いて投票した場合、その候補の所属する政党に対する信任(これが政党の獲得議席数を決める)と、その候補者自身に対する信任(これが党内での名簿順位を決める)という二重の意味を持つことになります。一方、個人名ではなく政党名を書いて投票した場合、それは政党に対する信任票というだけで、名簿順位についてはその政党に(と言うより他の投票者の意向に)一任したということになるのです。有権者としては、当然自分の1票を最大限有効に使いたい訳ですから、論理的に考えれば政党名を書いての投票はありえない、1票で2票分の効力を持つ個人名投票をするのが合理的です。ところが、前回の参院選の結果を見ると、公明党を除く各党とも、個人名投票よりも政党名投票の方が圧倒的に多いのです。実に不思議なことです。

 おそらく選挙制度が頻繁に変わるせいもあって、有権者の多くが制度改正の意味するところをよく理解しないまま投票をしているのではないか、そんな気がします(少なくとも私自身はよく分かっていませんでした。今回天木さんの立候補によって選挙の仕組みに興味を持つようになって、初めて知ったのです。そんな有り様でよく自分のブログに選挙制度改革案なんて書くものです。苦笑)。これは投票用紙に政党名でも個人名でも、好きな方を書いていいとする現行制度の分かりにくさにも原因があります。よく考えれば、この制度自体が理屈に合わないものです。改善案はまったく簡単明瞭、投票用紙に政党名と個人名を別々に書けるようにすればいいのです。説明だって簡単です、「あなたの信任する政党名をひとつお書きください。それが政党の獲得議席数を決めます。あなたの信任する候補者をひとりお書きください。それが候補者の所属政党内での当選順位を決めます」。これなら誤解のしようがありません。注意書きとして、「投票する候補者は、必ずしも投票する政党の所属候補である必要はありません」という一文を付け加えれば完璧です。これなら〈票の横流し〉などという、いわれのない非難も当たらなくなりますし、現実問題としてタレント候補擁立を抑制する効果にもなると思います(政党票を保証しないタレント候補は、既存候補のライバルでしかないからです)。実際に、非拘束名簿方式の比例代表制を採っている他の国では、投票する政党と候補者を別々に書かせるのが一般的なようです。

 3年前の参院選比例区の結果を見ていると、いろいろ面白いことに気が付きます。個人の得票数が20万票以上もあるのに落選したのは、「みどりの会議」の中村敦夫さんです。逆に最も少ない票数で当選したのが公明党の鰐淵洋子さんで、個人得票数はわずか1万7千票でした。まあ、公明党の場合、どんな人が立候補しようと組織票の数は変わらない訳ですから、比較の対象にはならないのでしょうが、それにしても20万票対1万7千票という、十倍以上の一票格差には、理不尽なものを感じない訳には行きません。この格差を是正する方法をいろいろ考えてみたのですが、〈政党政治〉と〈比例代表制〉というものを前提とする限り、この矛盾を解くのは難しいことのようです。個人的には、政党名での投票を止めてしまって、候補者別の得票数だけで当選を決めてしまうのが一番すっきりしていいように思うのですが、これに賛同してくれる人は少なそうです。

 政党中心の政治がこれからもずっと続くものならば、国会議員を目指す人も、また私たち有権者も、それを前提に最も効率の良い選挙戦略を練らなければなりません。前回の参院選比例区の結果をエクセルシートにコピーして、いろいろ加工したり眺めたりしているうちに、ひとつのアイデアが浮かびました。これまでに無かったコンセプトの政党、名付けて「ロングテール新党」というのを作ってみてはどうだろうというのです。国民に人気のタレントや有名人を擁立して、少ない数の候補者でドーンと票を稼ごうとする既存政党とは、対極的な考え方をするのがロングテール新党です。具体的に言えば、例えば全国の地方自治体で活躍した議員や市町村長などの経験者、あるいは多少は名の知れた文化人や人権活動家や教育者や企業家など、手堅く1万票から5万票くらいを集められる候補者を100人くらい集める。すると、どんぐりの背比べのような長い候補者の列が出来上がります(ほら、ロングテールでしょ)。ひとり平均3万票を集めれば、トータルで300万票くらい集められる。そうなれば、比例区から2人くらいの議員を送り出せるのです。

