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2007年2月25日 (日)

ゲゼル思想研究日誌(2)

 先週の記事で、政府と日銀のあいだには黙約があって、利上げは実行出来ないと書いた3日後に、日銀による利上げが実行されました。素人の分際で偉そうなことを書くものではありませんね(苦笑)。まあ、利上げと言っても、政策金利が0.25%から0.5%になっただけで、日本が依然超低金利であることには変わりありません。米国の5.25%、欧州(ユーロ圏)の3.5%と比べると、日本の金利が異常に低いのは一目瞭然です。政府の莫大な借金が日本経済の天秤に乗っている限り、この状態は変わることはないと思います。同じように政府の負債が巨額であるアメリカは、日本とは逆に高金利政策を採っていますが、これは世界中からマネーを呼び寄せる必要性があるからです。つまり、国民が貯蓄好きな日本では政府は国民から借金をし、国民がローン漬けのアメリカでは政府は海外から借金をしている、それだけの違いです。両者に共通していることは、どちらの政府も借金を返済する計画さえ立てられないような状況にあり、返済出来ない借金はやがては踏み倒される運命にあるということです。

 もうひとつ、国債についても、気付いた点があったので補足しておきます。来年は小渕内閣時代に発行した巨額の国債が償還期限を迎える、それが日本経済にとって大きな危機になるかも知れない、そう私は認識しているのですが、たまたまウィキペディアで「国債」という項目を調べてみたら、次のような記述がありました。『1998年に小渕恵三内閣が発行した国債40兆円の多くが、2008年に償還期限を迎えるため、それにより国債危機が発生するのではないかと言われていたが、実際にはすでに各種の借換対策が進行しており、2008年における償還集中は回避されることになっているため誤りである。』 もしもこれを信じるなら、「国債における2008年問題」は、すでに充分検討され、対策済みだということになります。そうであれば一国民としてひと安心なのですが、ウィキペディアの記事だけでは対策の具体的な内容までは分かりません。財務省のホームページを見ると、「財政制度審議会」の議事録というものが公表されていて、そこで「国債2008年問題」への対応が話し合われています。なかなか生々しい内容です。(こういう情報が公開されているという点では、やはり日本というのはいい国ですね。) 要点をまとめると、こういうことだと思います、財務省は〈金利変動準備金〉という隠し金を23.7兆円持っており、そこから〈国債整理基金〉に12兆円を繰り入れて、それで2008年に満期を迎える10年もの国債の一部を自ら買い取ってしまう(買入消却)、これによって2008年ショックを和らげようというのです。23.7兆円の〈金利変動準備金〉というのもびっくりですが(国の税収の半分に匹敵します)、それを全部使っても40兆円の国債すべてを消却出来る訳ではありませんから、期待どおり借換債が市中で捌けなければ、やはり2008年は危険な年ということになるでしょう。しかも、国債の新規発行額を見れば、1998年以降は毎年コンスタントに30兆円以上発行しているのですから、来年以降は毎年同じリスクが次々に襲いかかって来るわけです。そんななかで日銀の福井総裁は、今回の利上げで景気の回復にはずみがつけば、再利上げもありうると発言しています。再利上げの観測が市場で優勢になれば、新規の国債は買い控えられますし、既に発行されている国債は市場価格で額面を大きく割ることになるでしょう。そうなれば、政府の思惑どおり借換債の発行など出来なくなる可能性が高い。冗談でも何でもなく、財政破綻まで一直線かも知れません。

