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2005年12月25日 (日)

税率改定から世界平和を考える

 ブログを始めて良かったと思うことは、ふだんあまり気にかけることの無かった社会のニュースや新聞の記事に、自然に注意が向くようになったことです。ただ単にブログに書くネタを探しているというだけのことなのですが…。今回も比較的最近の新聞記事から、税率改定の問題を取り上げたいと思います。当初、このブログを始めた時は、政治経済の話題よりも、日常生活の中で見付かる小さなテーマを哲学的に考察するのが目的でした。でも、気付いてみれば、案外自分は天下国家を論ずるのが好きなようです。(笑)

 うかつなことに私は、現在自分が払っている税金の税率がどうなっているのか、これまで詳しいことを知りませんでした。今回発表された税率の改定案を見て、ふたつのことが意外に感じられました。まずは2007年の1月から予定されている税率改定の中身を見てみましょう。

<現行の所得税率>
 課税所得(万円)  所得税率
 0~330以下     10%
 330超~900以下  20%
 900超~1800以下  30%
 1800超~       37%

<2007年以降の所得税率>
 課税所得(万円)  所得税率
 0~195以下     5%
 195超~330以下  10%
 330超~695以下  20%
 695超~900以下  23%
 900超~1800以下  33%
 1800超~       40%

 今回の改定は、税率アップを目的としたものではなく、税金の一部を国から地方に財源移譲するための変更だそうです。現行の税率と改定後の税率を比べると、所得額によって多少税率が変化するように見えますが、実はこれと同時に地方税(住民税)の改定も行なわれるので、両者合算すれば、基本的には個人の税負担は変らないのだそうです。

 私が感じた意外だった点のひとつ目は、所得税率というのがとても粗い階段状に設定されているということです。現状では4段階、改定後でも6段階。例えば年収330万円の人は税率10パーセントですが、331万円になると20パーセントと急に倍になる。すわここにも行政の怠慢による逆転現象が…と思ったら、違いました。日本の累進課税は、正しくは超過累進課税と呼ばれるもので、年収331万円の人は、330万円の部分には10パーセント、それを超える1万円には20パーセントの課税がされるのだそうです。つまり、理不尽な逆転現象は起こらない。それでも現在のようにコンピュータ・システムが発達している時代に、この大雑把な段階設定はやっぱり変です。どんな小さな会社でも、パソコン1台あれば源泉徴収税額の計算くらい出来るのですから、もっと細かい段階での累進設定にすべきだと思います。逆転現象は無いと言っても、なんとなく不公平感があります。

 もうひとつ感じた意外な点は、累進課税と言っても、それは低所得者の中だけの話なのだということです。上限1800万円を超えると同じ税率で止まってしまうところが不思議です。確かに年収1800万と言えば、我々庶民の感覚からすれば高額所得者ですが、まあ想像出来ない所得額ではない。例えば年収100億円の人が1801万円の人と同じ所得税率だというところが解せません。今の自民党の政策は、金持ちを優遇する一方で、貧しい人や社会的に弱い立場の人には過酷なものであると言われますが、その端的な例がここにあると思います。いや、むしろ私は、これは金持ちに対しても失礼な政策ではないかとも思うのです。英語には「ノーブレス・オブリッジ(noblesse oblige)」という言葉があって、貴族や金持ちは、人々から大きな尊敬を受けると同時に、それ相応の義務も果たさねばならないという考え方があります。その自覚が無い金持ちは、単なる成金でしょう。ホンモノの金持ちというのは、自分の所得に相応しい税金を払いたいと思っている人のことです。ところが今の日本では、年収100億の金持ちでも、年収1801万の貧乏人(?)と同じ扱いなのです。

 税率を改定するならば、もっと高額所得者にまで累進税率を広げて適応してみたらどうでしょう。例えば、1800万から3000万までは46パーセント、3000万から5000万までは50パーセント…といった具合に上げて行く。(あ、誤解しないでください、私はこのような大雑把な階段状の税率設定には反対なのです。ただ文章の都合上そう表現しています。) もしもこれによって、国の税収が大きく増えるならば、これはぜひとも検討すべき政策課題です(国はいま喉から手が出るほどお金が欲しいのですから)。もしも高額所得者というのは案外少ないもので、累進税率をこのように上げても、国の税収が大して増えないのであれば、これはまあどうでもいい政策ということになりますが。

 しかし、もしもこれがアメリカのような貧富の差の激しい(最近の言葉で言えば、勝ち組と負け組がはっきり分かれる)国ならば、絶対有効な政策になると思います。インターネットで情報を探したのですが、米国の累進課税率がどうなっているのか、調べられませんでした(どなたか教えていただけませんか?)。それでも明らかな実態があります。私が毎週愛読しているビル・トッテンさんのコラムに、こんなびっくりするような記事がありました。いま世界一の大金持ちといえば、マイクロソフトのビル・ゲイツさんですが、ビル・ゲイツ氏の個人資産は、アメリカの貧しい側の45パーセントの人たちの総資産と等しいのだそうです。米国民の45パーセントと言えば、約1億1250万人。たった一人の資産が1億1250万人の総資産と同じだというのです。私は、歴史的な結論として、共産主義は間違いだったと考える者ですが、自由主義もここまで行ってはちょっと問題があり過ぎはしませんか?