 この政党は、いわゆる政権政党を目指すものではありません、天木直人さんが言うところの〈オンブズマン政党〉としての機能を目指すのです。候補として名を連ねる人も、自分自身が当選することよりも、自らの集票力によって政党に寄与することを目標に参加してもらう。ですから、無理をして選挙資金を集めたり、全国行脚をして投票を呼び掛けるといった手間のかかる選挙運動だってしなくていいのです。ただ多少は名を知られた人間の〈ノーブレス・オブリージ〉として、自身の影響力の範囲内で有権者に語りかけてくれればいい。そしてもしも運悪く(?)、自分が当選を果たしてしまったら、その時には覚悟を決めて6年間頑張ってもらうのです。6年後には再選を目指すことなく、次の人に席を譲るのがいいですね。ロングテールを売り物にしている党だけに、現職が退いても後任で困ることはない筈です。テレビで全国に顔を知られたスター政治家や有名人を中心にした既存の大政党を「セレブリティ政党」と呼ぶならば、我が「ロングテール政党」の方は、まさに国民による国民のための政党と呼ぶに相応しいものではないでしょうか。やがてその認知度が高まり、「セレブリティ政党」vs「ロングテール政党」の対立の図式が一般的に知られるようになれば、その時こそ日本の政治に一大ムーブメントが巻き起こるような気がします。

 既存の大政党が、何故ロングテール戦略を採れないかは、説明するまでもないと思います。これはビジネスの世界でのロングテール理論にも通じますが、自公民といった大政党では、すでに市場のシェアがほぼ決まっており、これ以上多くの候補を立てても、政党全体としての得票数は増える見込みが無いからです。では、何故新党であるロングテール党に、新たなシェア獲得の可能性が残されているのでしょう? それはもちろん既存の大政党に愛想を尽かしている無党派層という大きな市場が残されているからに他なりません。この大票田を狙うロングテール党は、個性的な候補者を立てれば立てるほど票が集まる可能性があるのです(だってそれがロングテール理論なんだから)。無党派層の中にも、リベラリストもいればナショナリストもいる筈ですから、彼らの受け皿としてのロングテール党も、当然複数あって然るべきです。私自身は、リベラルな護憲派の人間なので、とりあえず天木直人さんあたりを党首にして(本当は党首だって要らないんです、輪番制で充分です)、「護憲党」といった名前のロングテール党を結成し、3年後の参院選を目指して活動が始まればどんなにいいだろうと思っています。天木さんにはぜひ、今回の選挙戦で燃え尽きてしまわずに、そういった長期的展望に立って活動を続けて欲しい気がします。


(追記です。これも今回、日本の選挙制度について調べていて気付いたことですが、ロングテール党を興す上での最大の難関は、日本の選挙の高過ぎる供託金制度にあります。衆参両院の比例区では特に供託金が高く、候補者ひとりにつき600万円、しかもその政党の中で当選した人数の2倍までの供託金は返還されますが、それ以下は全て没収されてしまうのです。100人の候補を出し、2人の当選者を出した場合、4人分は返還されるが、残り96人分は没収ということです。前回の参院選でも、それぞれ10人の候補を出し、当選者を出せなかった「みどりの会議」と「女性党」は、それぞれ6千万円の供託金を没収された筈です。こんな高額の供託金と、厳しい返還条件を設定しているのは日本だけなのだそうです。要するに既得権を持った大政党だけを認めて、国民の政治参加を認めないという、あからさまな意図を持った制度設計です。まったく日本の政治はどこまで腐り切っているのだろう! もし天木さんが国会議員になられたら、まずはこの制度からぶっ壊していただきたいものです。)

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