 日本では1999年以降、昨年までずっとゼロ金利政策が続けられて来ました。金利がゼロということは、要するに預金者がふつうなら受け取れるであろう利息を逃しているということで、お金を貸している側から借りている側に(理論上)富が移転したことを意味します。日本の場合、家計部門から政府部門への富の移転があった訳ですね。仮に国民の持つ有利子資産を1千兆円とし、毎年4%分の受け取り利息の不足があったとすれば、ゼロ金利の8年間に約370兆円の〈逸失利益〉があったことになります。まあ、それで暴動を起こさない日本人も我慢強いですが、それでもまだ借金を増やし続けている日本政府も大したものです。いっそのこと、ゼロ金利をもっと下げて、マイナス金利にしちゃったらいいんじゃない? と、そこまで考えると、なんだ、要するにシルビオ・ゲゼルの減価する貨幣のアイデアそのものじゃないですか。素人考えですが、この理由から、私は現在の日本においてこそゲゼル理論の可能性というものが、もっと広く論じられてもいいのではないかと思うのです。最初、私も気付きませんでしたが、減価する貨幣というのは、単に生産物の劣化に合わせてお金も劣化させるというだけのアイデアではないんですね。ゲゼルの提唱したスタンプ貨幣、シュヴァーネンキルヘンやヴェルグルでその有効性を劇的に証明してみせたスタンプ貨幣というものは、要するに貨幣を所有していることに対して保有税(持ち越し税とも言います)をかけようとする試みに他なりませんでした。それは貨幣の流通速度を上げて景気を刺激すると同時に、政府に安定した税収をもたらすものでもあったのです。

 これは現在の日本政府の重要な税収のひとつである消費税とは、まったく正反対のコンセプトの税金であることに注意してください。(なんだか文章が専門家っぽいですね。実体は単なる素人の思い付きなので、全部をそのまま信じないでくださいね。) 消費税というのは、欧米でも広く導入されている仕組みですし、私たちももう慣れてしまったので、(税率が上がりでもしない限り)特にふだん意識することもなく受け入れています。でも考えてみれば、消費税というのは、消費を促進するものではなく、逆に抑制する仕組みなんですね。可分所得が一定ならば、5%の消費税は、すなわち消費を5%(正確には4.7619%)分だけ減少させる役割を果たします。たしかビル・トッテンさんが、どこかでうまいことを言ってました、消費税というのは正しくは「消費罰税」と呼ぶべきものだというのです。何故なら、私たちはお金を出してモノやサービスを買うたびに、5%ずつの罰金を取られているのですから。(国内の景気を回復させたい政府が、国民の消費に罰金を科すなんて!) これに対して、マイナスの利子、つまり貨幣保有税の方はまったく違います。こちらはお金を持っていること自体に課税されるのですから、同じモノを買うなら早く買ってしまった方がいい。つまり消費を促進するための税金である訳です。しかも、政府の側から見れば、景気による消費の動向に関係なく、常に一定の安定した税収が得られるというメリットもあります。税収不足を補うために、消費税を10%に上げるくらいなら、むしろ消費税を止めて年間5%の保有税をかけた方がずっと効果があるように思います。政府は本当にこれを真剣に考えてみたらどうでしょう。

 というわけで、このところ私は「マイナス利子のお金」のスポークスマンにでもなったような気分ですが(笑)、もちろんそんな政策が簡単に実行出来る筈がないのも分かっています。実際にどのようにマイナス利子を実現するかという技術的な問題は措いても、もしもこれが実行されたら、いまの金融の仕組みがどうなってしまうのか、海外との貿易では不都合は生じないのか、そもそもグローバル経済が発達した世界で、日本だけがそんな政策を採れるのか、分からないことだらけです。(以前のエントリーで、日本円とは別の第二通貨でそれを導入するアイデアについては書きましたが。) また、もしも首尾よく減価するお金を実現出来たとしても、その時には蓄財のために貨幣よりも価値を保存出来る現物資産の方が有利になる訳で、土地や貴金属のバブルが起こることが予想されます。これでは所得格差は是正出来ても、資産格差は逆に広がるかも知れない、そんな懸念もあります。実はゲゼル経済学には、減価する貨幣と並んで、もうひとつ重要なテーマがあります。ゲゼル自身は、減価する貨幣のことを「自由貨幣」と呼んでいるのですが、もうひとつ力説しているのが「自由土地」の概念です。こちらについてはまだ私は勉強中で、充分納得して書けるところまで理解していません。それが共産主義でいう土地所有の廃止とどう違うのか、またそれが市場経済のなかでどういった意味を持つのか。ゲゼルさんの書き方では、とても重要な概念ではあるらしいのですが、果たして今日の社会で応用出来るものなのかも分かりません。自分なりに理解出来た時点でまたレポートしたいと思います。

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