« ゲゼル思想研究日誌(3) | トップページ | 改憲こそが売国行為と言えまいか? »

2007年4月14日 (土)

憲法改正問題、本土決戦へ!

 国民投票法案が、与党の強行採決によって衆議院を通過しました。法案の細部をめぐって与野党の対立は最後まであったようですが、憲法を改正すること自体には野党第一党の民主党も賛成している訳で、国民投票で改憲問題を決しようとする流れは、もう止めようがないもののようです。もはやこの法案に関しては、その最も本質的な問題(すなわち、国民の過半数ということをどう定義するか、最低投票率の規定を設けるのか設けないのか、改憲投票は条文ごとなのか全文一括なのかといった問題)に対して、個別の議論を仕掛けている余裕も無いみたいです。憲法改正は、この国始まって以来の国民投票にかけられることになるのですね。今後自民党は、あらゆる政治力と資金力を駆使して、大々的な〈憲法改正キャンペーン〉を仕掛けて来るのでしょう。我々護憲派にとっては、圧倒的に不利な戦いを強いられることになります。あたかも太平洋戦争末期の本土決戦のように、竹槍一本でこの戦いに臨まなければならないといった気分です。ほかでもない、「言葉の力」という、かぼそい竹槍一本でもって。

 以前読んだ加藤典洋氏の『敗戦後論』には、戦後日本の陥った〈ねじれ〉の構造を解消するためには、その結果がどちらに転ぶにせよ、一度は国民投票によって現憲法の信認を問うことが必要だと主張されていました。私は気持ちとしては、この考え方に賛同出来る部分もあるのですが、現実問題としてはそんな簡単なことでもなかろうと感じています。実際に憲法改正が国民投票にかけられた後のことを想像してみてください。投票から一夜明けた日本では、昨日までとは何かが本質的に変わっているだろうか? もしも変わった点があるとすれば、それは私たちの心の中にある〈ねじれ〉が外部化されて、国民がはっきり対立する二つの陣営に分断されたという現実でしかないでしょう。改憲派にせよ護憲派にせよ、投票の結果によってすっきり自分たちが勝利したというような気分になれると思いますか? 私はなれないと思う。何故なら、ほとんどの国民は自分の心の中に改憲派と護憲派の両方を宿していて、自分自身の中に葛藤を抱えているのだから。人は心の中に葛藤を抱えながら、そこから成熟に至ることも出来ます。むしろ心の中に矛盾した要素を持ったままで成熟することが、ほんとうの意味で大人になることだとさえ言えると思います。私たちが自ら望んだことではなかったかも知れないが、戦後の日本人はそのようなスキームの中で精神的な成熟を遂げて来たのだと言っていい。私は安倍首相の一連の言動を見ていて、この人は精神的に非常に未熟な人間ではないかと疑っているのですが、国民投票は日本人全体をそのような未熟さのレベルに逆戻りさせるのです。

 このように考えてくると、少なくとも〈悩める護憲派〉としての我々の戦略は明確なものになります。すなわち、国民のなかに憲法改正反対の機運を盛り上げ、世論調査で護憲派の割合を七割くらいにまで(!)持って行くこと。自民党にしても、勝ち目の無い国民投票を望む筈はないので(一旦否決されてしまえば、当分憲法改正のチャンスは無くなりますから)、そうなれば国民投票の実施自体を阻止出来る可能性がある。とにかく、国民投票にまで持ち込まれてしまっては、結果はどうあれ、国を誤ることになるというのが私の基本的認識です。国民投票で護憲派が勝っても駄目なのです。こんな意見は、ふつうの「憲法九条を守りましょう」的な護憲論以上に、改憲派の人たちの神経を逆撫でするものであることは分かっています。しかし、もう論戦は始まっているのだ。これから実際に国民投票が日程に乗って来るまで、長い闘いの日々が始まります。私も継続的に、思い付く限りのロジックとレトリックによって、護憲派の論陣を張って行きたいと思います。自分のごときマイナー・ブロガーが何を書いても、ほとんど影響力はゼロですが、だからと言って戦いを止める理由にはならない。むろん私はアタマの固い狂信的な護憲論者ではありませんから、反対意見は大歓迎です。もしも私を上手に説得してくださる方がいれば、私は今日からでも改憲派に転向する準備があります。ただ、これまでの経験で、私の心を動かした護憲論の名言は多々ありますが、少しでも心に響く改憲論の言説というものに出会ったことがない。そんなものがあるなら、ぜひお聞かせ願いたいと思うのです。

|

« ゲゼル思想研究日誌(3) | トップページ | 改憲こそが売国行為と言えまいか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/138790/14675260

この記事へのトラックバック一覧です: 憲法改正問題、本土決戦へ!:

« ゲゼル思想研究日誌(3) | トップページ | 改憲こそが売国行為と言えまいか? »