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2005年10月10日 (月)

直接民主主義を考える

 先の衆議院選挙では、郵政民営化という一点を争点にして、自民党が圧勝しましたが、多くの人が指摘しているように、今日、日本の抱える問題は、郵政民営化問題だけではありません。イラクに派兵した自衛隊をどうするのか、800兆円とも言われる国の負債をどうするのか、このままでは破綻することが見えている年金制度をどうするのか、少子化については打つ手立てもなく放っておくしかないのか。どれも郵政問題以上に深刻で、しかも差し迫った問題に思えます。

 私は、政治問題についてはごく一般的な有権者としての関心しか持っていませんが、ひとつ根本的な疑問があります。それはこういうことです。例えば、私は憲法問題に関してはA党を支持しているが、年金問題ではB党の政策を支持している、少子化対策ではC党の公約が魅力的に思える。さて、私は何党を支持し、何党に投票すればいいのでしょうか? 小選挙区制が導入されて以来、日本も欧米並みの二大政党制に向かっているように見えます。一方で、政治的な解決が必要な問題はどんどん複雑になり、多岐に渡るようになって来る。もはや昔のように自由主義対社会主義といった単純な政治形体上の対立も意味の無いものになっている。こういう状況の中では、たったひとつの政党やたったひとりの政治家に、自分の支持をすべて託すというのは、どう考えても無理のあることです。私たちが選挙に行くたびに無力感を感じるのは、自分の一票が軽すぎるせいばかりではない、真剣に考え抜いた様々な思いを、一枚の投票用紙で表現するのは、まったく不可能だという諦めがその裏にはあります。

 今日、世界のどのような国でも、正面切って民主主義に異を唱えている国はありません。たとえ独裁的な政治体制を採っている国でも、自国が民主主義国家であることを標榜しない独裁者はまれだと思います。もしも民主主義というものが、人類が到達したとりあえずの合意事項であるならば、残る問題はどのように効率的に民主主義を実現するか、つまり国民の意思を歪めることなく政治に反映するかという技術論の問題になるような気がします。そこで私が関心を持っているのが、直接民主主義というものです。これは選挙で選ばれた議員による代議制民主主義に対置される考え方で、例えば重要な議案を国民投票によって決めて行くというような政治形体のことです。国民が直接政策を選択するから、直接民主主義。これならば、有権者である私たちも、選挙のたびに感じる無力感から解放されるかも知れませんし、政治に対してもっと積極的な関心を持てるようになるかも知れません。

 現実的な問題として、決議が必要な議案が出されるたびに国民投票を行なうのでは、国民の負担が大き過ぎる、これが直接民主制を実現する上での一番のネックだと思います。しかし、もしもインターネットによる電子投票が可能になれば、この負担はかなり軽減出来るようにも思います。(もちろんそのためには、本人認証やセキュリティやデジタルデバイドの問題など、克服すべき課題はたくさんあります。) もうひとつ、直接民主制の問題として指摘されるのは、それがいわゆる衆愚政治につながる可能性があるという点です。例えば、いま消費税率を上げるというような法案を国民投票にかければ、おそらくは否決されるでしょう。多くの国民は目前の損得によって投票を行なうので、国家百年の計を考慮した政策などは可決される見込みがないというのです。けれどもこれは、政策を立案する議会が責任を持つことで回避出来る問題だと思います。(私は直接民主制が実現しても、政策立案機関としての議会は必要だと考えます。) つまり、消費税を上げない選択は、所得税率や法人税率の引き上げとしか両立しないのであれば、議会はその現実的な選択肢を国民に示せばいい訳です。これは議会と議員の質を高めることにもつながるかも知れません。これまでのように有権者のご機嫌とり的な政策を選挙のためにでっちあげるのではなく、実行可能な政策の立案能力が問われるのです。

 そしてここから先は、例によって私の素人っぽい空想です。たとえ将来インターネットによる直接民主主義が実現したとしても、私たち国民がすべての議案について関心を持ち、投票を行なうのは容易なことではありません。そこで、有権者はそれぞれ自分の意思で、投票したい分野を選択出来るようにしたらどうでしょう。例えば、こんなジャンル分けを考えてみます。教育、育児、福祉、医療、健康、農業、企業経営、貿易、通信、公共事業、就労、科学技術、防衛、治安、司法、外交、環境、災害対策、交通、余暇、宗教、皇室…。思い付いたまま、順不同です(笑)。まだ他にもあるかも知れません。もしも全部で30の領域があるのなら、国民一人に対して30ポイントの投票権が与えられるものとします。全領域に1ポイントずつ振り分けてもいいし、3つの領域に10ポイントずつを充ててもいい。(一領域に充てられるポイント数には、上限を設けた方がいいでしょう。) 例えば、ニートの若者の就業問題に対する議案が提出されたら、「就労」にポイントを持っている有権者だけが、そのポイント分の投票が出来る訳です。北朝鮮への経済制裁が問題ならば「外交」の人の、皇位継承権問題ならば「皇室」の人の出番です。憲法改正だとか、税率の改定といった国民みんなに関わる大きな問題については、ジャンルを区切らず、有権者全員の投票とします。

 この方法のメリットは、有権者がすべての問題について頭を悩ます必要がなくなるのと、逆に自分の選択した領域については、国政への参加意識を強く持てるようになるだろうということです。ある人が強く関心を持っている領域であれば、そこに対する影響度を持てることは、納得の出来ることではないでしょうか。いま福祉の領域で注目を集めている問題に、障害者自立支援法の可決がどうなるかという問題があります。郵政問題に比べ、一般の知名度は低い問題ですが、これが可決されることで生活がおびやかされる人たちにとっては、非常に重大で切実な問題なのです。こうした問題に対しては、これに直接の利害を持っている当事者の人たちの声を大きく取り上げることは合理的であると思います。そのことによって、政策が大きくねじ曲げられる心配はありません。何故なら、既に議会を通った時点で、それは現実的で実行可能な選択肢になっているからです。

 インターネットで直接民主主義という言葉を検索すると、これを真面目に考えている人たちが、たくさんいることに驚かされます。あながち夢物語という訳でもなさそうです。もしもこれが実現したら、あなたなら30ポイントをどの領域に振り分けますか?


(この文章は、幅広い領域に対して、本質を突く鋭い洞察と、建設的な提言をされている永井俊哉さんの記事へのトラックバックとして書かれました。)

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コメント

 TBさせて頂きます。ブログを見ていても小泉総理や自民党、官僚の思惑を超えて改革の期待や提案があふれてくるようになったと感じています。直接民主主義も真面目に検討したいです。現在の私は代議制の上で党議拘束をはずした議会の姿に想像を巡らせています。

投稿: hide | 2005年10月10日 (月) 21時52分

 民主主義と選挙の問題とするなら、プロクシミテの発想がヒントになりますよ。

 市町村合併で日本は全く逆に邁進していますが…

投稿: lera | 2006年3月 8日 (水) 15時05分

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 郵政民営化特別委員会の審議を見ていて、政府側委員に混じって民主党の議員達も答弁 [続きを読む]

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