 これからの社会を考える上で、誰もが納得出来る富の再配分の方法というのは、とても大事な課題になると思います。これは一国の税制の問題にとどまりません、世界の国と国の貧富の格差にも同じ問題があります。mori夫さんの過去のブログにこんな記述がありました。『日本で一年間に捨てられる膨大な食べ残しは、それだけで、地球上の飢餓で死ぬ人をすべて救えるそうです。』 出典は分かりませんが、これが本当だとすれば、すごいことです。すごいというのはふたつ意味があって、そのくらいのことで世界の飢えに苦しむ人たちを救えるんだということがまずひとつ、にもかかわらず先進国はそれだけのことさえもしてあげていないんだということがもうひとつです。もちろん、ハンバーガーショップで今まさに捨てられようとしている食べ物を、そのままアフリカに送れる訳ではありませんから、これは机上の空論でしかありません。でも、地球上で生産されている食物をうまく配分すれば、餓死する人々をすべて救えるだけの食物生産がすでに実現しているというのは、これは未来への希望の項目としてメモしておいていいことではないかと思います。

 こういうことを書くと、現実性の無い理想論と言われそうですが、果たしてそうでしょうか? 富の再配分というのはきわめて現実的な政治課題ですし、どんな金持ちも、またどんな裕福な国も、貧しい人々や貧しい国々を見捨てておいて、自分だけ安全な暮しを続けて行くのが難しいことは、テロにおびえる今のアメリカの状況を見れば分かることです。これだけモノが余っていて、食料も大量に捨てている日本だって、例えば失業問題やニート問題をこのまま放っておけば、どんな不安定で危険な社会になるか、誰でも想像がつくことだと思います。新しい時代に、真に平和な世界を願うならば、まずは世界の中で最も貧しい国々や人々に対して、最低限の生活を保障するセーフティネットを設けること、つまりそこを基点にして余りにひどい富の偏在を是正すること、それこそが先進国と呼ばれる国に生活する私たちのノーブレス・オブリッジであり、本来の意味でのグローバリゼーションの推進だと思います。

 いや、今回は天下国家の問題を飛び越えて、世界平和の問題にまで議論を広げてしまいました。今日はクリスマス。世界平和のことを考えるにはちょうどいい日ですし、まあ大言壮語も大目に見てもらいましょう。

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コメント

 なぜ日本とアメリカが貧困率が高いのか?税制と社会保障の問題なわけです。

 なぜ日本とアメリカにホームレスが多いのか?税制と社会保障の問題なわけです。

 「富の分配」という前提には自然存在の「富」があることが必須ですが、金融資本の「進化」は、自然存在ではなく「独自」の「富」を創造します。

 「独自富」は当然独自ですから一般分配の論理には乗ってきません。逆にその「富」の力で搾取に回ります。

 オリンピックがアフリカで開かれないことが象徴しています。
 

投稿: lera | 2006年3月 7日 (火) 15時23分

所得税・住民税 新累進税率の提案
(金持ち優遇税制を改めるための)

現行の所得税率は、4段階(~330万円 10%、~900万円 20%、~1800万円 30%、1800万円超 37%)で、これを平成19年分から6段階(~195万円 5%、~330万円 10%、~695万円 20%、~900万円 23%、~1800万円 33%、1800万円超 40%)とすることに決定している。

現行の住民税率は、3段階(~200万円 5%、~700万円 10%、700万円超 13%)で、これを平成19年分から一律10%とすることに決定している。

私の提案は、これを所得税+住民税(うち所得税を60%、住民税を40%に割り振る)で、
次のような12段階の累進税率にしたらどうか、というものである。

~300万円  15%
~600万円  25%
~900万円  30%
~1200万円 40%
~2000万円 45%
~3000万円 50%
~5000万円 60%
~1億円   65%
~2億円   70%
~5億円   75%
~10億円  80%
10億円超  90%

具体的な数字をあげる。所得税と住民税を合わせた税額である。
話を簡単にするために、給与所得のみ、独身、所得控除額を200万円(給与所得控除と基礎控除のみ)として、計算する。
かっこ内の数字は、平成19年分から実施が決まっている税率で計算したものである。

年収 500万円の場合   45万円(50万円)
年収 1000万円の場合 180万円(200万円)
年収 5000万円の場合 2270万円(2120万円)
年収 1億円の場合   5510万円(4620万円)
年収 10億円の場合 7億4980万円(4億9620万円)
年収 50億円の場合 43億4960万円(24億9620万円)

参考:http://nowaki.cocolog-nifty.com/nowaki/2006/01/post_fb11.html

投稿: 野分権六 | 2007年8月22日 (水) 09時31分

野分権六さん、コメントありがとうございます。ご返事が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

私も以前は所得税の累進性を高めて、高額所得者からもっと税金を取るべしという考え方でした。日本もかつてはそうだったんですよね。昭和49年には、所得税と住民税と合わせた税率が、最高93%だったというのですから、現在の感覚からすると驚いてしまいます。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/035.htm

ただ、今の私の考え方では、高額所得者への課税を極端に上げることには賛成していません。というのも、高額所得者の税率をアップしても、全体の税収は思ったほど上がらないように思われるからです。私の試算が正しいかどうか、少し自信が無いところもあるのですが、この件に関して新しい記事を書きましたので、ご参考にしてください。

http://philosopher.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_3465.html

格差社会の本当に公平感ある是正のためには、私は所得税率を変えることより、資産課税の制度を確立することが必要ではないかと思っています。そちらの方がずっと過激で、実現が難しいことなのですが…

投稿: Like_an_Arrow | 2007年9月 2日 (日) 23時39分

うかつにも、コメントに対するご返事をいただいていたのに気がつきませんでした。
失礼しました。

気がつかぬまま、別のところ(トップページ)で、コメントさせていただきました。

お読みいただけると、ありがたいです。


投稿: 野分権六 | 2007年9月 5日 (水) 09時58分

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